生成AIをビジネスに活用する試みはサイバーセキュリティ分野でも広がっている。脅威は増すばかりなのに有資格者不足は深刻という悪条件に苦しむセキュリティ部門の人々の仕事を生成AIはどのように変えるのか。
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データセキュリティ企業であるRubrikとMicrosoftの提携によって(注1)、両社の顧客は生成AI(人工知能)と自然言語処理を利用して、サイバー攻撃を受けたりデータ漏えいが発生したりした際の対応時間を短縮できるようになる。
2023年6月28日の発表によると、両社は「Rubrik Security Cloud」を「Microsoft Sentinel」および「Azure OpenAI Service」に統合する。
両社の提携は、セキュリティオペレーションチームにとって重要な時期に実現した。有資格者不足という課題が業界全体に存在している。これが解消されない中で、サイバーセキュリティ部門はゼロデイ脆弱性やランサムウェアによる脅威の増加に対処している。
Microsoftのチャーリー・ベル氏(セキュリティ、コンプライアンス、アイデンティティおよび管理担当EVP《エグゼクティブ・バイスプレジデント》)は、声明で次のように述べた。「悪意のある攻撃者がますます独自の手段を採用しているこの時期に、企業は彼らに対抗するためにAIに頼らなければならない。Rubrikとの協力によって、われわれの顧客が直面している脅威に対抗し、企業がインシデントにより迅速に対応できるようになる」
Rubrikのアネカ・グプタ氏(CPO《最高個人情報責任者》)によると、二社の連携は次の3つの方法でインシデント対応を迅速化させ、サイバー耐性を向上させるという。
RubrikとMicrosoftは、インシデント対応を迅速化するために生成AIを活用するパートナーシップを結んだ。Rubrik Security CloudがMicrosoft SentinelおよびAzure OpenAI Serviceと統合されることで何ができるようになるのか。
Microsoftは、企業がタスクを自動化するためにさまざまな事例でAzure OpenAI Serviceを使用してきた。
自動車メーカーのMercedes-Benz(以下、Mercedes)は2023年5月初め、Azure OpenAIを利用した「MBUX Voice Assistant」の3カ月間にわたるベータプログラムの提供を米国で開始した(注2)。MBUX Voice Assistantは音声コントロール技術を提供する。「Hey Mercedes」というコマンドで、ドライバーは自動車との間で双方向通信が可能になり、道順や目的地に関する情報を得られる。このベータプログラムはオプトイン方式を利用している。
Mercedesは対話型の生成AI「ChatGPT」のプラグインエコシステムを使って他サービスも統合する予定だ。ドライバーはMBUX Voice Assistantに話しかけることでディナーを予約したり映画のチケットを予約したりできるようになる。
Microsoftは、生成AIがセキュリティ業界の人員不足を克服するのに役立つ点に注目している。同社は2023年3月に、インシデント対応と脅威の感知を迅速化させるために生成AIを使用する「Security Copilot」を発表した(注3)。
今回の提携は、RubrikとMicrosoftがそれぞれのセキュリティプラットフォームを統合するための最新の取り組みだ。Microsoftは2021年8月にRubrikに資本参加している。
また、Rubrikは2022年10月、データリスクに関する知見をMicrosoft Sentinelと統合するためのパートナーシップを発表した。Rubrikは同年12月に、Microsoftの元会長でSymantecの元CEOであるジョン・トンプソン氏を筆頭独立取締役(lead independent board director)に選出した。
初出:Rubrik, Microsoft partner to leverage generative AI for faster incident response(Cybersecurity Dive)
注1:Rubrik + Microsoft Sentinel: Responding Even Faster with AI-Assisted Cyber Recoveries(rubrik)
注2:Mercedes-Benz enhances drivers’ experience with Azure OpenAI Service(azure)
注3:Microsoft unveils Security Copilot built on GPT-4(Cybersecurity Dive)
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