近年、企業のIT投資は増加傾向にある。米国の主要銀行であるJPMorgan Chaseは140億ドルに及ぶIT予算をどのように配分しているのか。同社のCIOがその使い道を語った。
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ハイブリッドクラウドインフラやデジタル商品とサービス、予測分析、データセキュリティ、ソフトウェア開発、そして約6000のアプリ。これらは、JPMorgan ChaseのグローバルCIO(最高情報責任者)であるロリ・ビア氏が管理する140億ドルのIT予算の中でも多くの割合を占めており、メタバーステクノロジーに関する研究開発費も若干含まれている。
2022年9月20日に開催されたThe Wall Street Journalの「CIO Network Summit」で、ビア氏は次のように語っている。「人は時に数字にとらわれる。140億ドルという数字は大きく見えるが、われわれは多くの製品やサービスをサポートする大企業であり、その多くはテクノロジーに依存している」(ビア氏)
企業がインフレや景気後退、地政学的不安の影響を相殺するために他の分野での支出を削減しても、テクノロジー予算は2023年に向けて増加すると予想される。
Forrester Researchが2022年9月29日に発表したレポートによれば(注)、2022年の世界のテクノロジー支出は4兆8000億ドルを超えると予想されており、企業の4分の1は今後1年間にこの支出が5%以上増加すると見込んでいる。
2016年にJPMorgan Chaseの法人・投資銀行のCIOに就任し、翌年にはグローバルCIOに昇格したビア氏は、「IT投資についての説明をビジネス用語で組み立てて、モダナイゼーション構想のビジネス価値を強調することが、予算に対して経営幹部の賛同を得る鍵」だと述べている。
「『140億ドルを投じて6000のアプリを作った』という話から脱却し、投資をビジネスに結び付けなければならない」(ビア氏)
ビジネスとITの接点を実現するために、ビア氏が採用している3つの戦略は以下の通りだ。
ビア氏によると、予算の半分近くにあたる60億ドルは、成長とイノベーションを支援する新しいデジタル製品やサービス、日常業務の運営に必要なテクノロジーの導入に充てられるという。
さらに別の40億ドルは、JPMorgan Chaseブランドのリテールバンキングや投資銀行、商業銀行、資産運用という同社の4つの主要事業に割り当てられている。残りの予算は、インフラのモダナイゼーションとビジネスプロセスのデジタル変革に使われる。
「残りの資金は、規模を拡大するための強固で幅広いプラットフォームを構築するために費やしている。インフラやソフトウェア開発ライフサイクル、データサイエンス用のモデル開発ライフサイクルなど、ビジネスのさまざまな側面で投資を進めています」とビア氏は言う。
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