ローコードが生み出すのは"ごみアプリ"か? それとも"イノベーション"か? Microsoftのローコード(Power Platform編)DX 365 Life(4)(2/3 ページ)

» 2023年03月17日 08時00分 公開
[吉島良平ITmedia]

内製化を推進する企業ではIT部門のタスクに変化が起きている

 Power Platformにはアプリケーションを開発するツールとして「Microsoft Power Apps」(Power Apps)、自動化ツールとして「Power Automate」、インテリジェントな対話型botの開発ができる「Microsoft Power Virtual Agent」、セキュアなWebページを構築・デザインできる「Microsoft Power Pages」(Power Pages)があります。GartnerはローコードアプリケーションプラットフォームのリーダーとしてPower AppsやPower Automateなどを評価しています。

図9 (出典:Gartner資料)

 Power PlatformやPower BIの評価がこれだけ高ければ、そこにネイティブに連携するDynamics 365(CRM/ERP)を企業の基幹システムの選択肢として考えるのは当然の流れだと感じます。デジタル需要の急増に応えるため、ローコード製品が世に出てから数年が経過しました。内製化を商機とみる世界の先進国では、IT部門や開発者、業務部門の役割が変化しています。皆さんの組織ではいかがでしょうか?

図10 (出典:筆者資料)

 現実問題として、今後5年間に世界で作成されるアプリの数は7.5億、非構造化データ(アンストラクチャーな状況)に悩む組織は約85%、現在の技術で自動化できる業務は約50%といわれます。そんな中、日本ではいまだパッケージをカスタマイズ開発し、ローコード製品の活用が進んでいない企業が多いようです。

”ITを内製化できない企業はビジネスのスピードについていけなくなる”

 「実業務と情報系・業務系システム(CRM/ERP)とのギャップはローコードで内製化すべし」

 このフレーズをこの5年間で何度も口にしてきました。なぜかは言わずもがなですが、カスタマイズすると保守料金も上がりユーザー側はベンダーロックインになりがちです。ベンダー側も標準と逸脱する部分の保守に対する品質を高く保てるところは多くないと耳にします。業務要件は業務を知るキーユーザーが出せるわけですが、キーユーザーが市民開発者に変革すれば、プロの開発側でも仕様に基づきプログラムを実装や単体テストをしてキーユーザーに機能テストを要求するだけで済みます。これを外部へ委託するとどうなりますか?説明する必要はないでしょう。

 「いや、そのキーユーザーが出す要望が危ない」という意見もあるでしょう。この意見については「はい。おっしゃる通りです。開発要望のリストをチームで管理し優先順位を付け、更に仕様もレビューが必要になるのは事実です。それでも多くの工数が削減されているはずです」とさせていただきます。

 世界レベルでは2025年までに400万人の開発者が不足する状況になるようです。日本においても2021〜2022年の1年間でDXを推進する人材の「量」「質」ともに大幅に不足しています。

図11 (出典:IT人材白書2023)

図12 (出典:IT人材白書2023)

 このままいけば状況は悪化する一方です。では、どのように対応するべきなのでしょうか?

図13 (出典:Microsoftセミナー資料を基に筆者作成)

 市民開発者の育成には、セキュリティを担保した拡張性のあるローコードデータプラットフォームを活用してデータやプロセスのサイロ化を解消し、全ての開発者が俊敏性の高いビジネスソリューションを構築できる環境を用意することが欠かせません。これは「待ったなし」の状況で、取り組み次第では3年後の企業価値に大きな差が生まれるでしょう。

“Power Platformは、Office製品ユーザーのファーストチョイス”

図14 (出典:Microsoftセミナー資料)

 Microsoft 365の製品を日々利用する企業がDXを実現するには、Power Platformの活用が最短の道です。幅広く拡張可能なローコード開発ツールを安全な環境で提供し、自動化やカスタムアプリによってカスタマーエクスペリエンスの向上や従業員の業務パフォーマンスを最大化します。貴重なデータを正確に取得することを目標に取り組むのが大切です。

 組織は常に業務を効率化するヒントを探しています。例えば従業員が毎日何時間もかけて反復的な作業を手動で行っている場合、手作業のプロセスをデジタル化して維持しようとするとプロの開発者の力が必要で費用もかさみます。Power Platformを活用すれば企業固有のソリューションを直観的に構築して、現場担当者の課題を解決できるケースも存在します。具体的には下記のようなアクションが現場の業務担当者に即効性があります。

図15 (出典:Microsoftの資料を基に筆者作成)

 マニュアルプロセスのデジタル化では、まずアプリやワークフローなどの組み込みテンプレートを活用し、必要に応じてローコードの開発インタフェースで固有のカスタマイズを行います。Dynamics 365や「Microsoft Azure」との連携、800種類以上のコネクターの活用でアプリ開発コストを大きく削減できるはずです。反復プロセスを自動化すれば、現場担当者がより付加価値の高い活動に集中できます。

 現場担当者がアプリを利用するプラットフォームに既存のCRMやERPをセキュアに連携させられれば、従業員がいつ・どこにいてもタスクの実行状況をリアルタイムで追跡できます。また、モバイル端末でスケジュールを管理でき従業員の出退勤記録も容易です。

 このようにスムーズに情報を伝えられる仕組みを作れば、シフト交代時に仕事に支障が出ることを防げます。また、AIベースのセルフサービス分析を使用すれば現場のデータから重要なインサイトを得られます。このように、アンストラクチャーな状況で戦うフロントワーカーにとって、"並走してくれる仲間"(ITやチームメイト)がいることは重要です。

図16 (出典:筆者のDirections Asia登壇資料より抜粋)

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