Microsoftの「損して得を取る」戦略の行方は? 大口顧客に節約ムードCIO Dive

8年ぶりの低成長率となったMicrosoft。景気減速を受けて顧客企業に節約ムードが広まる中、同社は「損して得を取る」戦略をとるようだ。順調な成長が続く“虎の子”のクラウドでMicrosoftがとる戦略は吉と出るか、それとも…。

» 2023年02月21日 14時30分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 大手テック企業のMicrosoftは2023年第2四半期に前年同期比2%の成長、2022年12月31日までの3カ月間の売上高は527億ドルとなった(注1)。8年ぶりの低成長率となった同社にとって、クラウド事業の業績は明るい話題だ。

顧客企業の“節約”にMicrosoftが協力する理由

 Microsoftのクラウド部門の売り上げは前年同期比22%増の271億ドルとなり、PC部門における19%の減収を相殺した。

 Microsoftのサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)は、2023年1月24日に開催された決算説明会で、「マクロ経済の不確実性を受けて、企業は慎重になっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックの中、顧客のデジタル投資は増加した。現在、顧客企業はデジタルへの投資額を最適化しようとしている」と述べた(注2)。

 Microsoftのクラウド部門の成長が鈍化しているのは、経済的な事情によって企業がこれまでの投資戦略から転換せざるを得なくなったためだ。ビジネスの優先順位が変化する中で、モダナイゼーションを遂げた企業は事業統合に注力している。ナデラ氏によると、この再編成がクラウドの収益の伸びを一時的に低下させる要因となっている。

 ナデラ氏は「(当社の)大口顧客は現在のワークロードを最適化して、節約した資金の一部を新しいプロジェクトに回そうとしている」と指摘する。

 インフレと景気後退への懸念から、企業は予算に対して慎重な姿勢を取るようになった。CIO(最高情報責任者)がITベンダーとの契約の見直したり(注3)、ソフトウェア支出を精査したりクラウド投資を最適化したりする必要に迫られている(注4)。

 Microsoftは2022年、「顧客のクラウドコストの管理を支援する」と約束した(注5)。同年7月には、クラウドサーバのコンポーネントの耐用年数を4年から6年に延長することで支出を削減し、その“節約分”を顧客に還元しようとしている(注6)。

 「Microsoftにとって今は重要な時期だ。顧客と協力して、顧客が技術への投資を通じてより多くの価値を得られるよう支援し、長期的なロイヤルティーとシェアを獲得する。一方で、当社のコスト構造を収益の伸びと一致させる」(ナデラ氏)

 Microsoftの2023年第2四半期のサーバおよびクラウドサービスの売上高は20%増加したが、成長率は前年同期比で9ポイント低下した。「Microsoft Azure」およびその他のクラウドサービスの売上成長率は31%で、こちらも前年同期比15ポイント減少した(注7)。

 Microsoftのエイミー・フードCFO(最高財務責任者)は決算説明会で、「収益の伸びの失速は今後数カ月で逆転せず、横ばいになる見込みだ」と述べた。

 調査会社のSynergy Research Groupによると、大手テック企業のうち最も早く今期の業績を報告したMicrosoftは、市場シェア21%で第2位のハイパースケーラーだ。クラウドプロバイダーの大手3社(AWS、Google Cloud、Microsoft Azure)は、米国市場の4分の3強を占める(注8)。

 2023年1月23日に発表されたSynergy Research Groupの報告によると、2022年のパブリッククラウドインフラへの世界の支出は、減速する景気とは逆に、前年比21%増の5440億ドルに達した(注9)。調査会社のGartnerは「(世界のクラウドインフラへの支出額は)2023年は5900億ドルを超える。Microsoftのクラウドビジネスとほぼ同じ割合(20%)で成長する」と予想している(注10)。

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