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特集
» 2021年11月01日 10時00分 公開

オフラインDXの伝道師に聞く「顧客置いてけぼりの失敗DX」が生まれる真因と解決のヒント攻めも守りもない、生き残るためのDX

コロナ化による顧客のデジタルシフトを受け、オフラインを主戦場としてきた企業もいよいよオフラインのビジネスのデジタルトランスフォーメーションが必要な時期になってきた。この活動を支援する人物が見た失敗プロジェクトの本質とは。頓挫して消滅するDX推進プロジェクトが生まれる理由と、オフラインDXショーケースの意義を見ていく。

[ITmedia]

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 消費者の行動において、オフラインとオンラインの垣根がなくなりつつある。今やオフライン環境といえどもデジタルとつながることを当たり前に消費者から求められる状況だ。この状況にオフラインを主戦場としてきた企業はどう向き合えばよいだろうか。このテーマを「オフラインDX」と名付け、問題解決に取り組む人物がいる。

コロナで従来型小売業の強みが消失? それでも自然消滅するDXのナゾ

 LINEの比企宏之氏(Technical Evangelismチームマネージャー)は通信業界やクラウドインテグレーターなどで広く活躍してきた技術者としてITエンジニアの技術コミュニティーでもよく知られた人物だ。同氏は2019年からLINEに参加しており、現在は、LINEのAPIを生かしたビジネス開発を提案、技術的に支援する立場にある。

 これに加えてLINEを前提とせずにさまざまなIT基盤技術を想定した中立的な視点で企業のDX推進やCX改革プロジェクトを支援する「副業」も手掛ける。比企氏が副業を手掛ける背景にはオフラインDXの啓もう活動がすくさまLINEのビジネスと結び付くわけではないという事情がある。

 だが企業や自社サービスに限定した狭い行動範囲ではオフラインDXそのものの底上げが難しく、結果として自社サービスにつながる芽も生み出せない。加えて、API利用を啓もうする本業の活動は広く展開するためスケールフリーな構造で仕事を進めなければいけない。DX支援はそれとはまったく異なるベクトルで「事業者に密着したランダムネットワーク型で進めなければならない」ためだ。

 「社内外のオフラインDX啓発活動の結果、DXや顧客体験(CX)、OMO(Online Merges with Offline)施策に関する相談が多く寄せられるようになった。だがそこからLINEでのDX支援ビジネスにつなぐには時間がかかる上、不確定な要素も多く、案件が途中で消滅するケースも考えられる。DXコンサルは必要とされるものの主務では踏み込みにくい」(比企氏)

LINE 比企宏之氏 LINE 比企宏之氏

 多数の相談を受ける中で比企氏は自身の体験から「DXが自然消滅する理由」を次のように整理する。

 一般に、DXのイメージは人により異なり、明確な説明もできないので、成功も失敗もはっきりしない。そのため、何となくツールを導入してみて、いずれ消滅してしまう。

 「DXはデジタル化ではなく、まずは自社の顧客との関わり方、提供する価値の変化を見極め、従業員、商品、サービス、そして組織をどう変化させるかということ。DXのX(トランスフォーメーション)の部分が重要で、それに対してD(デジタル)をどのように使うのかということだ」(比企氏)

本稿は2021年9月に開催されたITmedia主催のオンラインイベント「ITmedia DX Summit vol.9」講演からLINEの比企宏之氏(Technical Evangelismチームマネージャー)による基調講演「DXはなぜ自然消滅する? リアルアセットを有効活用するオフラインDXのすすめ」の内容を基にしている。講演は多岐にわたる話題が取り上げられたが、紙幅の都合上、本稿ではそのごく一部を紹介する。


slide_『勝つDX』『生き残るDX』をテーマにお話をします 比企氏は講演に当たって「この講演に『攻めのDX』や『守りのDX』というキーワードは出てきません。10年・30年先の事業者がDX後の世界で勝つまたは生き残ることを議論する『勝つDX』『生き残るDX』をテーマにお話をします」と注意を示した。講演視聴者には参考図書を惜しみなく披露したことも添えておく

間違いだらけのDXプロジェクト、うまくいかないのは当たり前

 DXは経営者の覚悟がなければ成功せず、現場からのボトムアップは成り立たないというのが比企氏の考えだ。

 特に小売業界は、従来強力な武器だったリアルアセット(旗艦店など)が、コロナ禍で弱体化し、顧客との重要な接点が失われた。また、不確実性が増す中で「大量仕入れ、薄利多売」システムが崩壊した。

 「この状況で従来の手法にならってDX支援のポイントソリューションを入れたとしても、うまく機能せずシステム間の連携もできず、全体のトランスフォーメーションには至らない。日本企業が得意な現状改善をしたところで、現状自体が崩れてしまっては効果を出せない」(比企氏)

DXを名乗るポイントソリューションのワナ DXを名乗るポイントソリューションでデジタライズをしてもDXには結び付かない(比企氏の講演資料より)

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