“攻めのDX”の実現のために Microsoft製ビジネスアプリケーション(ERP)が果たす役割DX 365 Life(2)(2/3 ページ)

» 2023年01月25日 08時00分 公開
[吉島良平ITmedia]

チーム内コラボレーションの実現のために

 “働き方”で大切なのは、「他のチームメンバーと場所やデバイスを選ばずにリアルタイムで共同作業ができる」ことです。容易なコラボレーションを実現する最新のERPを、以下の図3が解説しています。

図3 ERP紹介(出典:Microsoftセミナー資料より抜粋)

 MicrosoftのERPは買収から始まりました。

 2000年に北米でGreat PlainsとSolomonを、2002年にはデンマークのNavisionをM&Aで獲得しました。2000年にNavisionがDamgaard Data A/S(Axaptaを保有)を買収していたので、これら全ての製品がMicrosoftのソリューションになりました。この時、現在もデンマークを中心に稼働しているDamgaardが開発した「C5」という3tierソリューション(会計パッケージ)も手にいれました。その他「RMS」 (Retail Management System)、「Point of Sale」「Snap」などの製品もあります。

図4 Dynamics 365の経緯まとめ(出典:筆者作成の図)

 買収された新たなサービスはまず「Microsoft Business Solutions」に入り、その後に「Microsoft Dynamics」に統合されました。当時のMicrosoft Business Solutionのリーダーが、Microsoftの現会長兼CEO(最高経営責任者)であるサティア・ナデラ氏です。第3回に解説する予定のMicrosoftのCRM製品は独自開発であり、Ver1.0がNavision社買収後の2003年にリリースされました。買収劇の経緯や、今後の戦略を語るサティア・ナデラ氏の懐かしい映像が残っています。

 その後、これらのサービスは「Dynamics 365」というSaaSアプリケーションに進化し、現在は「MR」(複合現実)や「AI」(人工知能)機能を含む20種類ほどのアプリケーション群で構成されるビジネスアプリケーションスイート製品として販売されています。

 「Dynamics C5」は新規販売を中止、「Dynamics GP」と「Dynamics SL」はDynamics 365へのマイグレーションパスがなく、サービス終了となる2025年の年度末までに「Dynamics 365 Business Central」(中堅・中小企業向けERP製品)への移管が推奨されています。

 柔軟性や拡張性、操作性に長(た)けていないと内製化は難しく、ITベンダーに依存する結果になりがちです。Dynamics 365は、ユーザーの内製化を推進します。

図5 ワンランク上のメリットを(出典:Microsoftイベント資料に筆者加筆)

MicrosoftのERP「Dynamics 365 Finance and SCM」

 CFO(最高財務責任者)や金融組織のマネジャーにとって、財務状態を基に将来を予測することは資金管理の面でも非常に大切です。そのためには多言語、多通貨への対応に加え、管理連結データの収集などが欠かせません。また、継続的なコンプライアンス対応や変化する国内外の法規制などについても管理責任があります。財務データについては株主への説明責任があり、全ての役割をこなすにはチャートや企業のKPIを日々監視する必要があります。

図6 Dynamics 365 Finance and SCMのレポート機能(出典:Microsoftのイベント資料)

 これらに対応するため、Microsoftは「Dynamics 365 Finance and SCM」を提供しています。「視認性」に優れた同サービスは役割ベースのビューと機能を持ち、44カ国のローカライゼーションと52言語の翻訳を提供します。

 市場ニーズの変動や欠品、価格の高騰などの課題は、需要予測や在庫補充を更に困難にしており、サプライチェーンを近代化しなければ機器の故障や部材供給の遅延につながります。

図7 Dynamics 365 Intelligent Order Managementの操作画面(出典:Microsoftのイベント資料)

 「持続可能なオペレーション」の実現には、リアクティブからプロアクティブ(事前対応)へのシフトが必要です。このためには、納期情報や製造状況などのデータを統合する必要があり、先日ナデラ氏が日本で発表した「Microsoft Supply Chain Plaform」にはそれを実現する意図があります。

図8 Microsoft Supply Chain Plaformの概要(出典:MicrosoftのWebページ)

 サプライチェーンを近代化するためには、既存のアプリケーションを全て置き換えるのではなく、「コンポーザルなソリューション」にするのが理想的です。これは、一枚岩(モノリシック)なシステムをコンポーネントとして分割し、安全かつ迅速で効率的なシステム見直しを可能にするアーキテクチャです。Dynamics 365 SCMの資産管理モジュールの活用などがこれに該当します。

図9 資産管理モジュール(出典:Microsoft資料『独自の方法でコンポーザブルなソリューション』に筆者加筆)

 これらのサービスは、短時間で既存のシステムと連携するアプリの実装や活用を実現します。ユーザーは生産性を向上させ、新たなビジネスモデルにも迅速に対応できます。これが、MicrosoftのERPで”守りのDX”から”攻めのDX”へシフトする方法の一つです。

 ソリューションとして利用できるパーツを「Microsoft AppSource」から探すことができます。ここで「FinanceとSCMのアドオン機能」を検索すると、500以上のソリューションを確認できます。

図10 Microsoft AppSourceでの検索結果画面(出典:Microsoft AppSourceのWebページ)

 DynamicsのFinanceやSCMと合わせて利用できる「Microsoft Power BI」のソリューション群も検索できます。

 「SAPには投資できないが、機能が充実した基幹システムが欲しい」という企業にはFinance and SCMが合っているかもしれません。

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