Microsoftが推進するAI事業 NVIDIAとの協業の成果は(1/2 ページ)

MicrosoftのAI事業に関する今後の戦略がMicrosoft Build Japanで語られた。

» 2023年07月05日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

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 日本マイクロソフトは2023年6月28〜29日に「Microsoft Build Japan」を開催し、2日目の基調講演には同社の野崎弘倫氏(執行役員常務 最高技術責任者)が登壇した。同氏が日本マイクロソフトに参画した2023年1月以降、公式の場での講演は今回が初だ。

Microsoftが推進するAI事業 NVIDIAとの協業の成果は

日本マイクロソフトの野崎弘倫氏

 野崎氏は米Oracleや日本オラクルなどに在籍し、オンプレミスやクラウド、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)などの開発に従事してきた。同氏は講演の冒頭で「日本のテック業界はデジタルトランスフォーメーション(DX)はもちろん、大規模システム障害や第4次AI(人工知能)ブームなど、さまざまな課題に直面している。それらを解決するためにMicrosoftは幅広いソリューションを提供している」と述べた。

 同氏は基調講演「AI新時代を支える『Copilot』エコシステム」の中で、主にMicrosoftにおける生成AIへの取り組みを解説した。

 野崎氏はMicrosoftでCEO(最高経営責任者)を務めるサティア・ナデラ氏の「AIの黄金時代が到来し、私たちが把握している仕事を再定義する」という発言を示しながら、「生成AIは大規模言語モデル(LLM)によって自然言語を理解するようになっており、今後は画像や音声なども認識する『マルチモーダルLLM』に進化する。Microsoft Reserch ASIA(MSR)のマルチモーダルモデル『Kosmos-1』は、画像などのイメージインやイメージアウトといった作業に対しても入力を知覚し、指示に従い文脈内学習を行う。同じくMSRの『TaskMatrix.AI』は、デジタルやアナログを問わず幅広いタスクに対応する“スーパーAI”の実現に向けて、数100万の既存モデルやシステムAPI、基盤モデルを接続するエコシステムを構築する」と話した。

 MSRは2023年6月に大規模言語モデル「phi-1」を発表した。phi-1のベンチマークスコアは13億パラメータで、「GPT-3.5」は1750億パラメータだ。野崎氏はこれについて「今後の大規模言語モデルのパラダイムは軽量化であり、大規模なパラメータ数に依存しない『量から質の時代』に変化していく」と述べた。

LLMは量から質へ(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 Microsoftが世界で持つ8カ所の研究拠点には1000人以上の研究者が勤務している。AIに関する公開済み研究論文は6000件以上だ。Microsoftは2020年、大規模言語モデルとして170億パラメータを持つ「Turing-NLG」を、2021年後半にはNVIDIAと共同で5300億パラメータを持つ「Megatron-Turing NLG」を発表した。

Megatron-Turing NLG(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 野崎氏はOpenAIとの協業についても言及し、「わずか2カ月で1億ユーザーを突破した『ChatGPT』は、『Microsoft Azure』を基盤にして学習しており、開発では『GitHub』が中心になっている。データベースには『Azure Cosmos DB』を採用しており、Microsoftのエコシステムが利用者の増加を支えている」と話した。

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