AWSが「AWS Telco Network Builder」の一般提供を開始 通信業者の課題解決につながるか

「AWS Telco Network Builder」は通信業界の変革を実現するのか。その機能と提供スケジュールは。

» 2023年02月28日 08時34分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 Amazon Web Services(以下、AWS)は2022年2月22日(現地時間)、通信ネットワークをAWS上でデプロイ、運用、拡張するユーザーを支援するフルマネージドサービス「AWS Telco Network Builder」の一般提供を開始したと発表した。

 通信サービスプロバイダーがネットワークの詳細(接続ポイントやネットワーキング要件、コンピューティング需要、地理的分布など)を「サービステンプレート」にインプットすると、AWS Telco Network Builderはそれをクラウドベースのネットワークアーキテクチャに変換し、必要なAWSインフラストラクチャをプロビジョニングする。AWSによれば、これによってクラウドで運用可能な通信ネットワークのデプロイにかかる時間を数日から数時間に短縮できる。

通信業界は変革のさなか その中で抱える課題と解決方法は

 AWSによると、通信サービスプロバイダーはスマートシティーや自動運転車、ロボティクスなどの先進的ユースケースに対応した最新の通信ネットワーク構築にクラウドのパフォーマンスや弾力性、拡張性を生かしたいと考えている。一方、通信ネットワークをクラウドで設計したり拡張したりするには、ビジネスサポートシステム(BSS)やモバイルコア、無線ネットワークなど反復的かつ多岐にわたるネットワークのワークロードを実装する必要があるため、工数がかかる作業だった。

 AWS Telco Network Builderは、サービスコンソールに自社のネットワークアーキテクチャをテンプレートとして入力しておき、コンソールから直感的に操作すれば済む。また、指定されたネットワークトポロジーを自動的にネットワークサービスにマッピングし、必要なリソースをプロビジョニングして通信ネットワークを構築する。ユーザーがネットワークアーキテクチャを別のリージョンに複製するときは、最初にアップロードしたテンプレートを再利用できる。ネットワークの構成変更やアップデートといったネットワークのライフサイクル管理や更新、インフラストラクチャ調整もAWS Telco Network Builderが自動的に実行する。

 Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)でバイスプレジデントを務めるヤン・ホフマイヤー氏は「通信サービスプロバイダーがクラウドで通信ネットワークを構築し始めているように、通信業界は変革のさなかです。移行に際して通信サービスプロバイダーが抱える最大の課題には複雑なネットワークの手動構成や管理する煩雑さがあります。これは成長を妨げイノベーションを抑制しかねません。通信業界に画期的な価値を提供するAWS Telco Network Builderはユーザーが通信ネットワークをクラウド・アーキテクチャに変換する負担を取り除きます。ユーザーは簡単にネットワークをモダン化し、需要に応じて迅速に拡張できます。これにより余った時間と資金を新規サービスの構築や通信カバレッジの拡大、創造に生かせます」とコメントしている。

 AWS Telco Network Builderは米国東部(バージニア北部)、米国西部(オレゴン)、アジア太平洋(シドニー)、欧州(フランクフルト)、欧州(パリ)リージョンで2023年2月22日より一般提供を開始し、近日中に他のAWSリージョンでも提供を開始する予定だ。

 AWS Telco Network Builderは初期費用なしで利用でき、ユーザーの支払いはネットワークの管理に使用するAWSサービスの費用のみとなる。

 通信事業者の運用コストが下がれば低価格で通信サービスを利用でき、ひいては通信を使った各産業向けサービスの提供が容易になると期待される。

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