2027年に35%の国は「地域特化AI」でロックイン AI主権の確立が進むAIニュースピックアップ

Gartnerは2027年までに世界の35%の国が地域固有のAI基盤に固定されると予測。地政学リスクやデジタル主権の観点から自国モデルへの投資が加速している。

» 2026年02月07日 08時00分 公開
[ITmedia エンタープライズ編集部]

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 Gartnerは2026年1月29日(現地時間)、2027年までに35%の国が、自国の文脈データを使う地域固有のAIプラットフォームに事実上固定されるとの見通しを発表した。現在は5%にとどまっており、短期間で大きく構図が変わる可能性がある。

背景に地政学的緊張とデジタル主権への投資加速

 背景には、地政学的緊張と規制強化、安全保障上の懸念がある。

 各国政府はデジタル主権の確保を掲げ、自国で開発・運用を統制できるAI基盤への投資を増やしている。対象はモデルだけでなく、計算資源やデータセンター、関連インフラまで広がる。判断軸としては、計算資源の確保よりも、地域の法制度や文化、利用者の期待に沿うことが重みを増しているという。

 Gartnerのバイスプレジデントアナリストであるゴーラヴ・グプタ氏は、各国が米国主導の閉鎖的モデル以外の選択肢を探し、国内モデル育成を促進させていると説明する。信頼性や文化面の整合が重要な評価軸になりつつあり、非英語圏では教育や法規制順守、公共分野などで地域特化型の大規模言語モデル(LLM)が汎用(はんよう)的なグローバルモデルを上回る成果も見られるとしている。

 同社は、AI主権の確立を目指す国は2029年までにGDPの1%をAI関連インフラに投じる必要があるとの仮説も示した。西側の影響力に警戒感を持つ国や顧客が提携関係を見直す動きもあり、国際協力の縮小や取り組みの重複が起きる懸念もある。

 AI主権とは、国家や組織が自国の地理的範囲内でAIの開発から導入、利用までを管理できる能力を指す。クラウドのローカライゼーション、国家AI戦略、企業リスク管理、国家安全保障上の課題などが投資拡大を後押ししている。競争で出遅れることへの危機感も、自己完結型AIモデルの実現への技術開発と資金投入を促進させている。

 グプタ氏は、データセンターやAIファクトリー向けインフラがAI主権投資の中核になると指摘する。これらの分野では建設と投資が急拡大し、AIモデルを主導する一部企業は2桁成長を続け、時価総額が数兆ドル規模に達する可能性があるとの見方も示した。

 こうした環境を受け、同社は最高情報責任者(CIO)に対し、地域やベンダーが異なる複数のLLMを切り替えられるオーケストレーション層の活用を提言する。特定モデルに縛られない業務設計が重要になる。また、AIガバナンス、データの所在、モデル調整手法が各国の法規制や文化、言語に関する条件に適合しているかどうかを確認する必要がある。

 主要市場の国内クラウド事業者や地域特化型LLM提供企業との関係構築、信頼できるパートナーの整理も課題となる。加えて、AI関連法規やデータ主権規則、新標準など、導入やデータ処理に影響する動向の継続的な把握が求められる。

 Gartnerディスティングイッシュトバイスプレジデントアドバイザリーの松本良之氏は日本について、AI法施行とAI基本計画の閣議決定を契機に対応が本格化したと述べる。海外展開する企業ほど国ごとに異なる規制への対応が経営上の論点となる。単一基盤への過度な依存を避け、複数の地域特化型モデルを柔軟に切り替えられる設計と、国内クラウド事業者や地域ベンダーとの連携が競争力確保に直結するとしている。

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