損保ジャパン新基幹システム「MIRAI」稼働 なぜ完全ビッグバン方式を選んだか(1/2 ページ)

損保ジャパンの新基幹システム「MIRAI」が本稼働を開始した。複数の企業合併や事業再編を前に、各社のレガシーシステム刷新に尽力した浦川伸一氏がMIRAIプロジェクトを振り返った。

» 2021年06月10日 09時30分 公開
[齋藤公二ITmedia]

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 過去の記事でも紹介してきた通り、損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)はデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を強力に推し進める企業の1社として知られる存在だ。同社は2014年から基幹システムの刷新を推進してきた。複数の企業が統合し、組織改編を進めてきた同社は現在、DXによる非連続な成長をもくろみ、時には新しいパートナーとともに新たなサービスを次々と開発する。

 現在、自社保有データを駆使した事業開発を推進する同社だが、複数の組織が統合してできたその成り立ちから、業務基盤のシステム統合は簡単なモノではないことは想像に難くない。いずれかのシステムに「寄せて」リプレースするだけでも大変なプロジェクトになる。だが、同社が刷新した新たな基幹システムは、次の環境の変化へ野対応も考慮した実装になっているという。実行に当たっては「本当にやり切れるのか」と経営陣から繰り返し問われたほど困難なプロジェクトの背景を聞いた。

2021年3月から新基幹システム「MIRAI」が段階的に本稼働

 2021年3月、損保ジャパンの新基幹システム「MIRAI」が段階的に本稼働した。MIRAIは、同社基幹システムをオープン系システムに全面再構築したもので、今後の同社DX推進の基盤となる。

 損害保険ジャパン取締役専務執行役員で日本経済団体連合会DXタスクフォース座長も務める浦川伸一氏は「(MIRAIは)今後の損保業界に巻き起こるであろうDXを支える非常にダイナミックなシステムだ。新基幹システムの全面再構築は単なる老朽化対応ではない」と説明する。

 「DXはできれば起きてほしくない、今の延長線上で対応したいという思いを抱く方は多いだろう。実際、私もこの取り組みを進める以前はそうだった。しかし、取り組みを進めてみると、業界に荒波が来ていることを強く認識した。今ではこのプロジェクトを手がけてよかったと実感している」(浦川氏)

本稿は「The DX Forum 3つのポイントでひも解くデジタル変革の真髄」(日本IBM主催、2021年4月15〜16日開催)の講演「DXを加速させる新基幹システム『MIRAI』とCxOの覚悟」を基に再構成したものです。



 SOMPOホールディングスは、損害保険を扱う損保ジャパンを中心に生命保険、介護ヘルスケア事業などを幅広く手掛けており、海外ITスタートアップとの提携や事業領域の拡張にも積極的に取り組むDX先進企業の1社として知られる。次期中期経営計画では、あらたにデータプラットフォーム事業を戦略事業に据え、自社が保有するデータ基盤「リアルデータプラットフォーム」(RDP)を中核としたデータ駆動型ビジネスに本格参入する計画を表明している。

 浦川氏は「ニューノーマルへの対応や少子高齢化といった社会課題の解決を目指し、より社会的価値を追求したい」と意気込む。こうした環境下で進んだ基幹システムの刷新は、変化が激しく予測が難しい時代への対応が求められた。

 SOMPOホールディングスは、2015年の段階ですでに「VUCAの時代に備える」ことを意識し、デジタル技術を駆使した「機動力のあるIT、デジタル装備を作る」ことを目指してきた。

 「経営のキーワードは、レジリエンス(回復力)とLight FootPrint(LFP:軽量な足跡から転じてコンパクトな事業運営体制を指す)。社会構造、産業構造の変化に直面しても、とにかく柔軟に素早く企業活動を修正して建て直せる力を備えておく。こうした基盤があることで、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の実践の基盤にもつながる」(浦川氏)

経営陣から「やり切れるのか」と追及も 完全ビッグバン方式の基幹システム開発

 基幹システム刷新のもう1つのポイントとして、二度の商号変更を伴う企業統合の歴史がある。「損保ジャパン」「日本興亜損害保険」への再編と、SOMPOホールディングスの設置、「損保ジャパン日本興亜」から現在の「損保ジャパン」へと組織変更を重ねた同社の場合、各組織に由来する業務機能やシステム機能、企業文化をどう統合するかが命題となっていた。

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