データ活用はビジネス成長に欠かせないが、実現は簡単ではない。本稿では大和物流の事例を紹介する。
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データを活用してビジネスを加速したい――。業界・業種を問わず、多くの企業がこう考えている。一方で「何から取り組めばよいのか」「データを活用できる人材はどこにいるのか」「ツールは何が必要なのか」といった課題を抱え、なかなか取り組みを推進できないケースも多い。本稿では、これらの課題を抱えながらもデータドリブン経営を目指し、取り組みを進めている大和物流に話を聞いた。
「実際に物流業界はアナログな手法で業務を行っているところが多く、DX(デジタルトランスフォーメーション)と言うとハードルが高いと感じます」
こう話すのは大和物流の岡 貴弘氏(企画管理本部 経営企画部/情報システム部 部長)だ。データ活用をはじめとするDXに取り組む際、特に重要になるのは現場のモチベーションと取り組みへの理解だ。この際、急に「DXを推進する」と経営層から号令がかかっても、現場は取り組みに消極的になり、結局、前向きな変化が起きないということにつながりかねない。
この点、大和物流は現場のアナログデータをデジタルな形に変える「デジタイゼーション」から取り組みを進めている。岡氏はこれについて「いきなりDXと言って取り組むのではなく、少しずつ分かりやすいことから変化を起こすことが重要です。そうすることで、現場の混乱を防げます」と話す。
データ活用では「どのBIツールを使ってデータを可視化するか」という点が重要になるが、大和物流は「Domo」を採用した。この背景として、岡氏は「VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代に対応できるBIツールを探していました。トップダウンでの経営方針が難しくなっている昨今、情報共有の重要性は日に日に増しています。これらを統括して個々のエンパワーメントを最大限に生かせるツールがDomoでした。大和物流ではPCで作業をする約600人の従業員にアカウントを付与し、データ活用を進めています」と語った。
Domoは「操作が簡単」という強みも持つ。製造現場などで、もともとPCなどを業務のメインとして扱ってこなかった従業員にとって、視覚的に理解が簡単というのは非常に重要だ。大和物流は以前、別のBIツールを導入していたが、時間が経過すると誰も使わないツールになってしまったという失敗をしている。Domoの導入は、まさにこの経験を生かしていると言える。
大和物流は現場でのDomoの活用を根付かせるため、なじみのあるデータからDomoで可視化し、「触れてもらう」ことを意識している。また、定期的に現場からの意見を集め、改善に励むことで、アクティブユーザーが137人(1週間以内に利用しているユーザー)と、全体の約2割まで増えた。
一方で、データ活用における課題もある。その一つが「データサイエンティストの育成」だ。データ人材は採用などによる確保も簡単ではないため、組織の中で育てるという企業が増えている。大和物流もそう考えており、1つの部署に一人はデータサイエンティストを配置することを目標にしている。実現に向けた一つの取り組みとして、定期的な「データ活用の事例発表会」などを開催している。
「現場などからデータに関して『こんな取り組みをしたい』という要望があれば、組織としてその活動と伴走する準備があります。柔軟に対応できる組織力というのもデータ活用を実現する強みと言えます」(岡氏)
Domoは大和物流の業務をいかに変化させているのだろうか。岡氏は「Domoは重要な数値を集約するインタフェースとして活用している」としながら、以下のように話した。
「Domoはデータの帳票化に長けていると感じています。これまで80〜100時間程度を要していた要件整理といった作業も、現在は2〜3時間で終わります。その分の時間や人的リソースは本来の業務に充てられます」
大和物流は今後、真のデータドリブン経営を実現するために、組織風土の醸成などにも力を入れる予定だ。物流業界で活躍する大和物流が今後、どのようにITを活用しビジネスを進化させていくのか注目だ。
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