産業別クラウドのトレンドにどう答える? Oracle ERPが出した意外な答え(1/2 ページ)

Oracleは業界特化型のSaaS ERPブームにどう対峙するのだろうか。OCIを含む「フルスタッククラウド」を強みとする同社は、専門性と標準化、アジリティのバランスをどう取る考えだろうか。国内企業の動向と合わせて展望を探る。

» 2022年03月14日 07時30分 公開
[谷川耕一ITmedia]

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 2020年12月に日本オラクルの社長に復帰した三澤智光氏は、同社を離れていた5年の間で最も驚いたのが「フルスタックのSaaSの進化」だったと語る。「Oracleが最大規模のSaaSプロバイダーの1社であることは間違いない」と、その優位性に自信を見せる。

 三澤氏は日本におけるOracleのSaaSビジネスの責任者に生え抜きの善浪広行氏を指名した。2021年8月にクラウド・アプリケーション事業統括 ERPクラウド事業本部の常務執行役員に就任した善浪氏は、日本のSaaSビジネスは好調で「かなり良い顧客を獲得できている」と語る。

国内企業でも採用が広がるERPのSaaS移行、導入スケジュールの実際は

日本オラクルの善浪広行氏 日本オラクルの善浪広行氏

 その象徴的な事例が三井住友フィナンシャルグループにおけるERP刷新プロジェクトだろう。グループ約200社の会計業務を共通化するに当たり「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning(ERP)」を採用した。日本を代表する金融グループが共通会計業務基盤をSaaSで実現することは、規制の厳しい金融業界はもちろんIT投資に保守的な日本の大手企業にとってもSaaS採用に安心感を与えるものだろう。

 SaaS市場はもともとCRM領域でSalesforceが先行して拡大してきた。CRMであればオンプレミスの既存パッケージからの移行よりも、新規にSaaSで顧客管理や営業管理の仕組みを実現する案件が多かっただろう。一方、会計など基幹業務システムは、オンプレミスですでに何らかのアプリケーションパッケージを利用しているケースがほとんどだろう。アプリケーションの更新もしくはITインフラ更新をきっかけに移行を検討することが多く、さまざまなIT投資をクラウドファーストで検討する機運が高まる今の状況ではSaaS ERPが有力な選択肢になっている。

 初期コストが抑えられるSaaSとはいえ、乗り換えを伴うSaaS ERPの導入は多くの手間と時間がかかる。基本的にカスタマイズができないSaaSでは、オンプレミスでのアドオンをどう実現するかに頭を悩ませるとの話も聞こえてくる。

「2カ月でERPを導入とはどういうことだ!?」トヨタグループが驚く

 それら課題に対し、SaaSの標準機能やプロセスに合わせ業務の標準化を図り、わずか2カ月でOracle Fusion Cloud ERPを導入したのが、トヨタ自動車の子会社ウーブン・プラネットだ。

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