UPSはAIをはじめとするテクノロジーを活用し、荷物の需要動向に柔軟に対応している。
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UPSでCEO(最高経営責任者)を務めるキャロル・トメ氏は2023年8月の決算説明会で、「AI(人工知能)とML(機械学習)を使うことで、2023年第2四半期は荷物量の減少に合わせて配達ネットワークを最適化できた」と述べた(注1)。
荷送人がUPS以外の運送会社に荷物を乗り換える中、同社は米国内の事業における荷物の流れを迅速に調整できたとしている(注2)(注3)。
トメ氏は「荷送人が他社へ移り始め、荷物量が減り始めたことを受け、私たちは自動化されていないハブを効率化した」と話す。これにより、UPSは従業員の労働時間を10%近く削減した。この数値は米国の1日平均荷物量である9.9%とほぼ一致している。
AIの活用などで、UPSはストライキによる顧客の流出といった予期せぬ変化に柔軟に対応できるようになっている。トメ氏は同社のネットワークプランニングツールについて「以前はITチームが何カ月もかけて行っていた作業も現在は半日で済ませられる」と話す。
UPSはツールを活用し、荷物の仕分け作業における効率改善とコスト削減の方法を見つけた。同社でCFO(最高財務責任者)を務めるブライアン・ニューマン氏によると、同社はテクノロジーを活用して業務改善を行ったことで、2023年第2四半期に8億8900万ドルのコスト削減を達成した。
「コスト削減の一例として、自動化されたハブへの依存度を高めたことが挙げられる」(ニューマン氏)
UPSによる投資家向けプレゼンテーションによると(注4)、同社は自動化されていないビルでの輸送量を18%削減した。また、手動での仕分けを閉鎖し、オペレーション部門の従業員を前年同期比で7%も削減したという。
UPSは米国のネットワーク全体における「スマートパッケージ構想」の展開においても進歩を遂げている。これは、RFIDタグを小包に付け、従業員にウェアラブルデバイスを装着することで、手作業によるスキャン作業をなくし、処理能力を向上させるというものだ。トメ氏によれば、第2四半期末時点で、全米の約50%のビルがこのテクノロジーを導入している。UPSは2023年10月末までに全てのビルで導入が完了すると見込んでいる(注5)。
スマートパッケージ構想の次の目標は、配達車両が荷物をスキャンすることだ。「効率を上げることにゴールはない」とトメ氏は述べた。
(注1)United Parcel Service, Inc. (UPS) Q2 2023 Earnings Call Transcript(Seeking Alpha)
(注2)UPS prepares to win back volume it lost during Teamsters negotiations(Supply Chain Dive)
(注3)UPS, Teamsters reach tentative agreement on national contract(Supply Chain Dive)
(注4)2Q23 Earnings Call(UPS)
(注5)UPS’ RFID initiative to expand to rest of US network in 2023(Supply Chain Dive)
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