コロナがあらわにしたトヨタの弱み 同社が取り組む「カイゼン」とはSupply Chain Dive

トヨタの在庫戦略はパンデミックの影響は避けられなかったようだ。同社は2023年5月、在庫管理に対するアプローチの一部の見直しを発表した。

» 2023年06月21日 08時00分 公開
[Sarah ZimmermanSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 トヨタ自動車(以下、トヨタ)の幹部は2023年5月、在庫管理に対するアプローチの一部を見直すと発表した。これは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、サプライチェーン運営のための「ジャストインタイム方式」の難しさが露呈したためだ。

トヨタが取り組む改善策とは 危機を乗り切るために必要な事

 自動車メーカーの「リーン生産方式」は業界における「gold standard」(金字塔)と称され、2011年に日本で発生した大津波のような災害からサプライチェーンを守るため、過去10年間にわたり進歩を遂げてきた。しかし、調達システムなどにおける不測の事態への対策はパンデミックには十分ではなかった(注1)。

 Toyota Motor North Americaのケビン・オースティン氏(需要・供給管理担当グループバイスプレジデント)によれば、ディーラーの在庫がほぼ一夜でゼロになったという。

 オースティン氏はReutersのカンファレンス「Supply Chain USA」で「われわれは常に規律ある在庫管理を行うという意味で、業界トップクラスだと思っていた」と述べた。

 オースティン氏によると、トヨタは危機的状況下でも在庫レベルを維持するために、約45日分の在庫を手元に置いている。同社は半導体不足は乗り切ったが、サプライチェーンの課題により2021年後半から減産を余儀なくされた(注2)。

 「顧客を意識しているつもりだったが不十分だった」(オースティン氏)

 トヨタのオペレーションモデルは一度に1〜2つの障害に対応できるが、パンデミック時に遭遇した数十のサプライヤーの混乱には対応できなかった。同社は現在、在庫戦略を進化させ、サプライチェーンの回復力向上を事業のあらゆる側面で優先させる予定だ。これはバッテリー式電気自動車の生産を拡大する際には特に重要になる。

 2023年4月にトヨタのCEO(最高経営責任者)に就任した佐藤恒治氏は、既にEV(電気自動車)の生産モデルに大きな変化を起こそうとしている。EVのリーダーシップを再構築することに加え(注3)、電気自動車専用に設計された新しい製造プラットフォームを展開し、生産を簡素化する計画だ(注4)。

 オースティン氏は「トヨタは日本の『カイゼン』にのっとり、生産改善の方法を模索している」と話す(注5)(注6)。「良い変化」を意味するこの言葉は、生産性や品質、効率のためにプロセスを継続的に改善するという企業哲学を指している。

 「パンデミックの経験の数々は多少の痛みを伴った。しかし痛みと反省は進歩の証だ」(オースティン氏)

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