「熱心な顧客」が不況を救う？ 4800万人に“パーソナライズされた特典”提供の狙い：Restaurant Dive

不況が忍び寄り、レストラン業界が苦戦を強いられる中、4800万人の顧客を抱えるチェーン店が「会員特典」のパーソナライズ化に乗り出した。マクドナルドやスターバックスなど他の有名チェーンの特典プログラムと比較しつつ、「顧客優遇」の効果を考えてみよう。

[Aneurin Canham-Clyne，Restaurant Dive]

　ベーカリーカフェを運営するPaneraは2022年9月20日、同年10月6日から始めた「MyPanera会員」向けの特別キャンペーンの特典システムに選択肢を追加することを発表した（注1）。

　MyPaneraの特典として、あらかじめ選択されたアイテムではなく個人の嗜好に基づいたボーナスが提供される予定だ。MyPaneraは約4800万人の会員を有するレストランとしては最大規模の特典プログラムだが、他のロイヤリティープログラムのような選択の幅はなかった。

マクドナルドやスターバックスの特典プログラムはどうなっている？

　Paneraの特典プログラムは、同ブランドの売上と（顧客の）ロイヤリティーの大きな原動力になっている。2022年上半期におけるPaneraの全取引の半分以上が特典会員によるものだった。

　「特典会員は非特典会員よりも頻繁に（店舗に）訪れ、より多く消費している」と同社はリリースで明らかにした。今回、特典システムに選択肢を追加することは、MyPaneraの「リレーションシップベースロイヤリティープログラム」と関連している。同プログラムは総消費額に応じたポイントベースのシステムではなく、来店頻度や消費額、顧客の好みに基づいて特典を提供するものだ。

　MyPaneraプログラムで受け取る特典を顧客が選択できるようにすることで、Paneraは顧客のロイヤリティーとエンゲージメントが深まることを期待している。同社は2022年9月29日から1週間、デリバリーの割引やブロッコリーチェダースープ、「Unlimited Sip Club」（注2）の2カ月無料提供などの特典を用意して、特典プログラムを宣伝している。月額10.99ドルでPaneraが経営するカフェなどでの飲み物が飲み放題になるUnlimited Sip Clubはロイヤリティープログラムの最新のアップグレードだ。従来のコーヒー定期購入プログラムに取って代わる。

　Paneraは、アプリを使ったデジタル注文や最近立ち上げたデジタル専用ストア、店内での食事のデジタル注文に注力している。これらのチャネルによって、Paneraはより多くの顧客データを収集する。これらのチャネルは顧客をMyPaneraプログラムに登録するためのパイプとして機能している。

　McDonald'sやメキシカンファストフードチェーンのTaco Bellなどの大手ブランドでも、（購入金額に応じたポイント付与制度である）「Points for dollar」のプランは、ロイヤリティープログラムを導入するシンプルな方法であることに変わりはない。

　メキシカンレストランチェーンのChipotleも基本的にPoints for dollarのロイヤリティープログラムだを採用しているが、特典をパーソナライズする機能を2021年に追加し、（顧客は）より多くポイントをためるようになった。

　StarbucksのポイントプログラムはPoints for dollarを基本にしている（注3）が、ポイントをためる他の方法も提供している。同社は2022年9月第3週、顧客が特定の特典にアクセスするためのトークンを販売できるセカンダリNFTマーケットプレースの追加を発表した。

　Paneraは対照的に消費者の支出を特典に組み込んでいる。同社は顧客の嗜好や（サービスの利用）頻度、その他の消費者行動も考慮しており、よりパーソナライズされた特典を提供できる可能性がある。

（注1）Panera Expands MyPaneraR Loyalty Program to Offer Members New Choice of Personalized Rewards

（注2）月額10ドル99セント（約1600円）（税別）を支払うことで、Paneraが経営するベーカリーカフェでドリップ式ホットコーヒーやホットティー、アイスティーなどの飲み物を定期購入できるサービス。店舗によって飲み物の種類や時間、提供方法に制約がある。

（注3）FREE COFFEE IS A TAP AWAY（STARBUCKS REWARDS）

（初出）Panera will allow loyalty customers to choose rewards

原文へのリンク