ハイパースケール vs. マルチクラウド クラウドコントロールの戦いの行方CIO Dive

一般的に、大手クラウドサービスプロバイダーは独立系のSaaSベンダーよりも景気後退に対応する能力が高い。しかし、マルチクラウド戦略が基盤ソフトウェア企業に依存している中ではどうだろうか。

» 2022年11月18日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CIO Dive

 Amazon Web Services(以下、AWS)やMicrosoft、Googleがクラウドの市場シェアを巡り激しく争っている裏で(注1)、クラウドサービスプロバイダーとマルチクラウド基盤のソフトウェアベンダーとの間で小さな争いが起きている。これは、「『as a Service』分野を支配するのはどのような企業か」「ハイパースケーラーか小規模プロバイダーか」を決める、より拡散的で激しい闘争だ。

企業の関心によって、勝利者は変わる?

 Bain & Companyの最新レポートによると(注2)、企業はベンダーロックインを回避すると同時に、サイバーセキュリティやアプリ監視などの緊急性が高い個別の分野で最先端となるベストインブリード技術を求めて、マルチクラウド基盤ソフトウェアベンダーを選択する。コンサルティング会社の分析によると、企業にとっての関心が利便性や信頼性、コスト、既存ITとの統合である場合は、ハイパースケーラーが勝利する。

 AI(人工知能)やML(機械学習)、ビジョン、自然言語処理技術に依存するものなど、規模を必要とするアプリケーションの場合も大手のクラウドソリューションプロバイダーが優位に立つ。

経済不況によって崩れた両者の均衡

 SaaSやIaaSといったマルチクラウドサービスを提供する企業の多くは、比較的新しく、小規模な企業であり、市場の長期的な落ち込みを乗り切るための資金力を持ち合わせていない。そんな中で、AWSやMicrosoft、Googleのような企業は、低迷する経済を乗り切るのに有利な立場にある。

 Bain & Companyのグローバルテクノロジープラクティスでリーダーを務めるデビッド・クロフォード氏は、CIO Diveのインタビューで「成長段階の企業たちは、より安全なビジネスモデルを持つ企業に比べて、大きな評価の引き下げを受けている」と述べた。

 同氏は「クラウドソフトウェアがハイパースケーラーに統合され、M&A活動が活発化することは、潜在的な成果だ」と続けた(注3)。

企業は今後、どのように選択していけばよいのか

 「Snowflakeのような企業を『データクラウドベンダー』として検討しているのなら、おそらく大丈夫だろう。一方で、12カ月前は有望に見えたが、現在、資金調達に苦労しているような段階の企業を検討しているCIO(最高情報責任者)は、その賭けにもう少し慎重になる必要がある」(クロフォード氏)

 マルチクラウドISV(独立系ソフトウェアベンダー)の上位企業は、2年間の高成長からに続いて、現在も予想を上回る成長を遂げている。彼らの市場評価額は2020年から2021年にかけて25%増加し、その前年は157%という大幅増を経験した。一部のISVは、年間売上高の50倍もの評価額を享受している。

 一方で、評価額が正常化すると、資金調達が問題になることがある。

 「as a Service」ソフトウェアを含むITへの全体的な支出は、2023年も堅調に推移すると予想されている(注4)。Bain & Companyが調査した企業の4分の3以上が、IT予算は増加するか横ばいになると予想している。

 「当社の顧客の多くは、ITはもちろん、インフラストラクチャをコストセンターではなく、生産性を向上させるものだと考えている。しかし、この景気循環の中でテクノロジー予算が後退することはないと言ったら、私たちは皆、混乱するだろう」(クロフォード氏)

 クロフォード氏によれば、予算削減を考える中で、ノートPCやデスクトップPC、モバイル機器の購入における裁量的な削減はあり得るという。

 「予算削減の即時性にかなうものはない。しかし、既に進行中のITプロジェクトがあるならば、それを完成させることで迅速に生産性を向上させることも可能だろう」

© Industry Dive. All rights reserved.

注目のテーマ