MITらがCBDCの技術を検証 「Project Hamilton」の成果はossでコードも公開

CBDCは実用レベルで決済可能なのか。MITらが技術検証を実施し、その研究成果の第1段を発表した。毎秒170万トランザクションの処理が可能だという。検証コードはOSSとして公開している。

» 2022年04月13日 10時00分 公開
[Dan EnnisPayments Dive]

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 ボストン連邦準備銀行(ボストン連銀)とマサチューセッツ工科大学(MIT)は2022年2月2日、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency:CBDC)の可能性を裏付ける共同研究「Project Hamilton」の第1段階の結果を詳述したホワイトペーパーを発表した。

 Project Hamiltonは数年間にわたるプロジェクトだ。「OpenCBDC-tx」を公開したOSSプロジェクト「OpenCBDC」はこのProject Hamiltonの一部である。

毎秒170万トランザクションを処理、決済完了まで2秒未満

 OpenCBDC-txは仮想的なCBDCのためのトランザクションプロセッサで、モジュール式で拡張可能な特性を持っており、2つのアーキテクチャを実装している。まず「アトマイザー」が秒間17万トランザクションを処理する。次に2相コミットを使って秒間170万トランザクションを処理する。

 研究者は「1秒間に10万件のトランザクションを処理し、5秒以内に決済すること」を目標に、コア処理エンジンを構築して2つのアーキテクチャで調査した。どちらのコードベースもこの目標を超え、このうち1つは1秒当たり170万件のトランザクションを処理し、その「大部分」を2秒未満で決済できたと研究者は述べている。

 今後数年間に予定されているProject Hamiltonの第2段階では、サイバーセキュリティに関する課題を探求する予定だと研究者らは説明する。例えば「安全な発行と償還」「ユーザーのプライバシーと透明性のバランスを取る方法」「DoS攻撃から保護しながらオープンアクセスを維持する方法」「オフライン決済」「プログラマビリティ」「監査可能性」などがその対象だ。

プロジェクトのソースコードはGitHubでも公開

 研究者らはホワイトペーパーに加えて、外部の開発者が閲覧や修正、拡張できるようなオープンソースライセンスの基、プロジェクトのコードを「GitHub」で公開した。

 「フェーズ2ではオープンソースリポジトリにおいてさまざまな背景を持つ他の技術貢献者と協力し、これらの課題を探求したいと考えている」とホワイトペーパーの著者は記している。

 MITのデジタル通貨イニシアチブのディレクターであるネーハ・ナルラ氏は「OpenCBDCを多くの人に知ってもらうには、この方法が最適だと考えている。全ての人が、ユニークな知識やスキル、改善のためのアイデアをもたらしてくれるだろう」とBloombergの記者団に語った。

 2020年8月に開始されたボストン連銀とMITの研究は、中央銀行によるCBDCの可能性の探求に寄与する過去2週間の2番目の出版物になる。米連邦準備理事会は2022年1月下旬、デジタルドルの長所と短所を示した40ページの草稿を発表した。この草稿には政策的な推奨は含まれず、一般からのコメントを募ることを目的としている。

 パウエルFRB議長も、議員やホワイトハウスの支持がない限り、CBDCを進めることはないと明言した。

CBDC実装の欠点を発見

 2022年1月の論文では、連邦準備制度理事会(FRB)が商業銀行や他の規制対象事業者などの仲介者に、口座の提供や仮想トークンによる支払いの促進を依頼する可能性が指摘されている。

しかしボストン連銀とMITの研究者は、仲介者を介さずに目標を達成できること、そして分散型台帳技術は単一のアクターの制御下で実行されても「欠点がある」ことを発見した。

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