注目のFinTech企業はなぜこぞって中小企業のB2B取引に狙いを定めるのか 勝ち筋を読む

FinTech企業にとっていま一番アツいのは中小企業のB2B決済のデジタル化支援だという。多様な企業が出現しているがまだまだ市場は飽和しそうになく、多数の投資家がこの市場の成長株企業を狙って出資合戦を繰り広げる状況にある。投資家らが注目するスタートアップ企業の狙いを読み解く。

» 2021年12月16日 11時45分 公開
[Lynne MarekPayments Dive]

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 古くから米国スタートアップが多く集まる西海岸だけでなく、東海岸にも拠点を置く注目のFinTechスタートアップVeemとMelio Paymentsが狙うのは、中小企業を対象とした数兆ドル規模の企業間(B2B)決済市場のシェアだ。この動きは両社だけではなく、既に何十社ものFinTech企業が、新しいソフトウェアソリューションで支払いプロセスのデジタル化を急ぐ企業を獲得しようとしのぎを削る状況にある。「市場機会は巨大であり、ニッチな部分がたくさんある」と業界幹部は言う。ある試算によると、B2Bの市場規模は末端の取引だけでも年間数十兆ドルの価値が見込まれており、全世界の最終的な取引規模は200兆ドルまで成長するという。

 実のところ、決済サービスの老舗と言えるPayPalは20年以上前に消費者の個人的な支払いのデジタル化を開始していた。だが、とりわけ米国企業は、企業間取引においてベンダーの支払いから送金までを紙ベースのシステムに固執して決済してきた。ところが現在は、「Stripe」「Square」「BillPay」といった新興の大規模なペイメントサービスが企業決済のデジタル化をリードしている。その傍らでVeemやMelioなどの小規模な同業者はというと、熱心な投資家の支援を受け、じわじわと独自の市場を切り開いている。

FinTechにおびえる中小企業に商機を見た元ペイパルCEO、資金を送り込む投資家たち

 Melioの共同創設者兼CEOのマタン・バー氏(PayPalの元最高経営責任者)は、軽くリサーチをしただけでも企業における支払いのデジタル化がどれほど遅れているかが分かり、非常に驚いたという。

 バー氏はあるインタビューで「支払いの手続きがまだ紙ベースであることに気付いてショックを受けた」と語っている。町の小さなワインショップや歯科医院、中小企業の経営者らが「買掛金自動化ソリューション」のようなDXをにおわせる業界用語にさえおびえるていることを理解し、すぐにそれをビジネスチャンスと認識した。

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