コロナ禍は在宅趣味に関わる市場にも大きな影響を与えた。2020年に過去最高のギター販売台数を記録したギターメーカーFenderはこの状況に対応すべく、たった3日でSAP ERPをクラウドにリプレースした。
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ギターをはじめとする楽器メーカーとして知られるFender Musical Instruments(Fender)は経営基盤にSAPのERPシステムを採用している。同社はERPシステムのクラウドへの移行を2022年1月に完了させた。クラウド移行はITの信頼性向上と同社クラウド戦略の一環だ。
同社はすでにクラウドファーストの戦略を取っていたが、それでも以前は「ERPの移行は業務に大きな混乱をもたらす」と敬遠していた。
FenderのCIO(最高情報責任者)兼グローバルIT担当シニアバイスプレジデントであるマイケル・スパンダウ氏は、「これら(オンプレミスのSAP ERP)は基本的に当社の至宝だ」と述べている。「SAPは、O2C(order-to-cash、受注から入金まで)、P2P(procure-to-pay、調達から支払いまで)、財務、物流、製造など、あらゆる業務に活用されているからだ」(スパンダウ氏)
しかし、コロナ禍をきっかけとした在宅趣味などの巣ごもり消費ニーズの高まりを受けて、2020年になって売り上げが急拡大すると「至宝」にもほころびが出てきた。オンプレミスのSAP ERPのレポート作成やバッチ処理に長い時間がかかり、時代遅れになっていることが浮き彫りになったのだ。過去最高のギター販売台数を記録したFenderには、それに対応するシステムが必要だった。
多くの企業がパンデミックの影響から業績を乱高下させる中、企業のIT戦略やシステムが脚光を浴びることになった。ERPシステムもこのトレンドにならい、柔軟性や新しい機能を求めてクラウドに移行する企業が増えている。
Fenderは、ITサービス専門企業Lemongrassに「Amazon Web Services」(AWS)への移行を委託した。業務に支障をきたす恐れがあったが、Lemongrassは週末3日間でERPのアップグレードとクラウドへの移行を完了させた。
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