「地球温暖化や気候変動を抑止する」 東電HDが手掛ける「TEPCO DX」とは

HPEは2024年にどのような取り組みを行うのか。東京電力ホールディングスにおけるGreenLakeの事例と併せて紹介する。

» 2023年12月05日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)は2023年11月30日、2024年度の事業方針説明会を実施した。同説明会では、HPEのソリューションを使ったDX(デジタルトランスフォーメーション)事例として、東京電力ホールディングス(以下、東電HD)も登壇した。

HPEの事業方針と東電HDの事例 「TEPCO DX」とは

HPEの望月弘一氏

 HPEにおける2024年度の事業方針を説明したのは同社の望月弘一氏(代表執行役員社長)だ。同氏は説明会の冒頭、現在のITプラットフォームの潮流として「ITへの期待の変化」「一貫性のあるクラウド体験」「急激なIoT/AI(人工知能)の浸透」を挙げた。それぞれの説明は図1だ。

図1 ITプラットフォームの潮流(出典:HPE提供資料)

 「ITへの期待という面では、電力消費量の削減やコストの抑制、サステナビリティという観点での考え方が強まっています。一貫性のあるクラウド体験では、プラットフォームの分散化が進み、以下にそれらを効率的につなぐかが重要になっています。HPEはこれらの課題に対応するために、2023年も戦略的M&Aを実施しました」(望月氏)

 これらを踏まえ、同社が示した2024年度の事業方針が「Leading Edge-to-Cloud Company」だ。これは「ベンダーニュートラル、クラウドニュートラルな第三極のクラウドプラットフォームを提供し、顧客のビジネス変革と持続可能な社会に貢献する」という思いが込められている。

 望月氏はこれについて「Edge-to-Cloudの領域でHPEはリーダーになります。そのために『HPE GreenLake』(以下、GreenLake)を今後も拡充する予定です。GrennLakeはオンプレミスとクラウドの強みを取り込んだプラットフォームです」と語る。

図2 Edge-to-Cloud Companyとしてのキーファクター(出典:HPE提供資料)

 「HPEの強みは、多様なサービスを通して顧客に最適なソリューションを提供できることにあります」と話す同氏は、エッジソリューションとして図3を、ハイブリッドクラウドソリューションとして図4を、AIソリューションとして図5を示した。

図3 エッジソリューション(出典:HPE提供資料)
図4 ハイブリッドクラウドソリューション(出典:HPE提供資料)
図5 AIソリューション(出典:HPE提供資料)

 望月氏は、これらを提供する「真のクラウドベンダーニュートラルなプラットフォーム」として、GreenLakeを今後も進化させると話す。同氏によれば、HPEのエッジやハイブリッドクラウド、AIの導入実績は発表できるものだけでも堅調な成長を見せているという。

 「GreenLakeの拡充では、過去から提供してきた価値を維持・強化し、あらゆる場所でクラウドエクスペリエンスやベンダーニュートラルを提供できるようにします。それによって顧客のDXやデータ駆動型ビジネスを促進させます」(望月氏)

図6 GreenLakeの拡充を示した表(出典:HPE提供資料)

 HPEはGreenLakeの拡充に加え、ユーザーの購買特性や購買サイクルに合わせたエンゲージメントの強化やパートナーの拡大にも取り組んでいく予定だ。

東電HDが目指す気候変動の抑止、生物多様性も維持

東電HDの関 知道氏

 GreenLakeのDX事例として望月氏の後に登壇したのが東電HDの関 知道氏(常務執行役 CDO《最高データ責任者》 CIO《最高情報責任者》 CISO《最高情報セキュリティ責任者》)だ。

 東電HDが取り組んだDX「TEPCO DX」の目的は、徹底的なデータ化でゼロカーボンエネルギー社会の実現をけん引し、地球温暖化や激甚化する気候変動を抑止し、生物多様性を維持することにある。

 関氏は「徹底的なデータ化の2つの価値」として「業務プロセス価値」「ステークホルダー価値」を挙げる。業務プロセス価値には、ビジネスお価値やAIによるインサイトの獲得などがあり、ステークホルダー価値にはデータを通じて顧客とつながる「データコミュニケーション」を実現するという。

図7 TEPCO DX(出典:東電HD提供資料)

 これらを実現するために、東電HDでは「主導者概念」「実行計画」「全社員化」に取り組んでいる。主導者概念ではDX活動の目的と定義を明確化し、全社DXの司令塔の役割を担う。実行計画では、エコシステムやアーキテクチャ、ロードマップの策定に取り組む。全社員化では、人材育成や社内啓発運動を手掛ける。

 これらの活動を通して徹底的なデータ化に取り組んでいる東電HD。それを実現するプラットフォームが図8だ。

図8 TEPCO Data Hub(出典:東電HD提供資料)

 図8中央にある「TEPCO Data Hub」に取得したデータを蓄積し、APIを活用して生成AIやRPA、データ分析に生かすのがこのプラットフォームだ。2023年11月29日にローンチされ、顧客との価値共創や従業員の生産性向上が期待できるという。TEPCO Data Hubは、GreenLakeのポートフォリオで図9のように構築されている。

図9 GreenLakeがTEPCO Data Hubをサポート(出典:東電HD提供資料)

 関氏はGreenLakeを選定した理由として、以下のように話す。

 「東電HDはかなり“わがまま”だったと思います。オープンソースベースでありながらスケーラブルで、セキュリティや可用性も確保したいと考えていました。これらを全て満たしたのがGreenLakeでした。部下によると、比較していたベンダーのサービスよりも約10倍も速かったそうです」

 関氏は最後に改めて「東電HDはTEPCO DXを通じて、地球温暖化をはじめとする気候変動や、生物多様性の維持に努めていきます」と強調し、説明を終えた。

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