イーロン・マスクがTwitterロゴをDogecoinの柴犬に変更して価格上昇 市場操作について弁護士の見解は?編集部コラム

暗号資産「Dogecoin」の大ファンで知られるイーロン・マスク氏。同氏はTwitter内のロゴをDogecoinのシンボルである柴犬に変更し、その後大幅な価格上昇が確認された。これは価格操作にあたるのか。

» 2023年04月08日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 暗号資産の一つである「Dogecoin」は2023年4月3日、約0.077ドルから0.1046ドル付近まで35%以上の価格上昇をみせた。イーロン・マスク氏が買収した「Twitter」が同社のロゴである「青い鳥」をDogecoinのシンボルである柴犬「かぼす」に変更したことを受けてとみられる。

 Dogecoinはもともと「ジョーク」で作られたもので、決済や寄付、投げ銭などに使われてきた。マスク氏は以前よりDogecoinの熱狂的支持者として有名で、今回のロゴ変更についてもTwitter上でのユーザーとの会話が基になっている。以下は「Twitterを買収してロゴをDoge(柴犬のこと)に変えてくれ」というTwitterユーザーの発言に「それ最高だね」と応じるマスク氏の会話だ。

ロゴ変更で価格上昇 市場操作の可能性は?

 そもそもマスク氏は2022年6月、Dogicoinを購入している投資家のキース・ジョンソン氏を中心とする複数の投資家らに「Dogecoinを誇大に宣伝して利益を得た」と約34兆円の支払いを求める訴訟を起こされていた。マスク氏のツイートがDogecoin価格に大きな影響を与えていたことは明確で、実際に2021年2月のDogecoinに関するマスク氏のツイートの翌日に取引価格は前日比60%高を記録した。

 マスク氏は弁護団からの訴訟を受けて、自身のTwitterアカウントで「(価格の)高いも低いもない。Dogeだけがある」というツイートを公開していた。「Bitcoin」をはじめとする暗号資産はこれまでも「価格操作が行われているのでは」という指摘や、「クジラ」と呼ばれる特定の暗号資産大口保有者が価格の下降トレンドで暗号資産の買い増しなどをして価格の下支えをしているのではと指摘を受けてきた。

 価格操作という指摘が度々される暗号資産だが、今回のマスク氏によるTwitterのロゴ変更によるDogecoinの価格上昇を、専門家はどのように見ているのだろうか。

 金融商品取引事件に関して実績がある富士桜法律事務所の堀内 岳弁護士は、『ITmedia エンタープライズ』のメール取材で本件について、「(少なくとも日本の法律においては)相場操縦には該当しない」との見解を示した。以下はその根拠だ。

 2019年の金融商品取引法(金商法)の改正を受け、暗号資産の相場操縦行為は禁止されている。違反した場合は刑事罰もあり得るわけだが、金商法は仮装売買や馴合売買、虚偽表示など、相場操縦に該当する行為を類型化して具体的に規定している。

 今回のマスク氏がTwitter上でロゴをDogecoinのシンボルである柴犬に変更した行為については、金商法の適用があると仮定して考えたとしても偽装取引や虚偽表示もなく、単にロゴを変更しただけであることから、金商法が禁止する相場操縦行為には該当しない。

 Dogecoinでたびたび話題になるマスク氏。本稿公開時点では既に鳥のロゴに戻っているようだが、急なロゴ変更などにTwitterユーザーからは戸惑いの声も聞かれる。黒柴を飼っている筆者としては柴犬へのロゴ変更はうれしい変化だが、ボラティリティーの大きな暗号資産相場にはうんざりだ。

筆者の愛犬、ムギ(本犬の掲載許可済み)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ