Office、Azureに続いて3本目の矢はPower Platform 企業に選ばれるツールになるか

Microsoft Power Platformは企業のDXを推進するか。その特徴は。

» 2023年02月06日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

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 日本マイクロソフトは2023年1月26〜27日にわたり、オンラインイベント「Microsoft Base Festa 2023」を開催した。「ローコードソリューションがマストな理由とPower Platformの価値」という講演では、「Microsoft Power Platform」(以下、Power Platform)に関する最新情報に加え、ローコードツールに対する日本マイクロソフトの基本姿勢などを説明した。

Microsoftが絶対にシェアを伸ばしたいPower Platform 何ができる?

野村圭太氏

 DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したい企業はさまざまな課題に直面している――。講演の冒頭でこう話すのは、日本マイクロソフトの野村圭太氏(ビジネスアプリケーション本部 本部長)だ。

 具体的な課題として同氏は、「業務部門では予算や時間、リソースに制約がある。IT部門ではレガシーシステムの保守に時間を取られ、シャドーITの管理やセキュリティ、コンプライアンスの管理にも工数が取られている。これらを理由に、DXを推進できない現状がある」と指摘した。

 一方で、デジタル化の重要性は増しているのが現実だ。

 野村氏によれば、今後5年間に開発されるアプリは7億5000万個に達し、過去40年間に開発されたアプリの総数を超え、テクノロジーによって自動化する業務は50%に達する。

 「こうした変化に対応できた企業が競争力を増していくが、そこで課題なのが開発者不足だ」(野村氏)

 野村氏は、2025年までに全世界で400万人の開発者が不足し、日本でも43万人に上るとする。

 「Microsoftは企業方針に『Do more with less』(より少ない労力でより多くのことを成し遂げる)を掲げており、ユーザーにデジタル能力を高めてほしいと考えている。また、今後はローコードでイノベーションを加速していくべきだと考えており、その背景には、『現場で発生する課題は現場の人たちに解決してもらうことが大切』という考えがある。市民開発の促進で開発者不足を解消する」(野村氏)

図1 ローコード開発でイノベーションが加速(出典:日本マイクロソフト提供)

 「アプリケーションとポートフォリオの合理化」という観点でもローコードは重要だ。

 オンプレミスからクラウドへの移行ではインフラ変革だけでなく、アプリの変革が重要だ。野村氏は「アプリのモダナイズは、リプレースやリビルド、リファクタリングなどの手法があるが、レガシーアプリの75%はPower Platformによって迅速にモダナイズできる」と自信を見せる。

 野村氏は、組織の「効果的なローコード戦略」として3つのポイントをあげる。

 1つ目は、専門的な開発者のリソースをより高度で最もインパクトがあるところに集中させる「フォーカス」、2つ目は、現場のアイデアをイノベーションに取り込むために多くの市民開発者がローコードで開発する「インクルージョン」、3つ目は迅速に開発し、イノベーションを推進する「スピード」だ。

 「この3つを意識して、デジタル変革の幅と深みを拡大してほしい。この実現を支援するのが日本マイクロソフトの役割だ」(野村氏)

図2 効果的なローコード戦略(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 Power Platformは包括的な統合型ローコード開発ツールと位置付けられ、Webアプリやモバイルアプリを開発する「Microsoft Power Apps」、プロセスやワークフローの自動化を行う「Power Automate」、チャットbotや会話型エージェントである「Power Visual Agents」、データを活用してビジネス向けWebサイトを構築する「Power Pages」、データの探索や分析、レポート作成を行う「Power BI」の5つで構成される。

 これらが特徴的なのは、5つのツールが横断的に活用できる機能を持っている点だ。Microsoft製品以外にも750を超えるデータコネクターが用意されている。また、それぞれのツールのなかにAI(人工知能)を組み込むことが可能な「AI Builder」もある。

 データを格納する「Microsoft DataVerse」、コードを組み合わせて開発したい場合に利用できる「Power Fx」も提供している。

 「ローコードツールはエンドトゥエンドでつながっている世界を作らないと効果が最大化できない。ローコードで開発したアプリで業務をデジタル化し、蓄積したデータを生かして次のアクションにつなげることが大切だ。一つの画面でデータをリアルタイムに分析し、それを基に作業指示を出すことができれば組織のビジネスは加速するはずだ。Power Platformならこのような環境を開発できる」(野村氏)

図3 Microsoft Power Platformの概要まとめ(出典:日本マイクロソフト)

 実際に日本でもPower Platformを活用が加速している。

 トヨタ自動車では2年間で7600人の市民開発者を育成した。花王では国内10工場で260以上のアプリを現場従業員が開発した。

 実際に日本でもPower Platformを活用が加速しており、業界や業種、企業規模を問わず多くの企業が利用している。

図4 Microsoft Power Platformの代表的な国内ユーザー(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 日本マイクロソフトはローコード導入支援のための体制構築にも注力している。

 Microsoftのサービスのためのトレーニングを提供する「App in a Day」や「Power Platform Virtual Training Days」などを通じて、過去1年間で2万人以上に無料トレーニングを実施した。

 また、1カ月間でPower Platformの基礎から応用までを学べる「Power Platform Onboarding Center」の実施や学習コンテンツの提供、トレーニング情報サイトの開設、「ITよろず相談センター」でのサポートといった支援も行っている。

図5 導入を支援するパートナーエコシステム(出典:日本マイクロソフト提供)

 日本マイクロソフトは、Power Platformコミュニティーを拡大して利用を促進することで、国内のIT市場における存在感を高められると考えている。

 オフィスなどで使われる「Microsoft Office」、情報システム部門で活用される「Microsoft Azure」、ここに3本目の矢として、Power Platformが加わることで、日本マイクロソフトの事業基盤が強固になり、国内クラウドベンダーナンバーワンに向けて有効な布石を打てる。

 Power Platformの普及戦略は、日本マイクロソフトの国内事業の拡大において極めて重要な意味を持つようだ。

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