クラウドの導入検討 ありがちな「つまずき」と「解決策」は?はじめてのクラウド導入“これ“に注意(1/2 ページ)

DX推進のためにクラウドを導入する企業が増えている。一方で、「あるある」なミスも増えている。本当に組織のその判断は正しいのか。どうすればミスを起こさずに推進できるのか。今回は導入検討フェーズに焦点を当てて解説する。

» 2022年12月15日 08時00分 公開
[折笠丈侍ITmedia]

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 企業のパブリッククラウド導入が堅調に進んでいる。総務省の令和4年版「クラウドサービス市場の動向」(注1)によれば、今後も前年比20%台後半のペースでの伸びが見込まれている。一方で、クラウド導入の各フェーズでは「あるある」なミスが頻繁に起きているのも事実だ。

 本稿は、フェーズの中でも最初の「クラウド検討フェーズ」で企業が気にすべきこと、気を付けることを解説する。

 はじめてクラウドサービス導入を検討する際にはさまざまな検討要素があるが、中でも担当者が気にするのは、「今利用しているアプリケーションが問題なく動作するか」「高い費用対効果が得られるか」「ユーザーが満足するか」「セキュリティは問題ないか」「可用性に問題はないか」といったことの場合が多い。

 これらを検討するにあたって企業あるいは担当者は何を知っておくべきなのだろうか。

この連載について

本連載では、「Amazon Web Services」(以下、AWS)のようなIaaS・PaaSベースのパブリッククラウドサービスを導入するにあたって、「ありがちな誤解」や「つまずきポイント」とその「解決策」を、計画フェーズと移行フェーズに分けて解説する。クラウド導入検討の参考になれば幸いだ。

筆者紹介:折笠丈侍(ソニービズネットワークス株式会社 開発本部)

98年より大手・新興キャリア数社でインターネットアクセスサービスや法人イントラネットソリューションのテクニカルセールスに従事。2007年よりソニーグループ傘下のソニービジネスソリューション株式会社に入社し、法人向けICTソリューション全般の法人営業とマーケティング支援を担当。2015年より同社AWSサービスのプリセールスエンジニアとして営業支援やマーケティング企画支援を担当。現在AWS認定12資格のうち11資格を保有。



今利用しているアプリケーションが問題なく動作するか

 「Windows」や「Linux」など、広く普及している汎用(はんよう)OSで動いているアプリケーションなら、それらのOSに対応しているクラウドサービスを選ぶことで基本的には問題なくアプリケーションを動作できる。

 移行においても、クラウド側にはオンプレミスで稼働中のアプリケーションやシステムをシームレスに移行できるサービス群がそろってきており、黎明期には困難であった「システムやアプリケーションを含む全面的なクラウド移行」がおおむね可能だ。

 一方、一部のシステムやアプリケーションはクラウドに不向きで、移行できないものがあるのも事実だ。

 はじめてクラウドを利用する場合は、「PoC」(Proof of Concept:概念実証)や導入事例の把握、クラウドサービスの知見や実績を持つパートナーの助言を基に、業務への影響度が比較的低めのシステムから移行すると良いだろう。影響度が少ないシステムには、一般的に開発環境や、基幹系ではない情報系システム、二次バックアップ先としてのクラウドストレージなどがある。

 初期段階では、部分的に導入してオンプレミスとハイブリッド運用しつつ、クラウドサービスの特性を把握して徐々に本番環境を移行していくことが重要だ。

高い費用対効果が得られるか 購入して所有する方が安上がりなのではないか

 大前提として、ユーザーはクラウドを使う利用する場合にインフラやサービス基盤などのIT資産を所有する必要はない。オンプレミスで行えたようなカスタマイズができなくなる一方で、「数分でのリソース調達」や「オンデマンドサービスと従量課金で不要なリソースの削除」が可能になり、コスト最適化が図れる。

 従量課金というと、「予想外に高額な請求が発生する」といったマイナスイメージがよく語られるが、それらを未然に防ぐ仕組みもサービス側で用意されている。むしろ、「クラウドの柔軟性」を使いこなせば「ユーザーの満足度」を上げたり、「ビジネス機会の逸失」を防いだり、「運用管理の工数」を大幅に削減できたりする。

 これらは見た目のキャッシュアウトの額には表れないクラウド特有のメリットであるため、投資額に見合うかどうかを検討する上で忘れないことが重要だ。

 クラウドサービスの予算取りで起こりやすい間違いが、「オンプレミス更新時の方法をクラウドのサービス利用料にそのまま適用」することだ。具体的には、オンプレミス更新時には「ハード・ソフト購入費用」と「構築作業費用の総額を5年償却した場合の資産」として計上すると仮定して「クラウドサービス利用料の60カ月分の合計額と単純比較するケース」がある。

 クラウドサービス利用料にはライセンス費用、データセンター費用、サービス基盤の可用性や機密性、完全性確保のためのコスト、ネットワーク費用やモニタリングコスト、サポート窓口の費用などが含まれているため、一見クラウド利用料の方が高く見える。クラウド移行により「インフラの管理運用コスト」が無くなる点や、「迅速性、可用性、セキュリティインシデントの発生リスク低下などで得られる価値」は、見た目のキャッシュアウト額だけでは測れない。

 これらのクラウドの価値が自社業務に与える効果をしっかり把握して判断する必要がある。

図1 クラウド化によるコスト削減イメージ(出典:AWS White Belt Online Seminar 「AWS のよくある都市伝説とその真実」)
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