違反企業は「数十億円の罰金」も? AIのリスクは大きすぎるのか問題に新たな一撃CFO Dive

生成AIをはじめとするAIを本格的に導入する企業は増えるばかりだ。一方で、各国政府はAIが抱えるリスクを重大視し、ルールを違反した企業に多額の罰金を課す流れが標準化するとの見方もある。

» 2024年02月13日 13時30分 公開
[Alexei AlexisCFO Dive]

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CFO Dive

 財務ソフトウェアベンダーのOneStreamがHanover Researchに委託して実施した調査(調査期間:2023年8月〜9月)によると、生成AI(人工知能)は今後数年で企業の財務機能を大幅に変革すると予測される(注1)。ただし、生成AIはデータプライバシーのリスクなど、導入に関する課題に直面している。

ルールを犯した企業への手痛い“罰”

 同調査に回答した企業の財務リーダーのうち80%が、「AIは財務部門の生産性を向上させる可能性がある」と答え、66%は「生成AIが今後5年間で財務プロセスの中核的な要素になる」と回答した。一方で、32%が「従業員のトレーニングの整備への不安」、31%が「データプライバシーに関する規制や手続きのリスクがある」と回答しており、導入の課題に懸念を示す回答者もいた。

 OneStream AI Servicesのティファニー・マー氏(シニア・プロダクト・マーケティング・マネージャー)は「AIへの関心は確かに高い。AIがもたらすメリットに関して、財務リーダーからは多くの肯定的な意見が寄せられている。しかし、中には課題もあった」とインタビューで述べた。

 同調査の結果は、AIに対するCFO(最高財務責任者)の意識を調べた他の調査と一致している。

 技術力を持つ財務人材のためのマッチングサービスParoが2023年11月に発表した調査では、財務リーダーの83%が「財務の将来にとってAIは不可欠な技術と考えている」。しかし、実際のところ42%の企業はまだAIを導入できていない(注2)。この調査ではAIの課題として「規制リスクや人材不足など」を指摘している。

 Paroのアニタ・サモジェドニクCEO(最高経営責任者)はインタビューで「AIがある未来は誰もが認めるところだ。しかし、その導入と管理方法についてはかなり懸念している」と述べた。

 AIへの関心が高いにもかかわらず導入率が低い理由の一つは、「企業の財務チームが扱うデータの機密性が高いことが挙げられるだろう」とマー氏は言う。Onestreamの調査によると、財務リーダーの43%が「データセキュリティ体制の改善」を求めている。43%は「AIの課題を解決するために設計された新しいソフトウェアを既に導入済み、もしくは検討中」であることが分かった。

 2023年に起きた生成AIの急速な台頭は、AIの潜在的リスクに対処するためのガイドラインの必要性について、米国をはじめとする全世界で議論を巻き起こした。

 ジョー・バイデン米大統領は2023年10月、「AIの安心、安全で信頼できる開発と利用に関する大統領令」に署名する直前に、「プライバシーだけがリスクにさらされるのではない。適切な保護措置がなければ、AIは差別や偏見、その他の悪用につながる可能性がある」とホワイトハウス(米連邦政府)で述べた(注3)。

 所属政党を問わず、米国の連邦議会議員はこの問題を注視している。超党派の上院議員グループが2023年11月15日(現地時間)に提出したAIをめぐる包括的な法案(S.3312)は、とりわけ重大な影響を及ぼすAI技術を導入する企業に対して、詳細なリスク評価の実施を義務付けるものだ(注4)。

 法案提出者の一人であるミネソタ州選出のエイミー・クロブチャー上院議員はプレスリリースで「AIは大きな利益をもたらす可能性がある一方で、深刻なリスクもはらんでいる。法律もそれに対応していかなければならない」と述べた(注5)。

 法律事務所のCovington & Burlingが2023年11月に発表した報告書によると、超党派の議員グループによって提出された数十件に上るAI関連法案が議会で審議中だ。そのうち半数以上が所管の委員会を通過したという(注6)。

多額の罰金を企業に課す 「EU AI法」が合意

 EUにおけるAI法制化の取り組みはさらに進んでいる。

 2023年12月初め、EU当局は「EU AI法」と呼ばれる包括的な提案について画期的な合意に達した(注7)。米大手日刊紙『Washington Post』によると、同法案はAIを規制する世界で最も野心的な法律だ。リスクの分類や透明性の強化、コンプライアンス違反を犯したテック企業に経済的制裁を科すための世界標準になり得るという(注8)。

 「EU AI法」施行後、違反した場合は、違反の内容や企業規模に応じて最高で3500万ユーロ(約56億円)、またはグローバルにおける売上高の7%に相当する罰金を科される可能性がある。

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