CDNもOracleが自前で提供 OCIの大幅アップデートの詳細は

OracleがOCIのラインアップを刷新。「最大のフレキシビリティを持ちながらシンプルなサービスを提供する」ことを目標に複数の新機能を発表した。今まで提供してこなかった領域のサービスを含め、攻めたラインアップだ。

» 2022年03月31日 10時00分 公開
[土肥正弘ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 2023年3月16日、オラクルは同社OCI(Oracle Core Infrastructure)に12の新機能を発表した。

OracleのLeo Leung氏 「フレキシビリティ」「セキュリティ」「シンプル化」がさらに高度化すると説明する

 Oracleが提供するクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)は現在37のグローバルリージョンで運営されているが、2022年末までにさらに7リージョンを加える計画だ。「利用量の増加率は第2四半期時点で86%、現在はそれよりも高い」という。データベースサービスが良く知られているが、モバイルアプリを使った音声の認識、物流企業における5000万以上のパッケージの課金、カーシェアリング企業の財務報告や全社的アナリティクスの標準化・統合化、自動車会社の車両設計や試験の大規模シミュレーションなどにも利用されている。他にも金融、サプライチェーン、物流、HPCを使ったシミュレーションなどにも利用される。OCIが目指すのは「最大のフレキシビリティを持ちながらシンプルなサービスを提供する」ことだと同社バイスプレジデントのLeo Leung氏は説明する。

コンピュート領域:開発環境向けコンテナVM、AMDインスタンスの提供

 OCIはさまざまなワークロードに対応する多様なタイプのコンピュート資源を提供している。図1左にある通り、単一またはクラスタ構成のベアメタル、そのマシンの一部を使った仮想マシン(VM)、そしてアプリケーションコンテナというように、あらゆるタイプのインスタンスを用意する。

 さらに、図1右にあるように、VMのフレキシビリティ向上にも注力する。数百種類のインスタンスを備える仕組みではなく、例えば8コアのインスタンスで始めた後に機械学習のようにコア数が必要なワークロードに変化した場合、OCIなら新しいインスタンスの設計やマイグレーション、プラットフォーム変更をせずに、必要なリソースをフレキシブルに追加できる仕組みをとっている。例えば他社クラウドの場合、83コア分のリソースが必要な場合も、メニュー上、最も近いキャパシティーである128コア分のリソースを調達することになり、余剰分にも料金がかかるのが普通だ。一方のOCIは83コアなら83コア分だけを利用できる。

図1 OCIが提供するリソースと、フレキシブルなインスタンス(出典:日本オラクルの発表資料)

 コンピュート領域の新機能は次の通りだ。

  • コンテナVM:顧客側でシンプルなプロビジョニングを可能にする機能。必要なマネージドサービスは全てOCIが担う。Kubernetesのようなオーケストレーションツールを使わずに、コンピュートやネットワークの設定が可能だ。開発やテスト用途で少数のコンテナを使用する場合に有効だ。コードのホスティングとアプリケーションのテストをコンテナVMで実施し、終了後はもっと複雑で全体的なデプロイメントのためにオーケストレーションツールを適用するといった使い方が想定されている。
  • AMD E4 Dense Instances:新しくAMD最新世代のプロセッサを利用したベアメタル「E4 Dense」インスタンスが提供される。ローカルストレージを利用して、遅延を最小にしつつ、パフォーマンスを最大化するインスタンスと位置付けられる。
  • Oracle Cloud VMware Solution on AMD:「VMware Cloud Foundation」サービスの下位にAMD利用のオプションが設けられる。小さなフットプリント、低コストでのプロビジョニングが可能なため、クラウドでのVMware製品群を利用しやすい。

ストレージ領域:ブロックボリュームの最適化と管理効率の向上

 OCIストレージについてもオプション、価格設定、機能の仕組みを含め、全てをシンプル化した。ストレージとのインタラクションは一貫性のある挙動が保証されており、使用しているオブジェクトストレージも一貫性が非常に高い。

 主な特徴は3つある。1つは包括性で、同じサービスがパブリッククラウドとディディケーテッドリージョン@クラウドカスタマー(DRCC:基本的にはシングルテナントで顧客の独自データセンター上で使えるクラウドサービス)でも利用できる。もう1つの特徴はフレキシビリティだ。例えばブロックストレージは1タイプのみの提供だが、パフォーマンス、キャパシティー、サイジングをオンラインで動的に変更可能なため、どのようなワークロードにも対応する。3つ目の特徴が低コスト高パフォーマンスを実現することだ。ハイエンドでは、ブロックストレージのボリューム当たり30万IOPSをパフォーマンス保証付きで利用でき、価格は他社比較で1/50程度となる。なお、2021年に発表されていたオートチューニング機能はブロックストレージを対象に自動で階層化する機能だった。今回の発表ではオブジェクトストレージの自動階層化を実現している。ストレージ領域の新機能は以下の通りだ。

  • ブロックストレージの自動チューニング:アプリケーション要求に基づき、階層化したストレージを柔軟に利用できる。ブロックボリュームのサービスはどのようなワークロードにも対応する。パフォーマンスの自動チューニング機能も提供する。
  • High Availability ZFS:OCI Block Volumesを展開する際のスタックにZFSを組み込んだ。

ネットワーク領域:CDNとCDNインターコネクトの提供など

 バーチャルクラウドのネットワーキングはセキュアなアイソレーションのために重要だが、こちらも動的な変更が可能だ。ここ数年さまざまな機能を追加し、より柔軟で高セキュリティ、管理のさらなるシンプル化してきた。フレキシビリティの面では、デマンドに合わせ完全にフレキシブルなロードバランシング機能を提供している。デマンドのパターンに応じて変更可能で使った分だけの課金となっている。

 またダイナミックルーティングゲートウェイではスケールを拡大し、いろいろな機能を合理化してきた。複数のゲートウェイを1つにまとめる形にして、セキュリティを含めシンプルに管理できる。

 セキュリティに関しては2つのポイントがある。1つはクラウドリージョン専用のプライベートコネクティビティの暗号化を行ったことだ。もう1つは、フロントエンドのWAFをロードバランサーと統合したことである。これにより、ロードバランサーのフレキシビリティがWAFにも適用され、統合により管理と実装がシンプルになった。

 ここ1年ほど、バーチャルクラウドネットワーキングのモニタリング機能強化も行ってきた。より容易にモニタリング管理ができるようになり、エンドツーエンドで可視性できるようになった。主な追加機能は以下の通りだ。

  • Content Delivery Network (CDN) : ネットワークエッジインフラとしてCDN機能を提供する。これにより、コンテンツデリバリーやアップデートをより迅速化できる。
  • CDN インターコネクト:Cloudflareのような他のパートナーのCDNに対して、OCIストレージからコストをかけずにデータを移動するための機能を提供する。
  • Web Application Accelerator:ロードバランサーやアプリケーションファイアウォールにキャッシュを加え、共通のWebリクエストに対して使用するもので、レスポンス時間の改善が期待できる。
  • WAF(Web Application Firewall) v2:WAFを刷新し、EDoS攻撃対策やポリシーマネジメントに関する機能を追加した。
  • VTAP(仮想TAPサービス):アウトオブバンドでパケットインスペクションをするサービスを新しく提供した。これはネットワークのパフォーマンスを向上させる機能だ。
  • Network Visualizer:エンドツーエンドのモニタリングのために、バーチャルクラウドネットワークを視覚的に完全に表現する。オンプレミスシステムと異なりクラウドでは複雑になりがちなモニタリングを容易にし、コンフィギュレーションチェックで設定の確認も可能にした。

 コンピュート、ストレージ、ネットワーキングの3つの領域でOCIは総合的に最高のフレキシビリティを提供する。全てのサービスで非常にシンプルに使えるようにした。OCIがワークロードの種類にかかわらず、顧客が価値を経験できるものとしていきたい。

 またもう1つ重要なことは、顧客が本当に必要なだけのコンピューティング、ストレージ、ネットワークを提供できることだ。非常にきめ細かな最適化が可能で、既存アプリケーションをクラウドに移行するときに、他社クラウドのようにリライトする必要はない。クラウドに移行すれば顧客には見えないところで必要な調整が行われるので、顧客の負担は軽減される。 

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ