2023年、eコマースを狙うサイバー脅威はこれだ ImpervaのCTOが予測

Impervaは記者説明会を開催し、eコマースを標的にしたサイバー攻撃の最新トレンドや2023年の脅威予測などを発表した。同説明会から、eコマース事業者が今すぐ対処すべき3つのセキュリティポイントが明らかになった。

» 2022年11月24日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]

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 Impervaは2022年11月18日、小売業界におけるセキュリティトレンドを解説する記者説明会を開催した。eコマースにおけるセキュリティ脅威の現状と日本企業が講じるべき防御手法、2023年度のeコマース市場で流行する可能性があるセキュリティ脅威予測について発表した。

モバイルアプリなどが利用する「API」を保護せよ

 記者説明会ではImpervaのCTO(最高技術責任者)であるクナール・アナンド氏が登壇し、サイバーセキュリティの観点から今の小売業界でどのような課題が生じているかを説明した。

Impervaのクナール・アナンド氏

 クナール氏によれば、eコマースではbotによる自動化されたサイバー攻撃が流行している。インターネットにおけるトラフィックのうち、約41%がbot関連のトラフィックと考えられており、そのうち約60%、つまりトラフィック全体の約25%が悪意あるbotだという。これに加えて脅迫目的のDDoSトラフィックも増大している。「巧妙なサイバー攻撃が増加しており、オンプレミスやクラウドでもセキュリティ対策が求められています」(アナンド氏)

eコマースを標的とするサイバー攻撃の現状(出典:Imperva提供資料)

 その中でも特にセキュリティ対策を講じる必要があるのが「API」だとアナンド氏は指摘する。多くのeコマース事業者はモバイルアプリを提供しており、そのアプリがシステムと通信する際には複数のAPIが利用されている。しかしこのとき、どこに、どれだけのAPIが用意されており、そこでどのようなデータが通り、どのように守られているかなどをしっかりと把握できていないケースも多い。

さまざまなサイバー攻撃がAPIを標的にしている(出典:Imperva提供資料)

 アナンド氏はこれを踏まえて、企業が抱えるAPI保護の課題として「eコマース企業の知識不足」「APIのリスクの質が他と異なること」「シャドーAPIの存在」の3つを挙げた。

 「eコマース事業者はモバイルアプリのAPIがサイバー攻撃者に見つかりにくいと考えているかもしれないが、そんなことはない。APIは(何も対策しなければ)パブリックだ。セキュリティ団体のOWASP(Open Web Application Security Project)はアプリ保護とは別に、APIセキュリティに関するドキュメントとして『OWASP API Security Top 10』を公開している。つまりアプリのセキュリティ対策とは別で、APIについても対策を講じる必要があるということだ。また、APIがどこにあるか把握しきれていないことも多く、“シャドーAPI”化していることも課題だ。これらのことから、サイバー攻撃者にとってAPIは絶好の標的と言える」(アナンド氏)

Impervaが提供するAPIセキュリティのソリューション(出典:Imperva提供資料)

eコマース事業者はデータプロテクションについても課題を抱えている

 アナンド氏は続けて、eコマースが直面するデータプロテクションの課題についても解説した。Impervaはデータプロテクションについて、セキュリティとリスクマネジメント、コンプライアンス、プライバシーの4つの領域に分類している。

 eコマース事業者の多くは、これまでのSQLデータベースだけでなくデータレイクやデータウェアハウスをはじめとするさまざまなタイプのデータベースを活用し始めている。しかしここでも“全てのデータを把握しきれていない”という、APIと同様の問題が発生しており、漏えいリスクが高まっている。

 加えて日本企業では、データプライバシーの課題として個人情報保護法の順守が求められる。特にeコマース事業者は機微な個人情報を集めることになるため、監査へのプレッシャーが高まり、多くの企業がデータ保護への関心を持っている。

 Impervaはこうした事業者に向け、API保護やデータプロテクションへの取り組みとして、ネットワークにおけるセキュリティ対策だけでなくデータを主眼としたセキュリティ対策を提供している。日本市場においても「Imperva Data Security Fabric」を提供し、これがeコマース事業者にマッチすることをアピールした。

(左)Impervaが提供する「Data Security Fabric」(右)Impervaの各種ソリューション群でデータを守る(出典:Imperva提供資料)

2023年の脅威予測 「ホリデーセール」が狙われる

 アナンド氏は最後に、2022年から2023年にかけて日本でも発生する可能性があるeコマースの脅威予測を発表した。まず予想されるのは、年末にかけての「ホリデーセール」に対し、買い占めのショッピングbotが急激に増加するだろうということだ。サイバー攻撃者はアカウントを乗っ取り、他人になりすまして買い物する。eコマース事業者にとしては、在庫を全て買い尽くされて商品を転売されるリスクがある。

 「既に予兆は確認されており、数週間以内に問題になるのではないかと考えている。eコマース企業は継続した監視が必要だ。そして顧客や消費者は自らのセキュリティに注意を払ってほしい」(アナンド氏)

 また、同氏は100万件を超える膨大な量のデータ漏えいにも警鐘を鳴らす。特に気を付けたいのは、APIやソフトウェアサプライチェーンの弱点をついたデータ漏えいだ。

 「APIは幅広く利用されている。APIはデータのすぐ上に存在するもので、APIを攻撃することでeコマースが持つ大量のデータにアクセスできてしまう。既に数千万単位でAPIを介した漏えいが観測されている。個々のアプリに対するセキュリティ対策も重要だが、API保護も極めて重要だ。企業はそこにも注力してほしい」(アナンド氏)

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