“攻めのDX”の実現のために Microsoft製ビジネスアプリケーション(ERP)が果たす役割DX 365 Life(2)(3/3 ページ)

» 2023年01月25日 08時00分 公開
[吉島良平ITmedia]
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中堅・中小企業のための「Dynamics 365 Business Central」

 中堅・中小企業が利用するERP「Business Central」(BC)では、102カ国のローカライゼーションと47言語の翻訳を利用できます。Finance and SCMも、Finance and Operations時代の呼称である「FO」と呼ばれることがありますが、BCとFOは何が違うのでしょうか。

図11 FOとBCの比較(出典:筆者作成の図)

 Microsoft AppSource(以下、AppSource)でそれぞれを検索すると、Pacific Business Consultingが日本の商習慣機能を開発しています。

図12 Microsoft AppSourceの画面(出典:Microsoft AppSource)

 ライセンス料金は為替価格で変動しますが、常にDynamics 365のWebサイトで確認できます。また、詳細を理解したい方にはライセンスガイドもあります。ライセンスガイドにもBC機能の記載がありますが、筆者の理解は以下の図13のようになります。

図13 Dynamics 365 Business Centralの機能概要(出典:筆者作成の図)

 BCにはFOが持つ資産管理や経費精算のモジュールはありません。一方で、BCの役割別のトップ画面やあらゆる数字をドリルダウンして原始伝票にさかのぼれる柔軟なUI構成などは日本人向きです。

 AppSourceでBCのアドオン機能を検索すると、3000以上のソリューションを確認できます。また、BCを学びたいMicrosoftパートナーは「Directions Asia 2023」への参加でより多くの情報を得られるかもしれません。

 以前は「BCやGP、SLはSMB向け(Small and Medium Business:中堅・中小企業)」というグルーピングや「約250ユーザーまでが対象」といった記載がありましが、BCはクラウド基盤(Microsoft Azure)のSaaSとして提供されるため、自動スケールの結果、日本では400ほどのユーザー稼働事例があるようです。

図14 Dynamics 365 Business Centralの位置付け(出典:Microsoftの資料に筆者加筆)

 BCのトップはマイク・モートン氏が務めており、同氏は「SharePoint」の初代の開発を手掛けた経験を持ちます。BCのR&D(Research & Development)チームは、「Microsoft Office」(以下、Office)とのコラボレーションにも注力しており、SMBのOffice製品ユーザーには良い選択となります。

図15 FOとBC(出典:筆者作成の図)

 ERP選定において、「アプリ側に視点が寄りすぎる」ことはよくある課題です。アプリケーションのライフサイクル管理を行う上では、「GitHub」や「Visual Studio」「Visual Studio Code」などを活用した「Azure DevOps」との継続的な統合管理に加え、「Docker」などのコンテナ管理ツールの活用やビルドプロセスの自動化、「CI/CD-Azure Pipelines」や「Azure Bords」を用いたプロジェクト管理など、「開発領域に生産性向上のためのツールが備わっているかどうか」を”開発視点”で検討しましょう。

 「FOかBCか」はよくある議論ですが、まずは商習慣対応機能が用意されているかどうかを確認することが大切です。そうすれば、国が違っても導入や保守をサポートしてくれる現地のパートナーを見つけられます。

 また、筆者はMicrosoftが提供する標準機能の機能数やパフォーマンスはFOが勝っていると考えますが、AppSourceで提供されるソリューション(2022年12月末時点で3200超)を含むとどれほどの差になるかは分かりません。

ERP導入前に気を付けるべきことは

 ERPの導入前には「BPR」(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の実施も欠かせません。導入にかかる人数は、ベンダー側がBCであれば1〜3人体制で、FOであれば3〜5人程(開発を含まず)となり、BCにコストメリットがあります。もちろん、プロジェクトの規模にもよりますが、例えば、100名ほどの製造工場への導入において会計や固定資産、販売、購買、在庫、倉庫、製造のモジュールを導入するならば、ベンダー側がBCの場合は3名、FOであれば6名程になるでしょう。

 同様に、導入するユーザー側のIT担当者も、BCとFOではそれぞれ1〜3人、3〜5人くらいの体制になるので、導入する際に「どのような体制を作れるか」を考えておきましょう。

 ベンダー選定は非常に重要です。システムと業務のギャップをローコードソリューションで埋めて内製化し、IT部門以外の従業員のIT人材化を図ることがDX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩であり、真の働き方改革には「最高の仕事ができる環境の構築」と「従業員が最高のパフォーマンスを出すための企業文化」の創造が欠かせません。

 そのためには、ファイナンスやオペレーション業務を担う基幹システムのモダナイゼーションを実現する必要があります。ここに危機感を持つ経営者にとって、Dynamics 365のERP製品は、“攻めのDX”のための“守りのDX”という観点において大きな役割を果たすかもしれません。

 「適応の迅速化」や「作業効率化」「パフォーマンス向上」などに必要なインサイトを得ていくことも大切です。これらを踏まえて、次回はDynamics 365のCRM領域について解説します。

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