Appleが経済圏を拡大 “4.15%”の金利で銀行を食うか編集部コラム

超低金利時代にAppleが「銀行殺し」なサービスを発表した。

» 2023年04月22日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 昨今、銀行における定期預金の金利は極めて低い。メガバンクと呼ばれる銀行でも0.002%程度で、仮に100万円を預金して得られる利息は20円程度だ。金利が高いとされるネット銀行でも0.2〜0.3%程度で、米国の銀行においても預金利子の平均は0.37%程度だ。その米国で、Appleが2023年4月17日(現地時間)に衝撃のサービスを開始した。それが年利4.15%の普通預金口座を「Apple Card」ユーザーに提供するというものだ。

預金者離れを阻止したい銀行 vs. 魅力的すぎるAppleのサービス

 Silicon Valley Bank(SVB)が2023年3月10日(現地時間)に経営破綻してから銀行各行は預金者離れを防ごうと必死だ。SVBの経営破綻前から米連邦準備制度理事会(FRB)による2022年3月からの4.75%もの利上げを受け、預金者は利回りの高い商品を探していた。そこにSVBの破綻、そしてAppleの4.15%の利回りを誇るサービスが登場した。

 Appleにネームバリューがあることはもちろん、口座管理はGoldman Sachsが担うということもあり、預金を考える人々からは比較的信頼できるサービスとして認識される可能性が高い。現時点の発表では手数料や最低預金額といった条件はなく、預入金額の上限が25万ドルと決まっているだけだ。

 4.15%という利回りが高いと感じるか低いと感じるかは個人差があるが、筆者は「下手に投資するくらいならこの口座に資金を入れておくのが楽だし確実」だと思う。「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏の平均利回り20%のようなものを除けば、基本的に投資の利回りの平均は3〜7%程度だからだ(マイナスになる可能性もある)。

 米国と比較するとまだまだ投資にネガティブな印象を持つ人が多い日本で(少しずつ変わってきているようだが)、もしこのサービスが利用できるようになったら爆発的な人気となるだろう。

 本格的にバンキングビジネスに進出してきたApple。『Bloomberg』が2023年4月18日(現地時間)に公開した「Apple, Goldman Sachs Debut Savings Account With 4.15% Annual Yield」によれば、Appleの売り上げ全体の約2割を手数料などを含むサービス関連事業が占めており、Appleはこれを強化したい考えだ。「資金調達のため」ではないと考えられる。

 同サービスは現時点で米国のみの提供となっており、筆者を含む日本在住者は利用できない。もし日本で利用できるようになったら筆者は全貯金をAppleに預けることになりそうだ。

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