Amazonの「運送会社化」が止まらない 航空貨物事業の“野望”とはSupply Chain Dive

Amazonは商品配送をさらにスピードアップするために、ハワイアン航空と契約を締結した。「運送会社化」が止まらないAmazonの“野望”とは。

» 2022年11月17日 07時00分 公開
[Max GarlandSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 オンライン小売大手のAmazon.comは2022年10月21日、同社の巨大なフルフィルメント(注1)ネットワークによる配送をさらに迅速化するため、Amazon.comの貨物を輸送するヴァーチャルエアライン(注2)のAmazon Airに「貨物機10機を追加する」と発表した。

 Amazonが航空機リース会社のAltavairを通じてリースするAirbusA330-300改造貨物機は、2023年後半に運航を開始する予定だ。操縦と整備を担当するハワイアン航空は、運航に備えて米国本土にパイロット基地を設立する。

(注1)ECサイトにおける受注から商品のピックアップ、梱包、発送、代金回収、返品対応といったアフターサービスまでの一連の業務。

(注2)自社では航空機を保有せずにリースし、運航をアウトソーシングする航空会社。

Amazonが取引で手に入れた「2つのもの」

 今回の取引によって、Amazonは航空貨物事業における“野望”を実現するために必要な2点を手に入れた。

 すなわち、航空機のリース契約と運航会社だ。

 Amazon Global Airのサラ・ローズ氏(バイスプレジデント)は、同社のブログに「AirbusA330シリーズの受け入れは当社では初めてだ。(AirbusA330シリーズは)Amazon Airにとって最新かつ最大の航空機で、フライトごとに多くの荷物を届けられるようになる」と投稿した(注3)。

 Amazonは2016年に最初の航空機が離陸して以来、所有する航空機を増やし、倉庫間の在庫移動のスピードを迅速化してきた。現在、Amazon Airでは110機以上の航空機がグローバルネットワークで就航している。「新しい航空機は、当社が保有する古い航空機の段階的な廃止に合わせて導入する」とローズ氏は述べる。

 デポール大学チャディック首都圏開発研究所が2022年9月に発表したレポートによると(注4)、2016年以降の堅調な拡大にもかかわらず、Amazon Airの1日当たりの飛行距離の伸びはここ数カ月で鈍化している。2021年9月〜2022年2月までの6カ月間は14.3%増だったのに対して、2022年3〜8月はわずか3.8%増にとどまった。

 同レポートによると、これはEコマース(電子商取引)の需要が2020年と2021年の急増から一転して、(2022年は)減少したことが影響している。

 航空機メーカーのAirbusによると(注5)、Amazonが契約した航空機AirbusA330-300P2Fは、低密度貨物(注6)を積載できるため、インテグレーター(注7)やエクスプレス輸送会社に適している。ハワイアン航空は2010年からA330シリーズを導入しており(注8)、メンテナンスと運用に精通している。

 ハワイアン航空は、米国本土にパイロット基地を設立するだけでなく、既存のメンテナンス基地を拡張し、Amazonの貨物業務をサポートするために雇用を拡大する予定だ。ハワイアン航空のニュースリリースによると(注9)、Amazonの将来のビジネスニーズに応じて航空機を拡張することを可能とする契約を締結した。

 「AmazonはAirbusA330シリーズをネットワーク最大のボリュームポイント、つまり巨大フルフィルメントセンター間を結ぶために使うだろう。おそらくハワイ(と本土をつなぐような)長距離便で活用するはずだ。ただし、最終的に指示するのは彼ら(Amazon)だ」と、ハワイアン航空のピーター・イングラム氏(プレジデント兼CEO)は、2022年10月21日の投資家説明会で述べた(注10)。

 ハワイアン航空が提出した証券報告書によると、ハワイアン航空はAmazonに航空貨物輸送サービスを8年間提供する。期間延長も可能だ。

 証券報告書には「契約期間中、ハワイアン航空は乗務員を派遣して、整備や特定の管理業務を遂行し、航空機保険の調達を行う」と記載されている。Amazonはハワイアン航空に対して航空機1機当たりで計算する月額固定料金、飛行時間当たりの料金、運航サイクル当たりの料金を支払う。また、燃料費など特定の運航経費をハワイアン航空に払い戻す。

 この取引に関連して、ハワイアン航空はAmazonに今後9年間に行使可能な同社普通株式の最大15%を取得するためのワラント(注12)を発行した。Amazonは2019年、同じく同社の航空機を運航するAtlas AirとATSGとの間で同様のワラント契約を締結している。

(注3)Amazon Air adds 10 Airbus A330-300s to its global fleet(Amazonのブログ)

(注4)Take off in Norther Kentucky(Chaddick Amazon Air Brief No.7)

(注5)Airbus to join Amazon Air fleet with ten A330-300P2F converted freighters(Airbus)

(注6)容積のわりに重量が軽い貨物のこと。6000立方センチメートル当たり1キロ未満。

(注7)航空会社(キャリア)とフォワーダーの機能を兼ね備えている事業者のこと。フォワーダーとは荷主から荷物を集荷し、配送する事業者を指す。集荷した荷物の航空輸送は航空会社に委託する。

(注8)Hawaiian Begins New Era With A330 Inaugural Flight(Hawaiian Airlines)

(注9)Hawaiian Airlines Announces Agreement with Amazon to Operate Freighter Aircraft(Hawaiian Airlines)

(注10)Hawaiian Holdings, Inc. Investor Call(Hawaiian Airlines)

(注11)UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION

(注12)ある一定の期間、株式をあらかじめ定められた価格で購入する権利。

(初出)Amazon Air to add 10 freighters operated by Hawaiian Airlines

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