“攻めのDX”の実現のために Microsoft製ビジネスアプリケーション(ERP)が果たす役割DX 365 Life(2)(1/3 ページ)

守りのDXから攻めのDXに変わるために、ERPの役割が大きくなっている。Microsoftのビジネスアプリケーションである「Dynamics 365」のERPはどのように企業をサポートするのか。

» 2023年01月25日 08時00分 公開
[吉島良平ITmedia]

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行以降、市場の変動が通常のビジネスを”非日常的”なものに変えました。企業の意思決定や事業運営は過去に類を見ないスピードで行われ、その結果としてこれから起こるビジネスモデルの変化は、過去数十年にわたる変化を凌駕したものになるでしょう。これまでの規範やルールが通用しない上に、加速度が増す変化に対して、スピーディーかつ柔軟な意思決定無くして企業は生き残れません。

 では「スピーディーかつ柔軟な意思決定」をするために、企業はどのように取り組むべきなのでしょうか。そのカギがMicrosoftのビジネスアプリケーションの中にあるかもしれません。

 DX 365 Lifeの第2回となる本稿は、Microsoftのビジネスアプリケーションである「Dynamics 365」のERP(基幹統合業務パッケージ)を紹介します。(MicrosoftはERPという表現を使用していません)

この連載について

 本連載は12回にわたって、Microsoftのビジネスアプリケーションに関する情報を発信し、製品やサービス、学習ツールだけでなく、導入ベンダーやその事例、コミュニティーの活動にも触れていきます。

筆者紹介吉島良平(Chief Operating Officer)

約20年にわたって日本を含む31か国でMicrosoft社製ビジネスアプリケーションの導入・開発・コンサルティングに従事。2022年11月よりシンガポール企業『Technosoft (SEA) Pte. Ltd.』のCOOに着任。

Microsoft Regional Director

Microsoft MVP for Business Applications

Blog: DX 365 Life - マイクロソフトのBizAppsを活用し、企業のDX実現に向けて国内外を奔走する室長Blog



“バラバラ殺データ事件”に遭遇していることに気付かない恐怖

 スピーディーな企業経営を行うためには「管理会計のデジタルツイン」が不可欠ですが、日本にはまだ「経営者がIT投資を怠たり、現場の従業員に手作業でデータ集計をさせている」企業が多くあるようです。その結果として、月次決算などが遅延して必要なデータがタイムリーに取れずにストレスを感じている経営者も多いようです。このような経営者の中には、第1回で解説した“バラバラ殺データ事件”に遭遇していないふりをしている方もいるでしょう。

 上記のような現場を多く見てきた経験から、この事件は深刻だと筆者は考えます。放置すると従業員が疲弊して退職することに加え、現場が特に頑張った時に限って集計にミスが起きたりします。皆さんにもこのような経験があるかもしれません。

図1 バラバラ殺データ事件多発エリア―要パトロール(出典:2022年開催Buri Kaigの筆者作成登壇資料)

 このような状況が発生する要因はさまざまですが、総じて「個別最適なソリューションによるデジタル化」と「既存システムのメンテナンスへの継続的な投資」に問題があります。

"バラバラ殺データ事件”に遭遇しないために

 バラバラ殺データ事件に遭遇しないためには、部門別で業務システムを選定する場合にも全社で調査・判断することが大切です。「自分たちの業務は特別だ」と過信せず、全社の業務をなるべくカバーするソリューションを採用するのです。

 特に、販売管理や会計、製造、購買がバラバラになっている場合は、ERPの導入も検討し、その際は「分かりやすくて使いやすい」や「業務の変化に柔軟に対応できる」仕組みを持つソリューションの採用が重要です。「操作性」や「柔軟性」「拡張性」が採用のキーワードであり、スピーディーで精度の高いデータ登録や時代に合った働き方、ビジネスの変化への対応といった効果を出すことができます。

 ここから日本企業でよく聞かれる声を取り上げ、“バラバラ殺データ事件”を回避するための方法を一緒に考えてみましょう。

そうは言っても、”そのまま使える業務の仕組み"なんてない

 おっしゃる通りです。業務とシステムの間にはどうしてもギャップがあり、それを埋めるためにはローコードソリューションが必要です。業務システムとネイティブに連携するローコードを活用すれば内製化できます。

そうは言っても、IT人材がいない

 こちらもおっしゃる通りです。今後、IT人材確保がより困難になることが経済産業省の「IT人材育成の状況等について」という資料からも分かります(注1)。採用コストも上がっていくでしょう。

図2 IT人材需要の変化(出典:経済産業省の資料「IT人材育成の状況等について」)

 企業の経営者や企画部門、人事部門には、「従業員のIT人材化」や「ITのリスキリング」「女性にとって働きやすい職場への改善」への取り組みが求められています。プロジェクトの遂行と同じで、ヒトは評価されないと動きません。この「ヒトの評価」を行う人事や上司の責任は大きくなっており、この点が曖昧だと結果として「頑張らない方が良い」という風潮につながり、企業は淘汰されていきます。

 これらの課題に対応するITインフラとして、可能性を持つのが「Microsoftテクノロジー」の活用です。

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