ノークリサーチは、中堅・中小企業向けERP市場の分析結果を発表した。ERP導入済み企業の4分の1が乗り換えを検討しており、新規導入意向の企業においても特定の機能に期待する声が挙がっていることが分かった。
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ノークリサーチは2023年2月20日、年商500億円未満の中堅・中小企業向けERP市場の分析結果を発表した。それによると、ERP導入済み企業の4分の1が乗り換えを検討しており、乗り換える予定がない企業においても利用上の課題を抱えていることが明らかになった。新規でERP導入を検討する企業においてはこれらとは別の期待があることも分かった。
ノークリサーチが1300社の中堅・中小企業を対象に実施した調査によると、ERPを導入済み企業の割合は34.5%だった。そのうち4分の1(全体の8.5%)が「今後異なるベンダーの製品やサービスに変更する予定だ」と回答した。
これに対してERPをまだ導入していない企業のうち、新規導入予定だと回答した割合は全体の11.2%だった。
ERPを導入済みの企業に絞って、ERPを活用する際に直面した課題を、「今後も同じベンダーの製品/サービスを利用するとした企業」(「導入済み:継続」)と、「今後異なるベンダーの製品やサービスに変更する予定だとした企業」(「導入済み:変更」)に分けて比較すると、「海外展開に必要な機能が不足している」や「プログラミングしないとデータ連携を実現できない」「スマートデバイスに適した画面が備わっていない」の3項目において、「導入済み:継続」よりも「導入済み:変更」の方が高い傾向が見られた。
このことからノークリサーチでは、ERP本体よりも周辺機能の強化が求められていると分析している。
同じERP活用の課題において「プログラミングしないと項目や画面を作成できない」と「自社の業務をERPの仕様に合わせることができない」の項目については「導入済み:変更」よりも「導入済み:継続」の方が割合が高くなった。
このことからノークリサーチでは、既存顧客の継続を狙うITベンダーはERP本体の個別要件への対応力が重視されていると指摘した。
一方、ERPが今後備えるべきと考える機能や特徴について、同様に「導入済み:変更」の企業と、ERPをまだ導入していないが新規に導入する予定だと回答した企業(「未導入:新規予定」)のグループに分けて比べると、「導入済み:変更」よりも「未導入:新規予定」の方が回答割合が高かったのは、「複数モジュール間のデータ連携が容易である」や「プログラミングをせずにデータ連携を実現できる」「クラウドサービスの組み合わせでERPを構築できる」「複数システムを連結して処理を自動化できる」などだった。
これに対して「業種別/業態別のラインアップが豊富である」や「部門を横断した業務計画を作成/管理できる」「人材活用を重視したプロジェクト管理ができる」などは、「導入済み:変更」と「未導入:新規予定」の差が比較的小さい。つまり、新規導入を提案する際には、強い差別化要因とはなりにくい項目であると考えられる。
ノークリサーチは今回の調査結果から、これからERPを導入しようとする企業は自社の業種/業態への適合度や人材活用に向けた効果よりも複数のシステムを連携してERPを構築できることを重視していると結論付けた。ただし、複数のベンダーのシステムを組み合わせてERPを構築することは容易ではないとしており、多様なシステム連携の中心を担うERP製品/サービスの訴求が現実的だとしている。
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