旧世代型の自動運転システムと決別した「Waabi Driver」Transport Dive

停滞がささやかれる自動運転技術界隈で注目のスタートアップが登場した。シミュレーションやAIの学習コストが下がったことで、従来とは異なる開発アプローチを選択しているようだ。

» 2023年01月12日 08時00分 公開
[David TaubeTransport Dive]
Transport Dive
Waabiのラケル・ウルタスン氏(WaabiのWebサイトより)

 人手不足や賃金上昇に苦慮する北米においては輸送車両の自動運転技術の普及への期待が高まっている。本稿で取り上げるWaabiはカナダを拠点とする「次世代型」AI(人工知能)を使った自動運転技術を掲げるスタートアップ企業だ。

 創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるラケル・ウルタスン氏は、Uberの自動運転技術の研究開発部門だったUber ATG(現Aurora)のチーフサイエンティストを務めたことでも知られる。

 ウルタスン氏は『Transport Dive』のインタビューで「自動運転のスタートアップである当社のトラック用自動運転技術は、すでに路上でテスト走行を行う準備が整っている」と述べた。

旧世代とは違う「走りながら学習とテストを繰り返す」自動運転システム

 同社は2022年11月初旬に(同社「Waabi World」構想に基づく)自動運転システム「Waabi Driver」を発表した。Waabi Driverは最終的にトラックに運転手も整備士も不要にすることを目指している(注1)。

 「このシステムは拡張性が高く、安全かつ柔軟な非常に差別化された技術だ」――。ウルタスン氏はこのように強調した上で他の自動運転システムを「旧世代」と呼び、比較しながら技術を紹介した。

実際の車両においてはヘッドライトの性能よりも随所に設置された各種センサーが走行性能のカギを握る(Waabiのデモ動画より)

 一般的に自動運転トラックは、道路を走っている最中に学習することはできないが、Waabi Driverにはそれが可能だ。

 ますます競争が激化する自動運転トラック市場において、Waabiは優れたシミュレーションテストで競合他社との差別化を図ろうとしている。同社のバーチャルシミュレーションは「システムをさまざまな独自のシーンにさらすことで、それぞれの相互作用から技術を学習する」と、ウルタスン氏は説明する。

 自動運転システムはこのバーチャルシミュレーションの結果を基に自動で学習するため、(旧世代の自動運転システムのように)手動でコードを調整する必要はない(注2)。

2022年2月に「Waabi world」構想を発表した際に公開されたデモ映像。センサーデータを使ってほぼリアルタイムにデジタルツイン環境を構築。大量のシナリオシミュレーションを繰り返すことで自動運転の精度を高める仕組みだと説明されている。システムに対するストレステストの自動化なども組み込まれる(Waabiのデモ動画より)

 2022年2月に発表した「Waabi World」構想においては壮大なビジョンを示したが、現在発表されているWaabi Driverそのものは、工場の構内を走行するトラックへの搭載を想定したシステムだ。ウルタスン氏は、完全な自動運転システムが確立し、運転手なしで走行できるようになる時期については明言していない。

 競合他社が新たな技術の節目を迎える中、WaabiはWaabi Driverを発表した。ちょうど同時期に、Kodiak Roboticsはタイヤの破裂時にトラックの制御を維持する自動運転技術を発表するなど、自動運転トラック市場は盛り上がりを見せている(注3)。

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