FinTech企業と銀行の争いは不要だPayments Dive

FinTech企業は銀行にとってディスラプターなのか、それとも助けなのか。サンフランシスコに拠点を置く決済企業Modern Treasuryのディミトリ・ダディオモフCEOは「銀行とFinTech企業は競争するのではなく、提携するようになっている」と話す。同氏がFinTech企業と銀行の現在地と未来を解説した。

» 2022年08月08日 08時00分 公開
[Dimitri DadiomovPayments Dive]

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 ここ数年、FinTech企業の推進者たちはFinTech企業を「銀行の脅威」であると位置付けてきた。FinTech企業は金融サービスを再定義し、銀行に新たな競争をもたらす「止められないトレンド」(注1)であるという話を聞いたことがある。

本稿を寄稿したModern Treasury CEOのディミトリ・ダディオモフ氏(出典:Payments Dive「Banks and fintechs don’t need to fight」)

 このような意見を持つのはFinTech企業の推進者だけではない。JPMorgan Chaseのジェイミー・ダイモンCEOは、「世界の金融システムの中で銀行の役割が低下しており、あらゆる方面から『異常な競争』(extraordinary competition)(注2)に直面している」と述べている。

 銀行は決済会社やFinTech企業、取引所、ビッグテック、さらにはWalmartのような小売業者との競争に直面していることは間違いないが、この状況は全て変わりつつある。

 銀行とFinTech企業は互いに競争するのではなく、提携するようになってきているのだ。

 新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミックは、デジタル決済やオンラインでの資産管理、オンラインバンキングへのシフトを加速させた。決済や融資、特定形態の預金など、多くの銀行商品が従来の銀行システムからFinTech企業へ移行している。2021年だけでも1300億ドルがFinTech企業に投資され、新興企業は大規模にビジネスを推進できるようになった。米国とカナダにおいてデジタル決済は最大のFinTech分野となっており、2021年に市場規模は1.2兆ドルを超えると評価(注3)される。

 金融サービスやFinTechにおいて、今後最も影響力のあるイノベーションは銀行とFinTech企業の密接なパートナーシップから生まれると予想できる。

新しい波に乗れるか

 Citibankは2020年に発表したレポートで、「銀行はFinTech企業を単なる脅威として考えるのではなく、パートナーとしてコラボレーションする方向に切り替えている」と指摘した(注4)。

 この流れにより、FinTech企業と銀行の双方が相手の求めるものを提供できる。FinTech企業は銀行が持つ事業規模と顧客との関係を、銀行は革新的なテクノロジーと新たなアプローチを求めている。

 パートナーシップの例として、INGがFinTech企業Minna Technologiesと提携し(注5)、企業のデジタル購読を管理するための単一プラットフォームを立ち上げた。

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