ポスト・ベゾス時代のAmazonは期待外れ? 米アナリストたちの分析はRetail Dive

一部のアナリストは、Amazonの第3四半期決算を前に同社の売り上げや利益などの目標を引き下げた。ポスト・ベゾス時代のAmazonの方針転換について彼らはどう分析したのか。

» 2022年11月14日 07時00分 公開
[Daphne HowlandRetail Dive]

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Retail Dive

 Amazonの「Day two」(創業期を終えた事業の安定運用フェーズ)はこんな感じなのかもしれない。

 複数のアナリストは2022年10月24日、同年10月27日に発表されるAmazonの第3四半期決算を前に、売り上げや利益などの予想を引き下げた。経費の増加や「Amazonプライムデー」における販売イベントの失望、インフレを特徴とする厳しいマクロ環境などを理由に挙げている。

 コンサルティング企業MKM Partnersのマネージングディレクターであるロヒト・クルカルニ氏によると、Amazonは自社の企業方針に対してより保守的なアプローチを取っている。不動産アドバイザリー会社Case Property Servicesのマネージングパートナーであるシュロモ・チョップ氏によると、この方針は、2021年に創業者のジェフ・ベゾス氏から引き継いだアンディ・ジャシーCEOの下での小売戦略における、より広範な経営方針のシフトの一環である可能性がある。

 「ジェフ・ベゾス氏は先見性のある創業者タイプで、アンディ・ジャシー氏はどちらかというと経営者タイプだ。両者の間には違いがあると思う」とチョップ氏は電話で語った。

ベゾス時代からの方針転換は、Amazonの今後にどう影響するか?

 大手調査会社のTelsey Advisory Groupは2022年10月24日、「米国と海外市場のマクロトレンドの軟化」「個人消費環境の厳しさ」「2022年のAmazonプライムデーへの反応が予想より低かったこと」を理由に、第3四半期と第4四半期のAmazonの売り上げと利益の予想を引き下げた。

 ジョセフ・フェルドマン氏が率いる同社は、Amazonの第3四半期の売り上げについて、「2022年7月に開催された1回目のAmazonプライムデーセールの恩恵を受けたものの、以前予想した(4%)の伸びを下回る」と予想している。調査によると、Amazonプライムデーの買い物客の多くは、インフレに備えて必需品の購入にとどまった。調査会社のNumeratorによれば、同年10月に開催された2回目のAmazonプライムデーセールにおける平均注文額は、前回と比較して23%減少した。

 「われわれの感覚では、プライムアーリーアクセスセール(注)も精彩を欠いていた」とフェルドマン氏は言う。

(注)Amazonプライムデーに並ぶビッグセール。同セールは一部の国でのみ開催されており日本は該当しない

 ブライアン・フィッツジェラルド氏が率いる大手金融機関であるWells Fargoのアナリストによれば、インフレによって消費者の支出が増え、娯楽や外食などのサービスを優先するようになった結果、Amazonへの裁量的支出が減少しており、電子機器販売やアパレル、アクセサリー分野の売り上げの弱さが露呈した。

 Amazonは収益を上げるために、より非小売業に傾倒している。MKM Partnersのアナリストは、Amazonマーケットプレースの出品者とのコミュニケーションを根拠に「2022年10月のAmazonプライムデーの売り上げは同年7月を下回ったが、Amazonへの広告費は業界のトレンドラインを上回って推移している」と判断していると述べた。同アナリストは、Amazon Web Services(AWS)やサブスクリプション、広告の売上予想を据え置く一方で、eコマースとAmazonマーケットプレースの売上予想を引き下げている。

 これも顧客に執着していたベゾス時代からの転換だとチョップ氏は言う。

 「ジェフ・ベゾス氏にとって(事業運営の)全てが顧客第一主義だった。しかし広告を出すということは人々が求めているものをそのまま提供するのではなく、どこか別の場所に押しやろうとすることだ。人々が探しているものだけを提供するのであれば広告に意義はあるのだろうか」(チョップ氏)

 Amazonはまた、爆発的なコスト増にも直面している。その原因はホリデーシーズンを前に発表された15万人の新規雇用と賃上げにあり、2023年のコストに10億ドル上乗せされる可能性がある。MKM Partnersによれば、株式報酬が増加するため、2022年は40億ドルほどを穴埋めできるが、それでも労働組合との闘争によるコストも発生する可能性がある。

 だがこうした新たな圧力にもかかわらず、Amazonは新たなアプローチによって長期的には良いポジションを維持している、とアナリストたちは述べる。

 「Amazonの収益性は、小売全体にわたるプロモーションの高騰や人件費、サプライチェーン、ラストワンマイル配送などの営業コストの高騰、そして継続的な戦略的投資によって圧迫されると思われる」とフェルドマン氏は述べる。「これらの傾向を超えて、Amazonは粘着性(スティッキネス:stickiness)の高い顧客ベースと中小企業との関係を活用しながら継続的に市場シェアを獲得しており、より広い小売環境で優位性を発揮するとわれわれは予想している」(フェルドマン氏)

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