DXの一環として始めたAI活用プロジェクトがPoCで止まるという話をよく耳にする。約3000人のデータサイエンティストを育てたデータ活用のスペシャリストが、PoC止まりに陥る3つの「あるある」パターンと成功の指針をお伝えする。
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世界中でデジタルトランスフォーメーション(DX)のニーズが高まっています。デジタル技術を駆使してデータから価値を見つけるデータサイエンティストは、この潮流の中心となるべき人材です。21世紀で最もセクシーな職業と言われたことにも(注)、うなずけます。日立製作所(以下、日立)のLumada Data Science Lab.でも、トップデータサイエンティストが中心となって年間100件以上のPoC(概念実証)案件に対応し、さまざまなお客さまのDX実現を支援しています。
その取り組みの中で、筆者は100人以上のトップデータサイエンティストチームをマネジメントするとともに、日立全社で約3000人のデータサイエンティストを育成してきました。本連載では、その経験を基に、DXプロジェクトを成功に導くノウハウやデータサイエンティストに必要なスキル、育て方について徹底的に解説します。
(注)2012年に『Harvard Business Review』に掲載された記事
近年、「ビッグデータ」「AI」「DX」などのキーワードが注目され、多くの企業がデジタル技術を活用した業務の改善や改革に取り組んでいます。
ただしAIの活用に向けていろいろなツールや技術を使った施策の検証に取り組んでみたけれど、どれもPoC止まりで具体的な業務改善や改革に至らず悩むケースも多いのではないでしょうか。第1回となる本稿では、「PoC止まり」に陥りやすい3つの「あるある」パターンと、プロジェクトをPoCで終わらせずに成功に導くための3つの指針を紹介します。
IT部門の中で「AIで何かやろう」とプロジェクトが始動した場合に陥りがちなパターンです。手元にさまざまな種類の構造・非構造データがある場合、「これらを組み合わせたり分析したりすれば、何らか新しい取り組みができるのではないか」という発想が生まれます。
そこで関係者を集めて、使えそうなデータの一覧を並べて「何らかのインサイトを得られないか」と考えてみたり、外部から取得可能なオープンデータも組み合わせて何かできないかと考えたりします。しかし「何のためにデータを分析するのか」という目的がないため、途中で頓挫してしまうことが多いです。
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