DXが「PoC止まり」に陥る3つのパターンと脱却の術を知る3000人のAI人材を育てたプロが語る、AI活用と人材育成の肝

DXの一環として始めたAI活用プロジェクトがPoCで止まるという話をよく耳にする。約3000人のデータサイエンティストを育てたデータ活用のスペシャリストが、PoC止まりに陥る3つの「あるある」パターンと成功の指針をお伝えする。

» 2021年09月17日 09時00分 公開
[日立製作所]

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著者紹介:吉田 順

日立製作所 Lumada Data Science Lab. co-leader

1973年10月生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院社会理工学研究科卒業。1998年4月 日立製作所入社。2012年にAI/ビッグデータ利活用を支援する「データ・アナリティクス・マイスター・サービス」を立上げ、多数のAI/ビッグデータ利活用プロジェクトを推進。2021年より現職となり、トップデータサイエンティストを集結したLumada Data Science Lab.のco-leaderとして、Lumada事業拡大の加速と人財育成の強化を図っていく。

 世界中でデジタルトランスフォーメーション(DX)のニーズが高まっています。デジタル技術を駆使してデータから価値を見つけるデータサイエンティストは、この潮流の中心となるべき人材です。21世紀で最もセクシーな職業と言われたことにも(注)、うなずけます。日立製作所(以下、日立)のLumada Data Science Lab.でも、トップデータサイエンティストが中心となって年間100件以上のPoC(概念実証)案件に対応し、さまざまなお客さまのDX実現を支援しています。

 その取り組みの中で、筆者は100人以上のトップデータサイエンティストチームをマネジメントするとともに、日立全社で約3000人のデータサイエンティストを育成してきました。本連載では、その経験を基に、DXプロジェクトを成功に導くノウハウやデータサイエンティストに必要なスキル、育て方について徹底的に解説します。

(注)2012年に『Harvard Business Review』に掲載された記事

■連載目次

  • 1回目:AI活用のPoC止まりから脱出するには?
  • 2回目:データサイエンティストを育成するには?(仮題)※近日公開
  • 3回目:データサイエンティストとして腕を磨くためには?(仮題)※近日公開

PoCで止まってしまうプロジェクトの「あるある」3パターン

 近年、「ビッグデータ」「AI」「DX」などのキーワードが注目され、多くの企業がデジタル技術を活用した業務の改善や改革に取り組んでいます。

 ただしAIの活用に向けていろいろなツールや技術を使った施策の検証に取り組んでみたけれど、どれもPoC止まりで具体的な業務改善や改革に至らず悩むケースも多いのではないでしょうか。第1回となる本稿では、「PoC止まり」に陥りやすい3つの「あるある」パターンと、プロジェクトをPoCで終わらせずに成功に導くための3つの指針を紹介します。

(1)手元にあるデータありきで何ができるかを考えてしまう

 IT部門の中で「AIで何かやろう」とプロジェクトが始動した場合に陥りがちなパターンです。手元にさまざまな種類の構造・非構造データがある場合、「これらを組み合わせたり分析したりすれば、何らか新しい取り組みができるのではないか」という発想が生まれます。

 そこで関係者を集めて、使えそうなデータの一覧を並べて「何らかのインサイトを得られないか」と考えてみたり、外部から取得可能なオープンデータも組み合わせて何かできないかと考えたりします。しかし「何のためにデータを分析するのか」という目的がないため、途中で頓挫してしまうことが多いです。

(2)AIのアルゴリズムや技術のお試しで終わってしまう

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