Microsoftは企業の財務チームに向けた、新たなAIツールをテストしている。企業が抱えるデータプライバシーの不安をいかに取り除くのだろうか。
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Microsoftのゲオルク・グランツシュニッヒ氏(「Dynamics 365 Finance」バイスプレジデント)によると、同社はキャッシュフロー予測やその他の分析タスクで企業の財務チームを支援する新たなAI(人工知能)ツールの段階的な公開を計画している。
同氏は「同ツールはDynamics 365 Financeのユーザー向けのもので、現在は特定の顧客を対象にテスト中だ」と「CFO Dive」に述べた。
「われわれにとって最も重要なのは、このツールがMicrosoftのセキュリティ基準に適合していることだ。早ければ2023年の秋までに、一般向けの公開計画を発表できるだろう」(グランツシュニッヒ氏)
各ソフトウェアベンダーは、画期的な技術として広く認知された生成AIを新製品や改良版に搭載し、市場に提供している。これは、2022年11月にOpenAIが開発した「ChatGPT」の登場を受けてのことだ。
Salesforceが2023年3月に発表した調査によれば、企業幹部の5人中3人が「生成AIはゲームチェンジャーになり得る」と回答した(注1)。さらに回答者の3分の2は「今後18カ月以内にこの技術のビジネス利用を優先する」と回答し、3分の1が「最優先事項」に位置付けた。
一方で懸念もある。同調査によれば、10人中7人の経営幹部が「企業のデータが新たなセキュリティリスクにさらされる可能性がある」と回答し、「スキルギャップの拡大」「企業の既存の技術スタックとの統合の問題」「導入の問題」なども懸念事項の上位に挙がった。
Microsoftはここ数カ月、「Microsoft Bing」「Microsoft Word」「Microsoft Excel」「Microsoft PowerPoint」「Microsoft Outlook」などの「Microsoft Office」製品群に加え、「Microsoft Azure」などにも生成AIを搭載し始めている。
同社は財務や販売、人事などのさまざまなビジネス機能を自動化するために設計されたプラットフォーム「Dynamics 365」にもAI機能を組み込んでいる(注2)。
グランツシュニッヒ氏は2023年5月、同社のブログで「Dynamics 365 Financeのユーザーに拡張プランニングツールとアナリティクスツールを提供する」と書いている(注3)。
「この新たなソリューションで企業は継続的な計画を立てることができるようになる他、タイムリーな業務データと財務データを組織全体で確認できる。AIに支えられた洞察力がイノベーションを推進し、ビジネスを持続可能な成功へと導くだろう」(グランツシュニッヒ氏)
Microsoftのブログによると、このツールは予測分析やゼロベースの予算編成、シミュレーション分析、AIを活用した洞察による隠れた推進力の発見など、今日のCFO(最高財務責任者)が抱える重要課題の解決に重きを置いている。
「時にCFOは『リスクを嫌い変化を受け入れるのが遅い』と評価されることもあるが、マクロ経済が不透明な時代に仕事をこなすというプレッシャーの中で、彼らの多くは財務計画や分析などのタスクにAIを導入することを熱望している」(グランツシュニッヒ氏)
Microsoftはデータプライバシーの問題やAIに関連するその他の潜在的なビジネス上の懸念、特にファイナンシャルプランニングのようなユースケースを背景とした懸念に慎重に対処しているとしている。
グランツシュニッヒ氏によると、財務チームに向けた新たなツールはプライベートプレビューの後にパブリックプレビューに移行し、さらに改良される予定だ。
「われわれはデータプライバシーの重要性に関して妥協することはない」(グランツシュニッヒ氏)
(注1)IT Leaders Call Generative AI a ‘Game Changer’ but Seek Progress on Ethics and Trust(salesforce)
(注2)Microsoft beefs up AI-powered business automation tools(CFO Dive)
(注3)Introducing extended planning and analytics for Dynamics 365 Finance(Dynamics 365 Finance)
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