ServiceNowが狙うERP領域の従業員エクスペリエンス最適化はどんなものかERPが受け持つ専門業務を民主化する

ServiceNowは近年、IT部門をターゲットとしたITMSの領域だけでなく、ビジネスサイドの課題解決に向け、基幹業務オペレーションの最適化や合理化のためのサービス展開に力を入れている。同社が狙うのはERP領域の従業員エクスペリエンス最適化だ。詳細を同社VPに聞いた。

» 2023年08月30日 08時00分 公開
[David EssexTechTarget]

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 ServiceNowは2004年、ヘルプデスクのチケット管理や案件管理、メッセージング、ワークフローなど、地味だが極めて重要な技術サポート機能を管理するためのクラウドソフトウェアを開発し、創業した。

 同社のITサービス管理(ITSM)ソフトウェアは、社内外両方のサポートを処理でき、従業員と顧客の双方に対応するツールとなった。やがてServiceNowの幹部は、それがまったく新たな事業展開への出発点でもあることに気付いた。現在、ServiceNowが提供するワークフロー自動化は、企業のIT部門以外、特に顧客サービスや人事、調達、サプライチェーンなどの分野にも拡張しており、ERPやHRのソフトウェアに統合されている。

ServiceNowの「従業員エクスペリエンス戦略」はどの部門に効くのか

 ServiceNowは、効果的な従業員エクスペリエンス戦略に不可欠なソフトウェアとしてもますます注目されている。バックエンドシステムの運用業務から担当従業員を解放し、時にはチャットbotの支援を得ながら、複数システムを横断する共通のタスクについて従業員を支援することで、さらに快適かつ生産的なワークエクスペリエンスを実現するという考え方だ。具体例としては、新入社員の研修や、ライフイベント後の福利厚生の選択変更手続きを段階的に実行するワークフローが挙げられる。また、調達部門の担当者が製品の請求書を作成したり、ERPシステムの調達モジュールに新規サプライヤーを追加したりする際に、あらかじめ構築されたワークフローやジャーニーを利用するケースもある。

 では、ServiceNowを導入するには何が必要だろうか。IT部門がServiceNowのワークフローを設定できるのだろうか。あるいは導入するパートナー企業がそのような設定作業を行う必要があるのだろうか。

 ServiceNowのワークフローを導入する際の可能性と課題に関して理解を深めるために、TechTargetのインダストリーエディターであるジョン・ムーア氏と筆者は、ServiceNowのバイスプレジデントであるジェフ・ゴア氏およびクリスティン・ロエリング氏にオンラインでインタビューを実施した。ゴア氏は、HRサービス提供の製品管理に携わった後、ServiceNowの従業員エクスペリエンスの取り組みにおけるマーケティングと運営を統括している。ロエリング氏はERP製品管理を統括している。

ServiceNowの急成長の背景にあるもの

Jeff Gore ServiceNow ジェフ・ゴア氏

 近年、ServiceNowの知名度は上昇しており、いまやITSMの枠を超えて拡大している。2019年にSAPの元CEO(最高経営責任者)であるビル・マクダーモット氏をServiceNowのトップに迎えた。ビジネスメディアに対して同氏がServiceNowの「顔」として活躍することで、知名度の高い幹部かつ評判の高い営業マンのイメージを確立した。この結果、エンタープライズソフトウェア分野における同社のプレゼンスはさらに高まった。売上高は過去3年間で倍増し、58億ドルに達している。現在、Fortune500に名を連ねる企業の約85%が同社の顧客だ。

 同社のことはウォール街やハイテク業界のアナリストたちも注目している。例えば、2020年のインタビューで、HRテクノロジーのアナリストであるジョシュ・バーシン氏は「ServiceNowは従業員エクスペリエンスプラットフォームの構築の完成度を極限にまで高めた」と評価している。

 ゴア氏によると、Servicenowはバーシン氏の評価基準を明確に満たす意図を持っていたわけではなかったが、「結果的に同様の結論に達した」と述べる。エンドユーザー企業はServiceNowに対して「自社の従業員が関与するシステムや部門が多過ぎる」と、課題を話している。

Kirsten Loegering ServiceNow クリスティン・ロエリング氏

 「従業員が何らかのヘルプやガイダンスを必要とする時、どのチャネルであっても回答を得るために複雑な手続きを求められることを嫌う」と、同氏は指摘する。そして「従業員エクスペリエンスプラットフォームとは、実際には個々の従業員のために一元的に定義するための一連のツールセットを指している。その一連のツールセットを提供するためにServiceNowは、よくある従業員からの要求のための目的に沿ったワークフローを抽出して統合したリクエストプラットフォームを構築した」とゴア氏はServiceNowが提供するワークフロー自動化の意図を説明する。

 ロエリング氏によれば、「(ServiceNowのワークフローを利用することで)全従業員が何らかの形で調達プロセスに関与している」という。このプラットフォームは調達やサプライチェーン、財務部門にまで拡張されつつあり、従来は専任ユーザーだけが処理してきた機能であってもServiceNowのワークフローを使うことで全ての従業員が処理できるようになっている。

調達、財務のワークフローの民主化 担い手は

 「2022年、ServiceNowは調達専門の部門に加え、他部門の従業員の調達に関する社内業務を容易にして効率性を高めるために、調達サービスとサプライヤーのライフサイクル管理製品(「Procurement Service Management」)を発表した」とロエリング氏は説明する。同社はまた、同ソフトウェアを外部ベンダーやサプライヤーにも拡張し、ServiceNowの機能を利用して自社調達部門の担当者とともにタスクやワークフローを管理できるサービスを開始した。今後は財務部門向けの買掛金に特化した製品のリリースも控えている。

 ここで挙げた企業間を横断するワークフロー自動化のメリットを享受するにはServiceNowの統合パートナー企業にプラットフォームを構築してもらう必要がある。ゴア氏は、「パートナー企業は当社のエコシステムにおいて極めて重要な役割を担っている」と述べ、ServiceNowの導入実績の約90%をパートナー企業が担っていると推定する。

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