ヴィームは事業戦略説明会を開催し、データ保護における4つのトレンドを踏まえて、レッドハットとの協業や自社製品アップデートの最新状況を発表した。
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Veeam Softwareの日本法人ヴィーム・ソフトウェア(以下、ヴィーム)は2024年2月8日、事業戦略説明会を開催し、2024年におけるソリューションとパートナービジネスの展開方針について説明した。
ソリューション面では、日本マイクロソフトやレッドハットとの協業を拡大し、新たなデータ保護機能やサービスを日本で開始する。パートナービジネスの面では、OEMサポートビジネスやチャネルパートナービジネスをさらに拡大する方針だという。
発表に際し、ヴィームの古舘正清氏(執行役員社長)は、Veeam SoftwareがIDCやGartnerの調査でグローバルのマーケットリーダーとして評価されたことに触れながら「2023年は大手エンタープライズや中央省庁での採用が進み、ランサムウェア対策で病院や製造業など中堅市場でのニーズも高まりました。マツダやパナソニックなどの導入企業からは、クラウドとの親和性が高い点やランサムウェア対策として有効な点、ストレージベンダーからのロックインの脱却といった点を評価されています。パートナービジネスとしては、OEMサポートとして日立製作所や伊藤忠テクノソリューションズグループとの協業強化をはじめ、チャネルパートナーとしてダイワボウ情報システムや大塚商会とビジネスを拡大してきました」と述べた。
古舘氏によると、クラウドの普及やランサムウェア対策のニーズが拡大したことで、バックアップやリカバリーを中心としたデータ保護製品は見直しが急速に進んでいる。これ以外にも「ITインフラをシンプルにしたい」というニーズの高まりからVeeam製品が採用されているという。
ヴィームとしては今後、データ保護における4つのトレンドを押さえたサービス展開を計画している。
トレンドの1つ目は、ランサムウェア感染を前提とした対策だ。事業継続の観点から素早い復旧やリハーサル、防災訓練の実施などが必要で、バックアップの見直しが求められている。2つ目は、クラウドに適したバックアップニーズの高まりだ。これに向けてBackup as a Service(BaaS)といった新しいソリューションが出てきている。
3つ目はSaaSバックアップ需要の増加だ。最近は「Microsoft 365」や「Salesforce」などの主要なSaaSのバックアップを定期的に取得する動きがみられる。4つ目は、BroadcomによるVMware買収に伴うアプリケーションモダナイゼーションの促進だ。ハイパーバイザーからコンテナへの流れが促進される向きもあり、コンテナのデータ保護需要が拡大している。
日本マイクロソフトやレッドハットとの協業やパートナービジネスの拡大はこの背景を受けての取り組みだ。具体的にはMicrosoft 365や「Microsoft Azure」向けのBaaSソリューションの国内展開、レッドハットのコンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift」(OpenShift)向けのデータ移行/データ保護ソリューションなどを提供する予定だ。
続いて登壇したレッドハットの三木雄平氏(パートナーエコシステム事業本部 常務執行役員)は、コンテナプラットフォームの活用で国内企業が抱える課題および、レッドハットとヴィームが協業することで顧客に提供できる価値やメリットについて説明した。
三木氏によると、ここ数年はグローバルレベルでレッドハットとヴィームが協力して顧客の課題を解決するケースが増えてきており、今後は国内でもそうしたケースが増えると予測されるという。
「OpenShiftを利用している国内の顧客が抱えている課題は“Day2オペレーション”です。Day0が企画、Day1が導入や開発、Day2が運用フェーズです。運用では、コンテナをサービスとして提供する際のサービスの価値を支え、高め、改善することが求められます。具体的にはセキュリティやモニタリング、ロギング、メンテナンス、障害対応、バックアップ、バージョンアップなどが該当します」(三木氏)
そこでヴィームとレッドハットの協業によって提供されるのが「Red Hat OpenShift with Veeam Kasten」だ。OpenShift with Veeam Kastenは、OpenShfitを利用する際に、ヴィームが提供するバックアップとリストア、ディザスターリカバリー、ランサムウェア保護などの機能を追加で利用できるようにする。
「OpenShift with Veeam KastenはエンドユーザーフレンドリーなDay2オペレーション機能を提供します。クラウドへの移行だけでなくクラウドからオンプレへの移行に対応する他、バージョンアップを簡単に実施したいといったニーズにも応えます。既にグローバルでの事例はあるため、日本での導入も安心です」(三木氏)
製品やソリューションの具体的な機能や特徴については、ヴィームの高橋正裕氏(ソリューション・アーキテクト)が解説した。
主力ソリューションである「Veeam Data Platform」は、2023年12月6日(米国時間)にv12.1がリリースされている。今回のアップデートで新たに、サイバー脅威を検知して特定する機能やランサムウェアからより迅速に対応・復旧する機能、完全かつ各種規制に対応した保護でデータを守る機能が追加された。
「ヴィームはバックアップベンダーからセキュリティベンダーへと完全に変わりました。脅威の検知機能についてはバックアップ後だけでなく、バックアップを取得する段階から検知できるようになっています。対応や復旧においても再感染の防止やクリーンな復元の自動化、正確な復元が可能です。この他、規制やコンプライアンス対応として、4-Eyes(承認者による保護)やイミュータブルバックアップへの対応、脅威を浮き彫りにするVeeam脅威センターなどの機能が加わりました」(高橋氏)
BaaSである「Cirrus by Veeam」では、Microsoft 365のバックアップが可能な「Cirrus for Microsoft 365」を提供する。日本市場に対応し、日本語にローカライズされたUIの提供や、日本リージョンのバックアップストレージを選択可能になるなど機能強化が図られている。今後は、Microsoft Azure向けBaaSも国内向けに展開される予定だ。
「BaaSのメリットはユーザー側でインフラの設計・構築、リソースの確保、環境の維持が不要になることです。SaaSを利用しているのであればバックアップでもSaaSを利用した方がいいでしょう。手間の掛かる機器の管理やパッチ適用などの運用管理を当社に丸投げできます」(高橋氏)
コンテナバックアップソリューションとしてはKastenの最新バージョン「Kasten K10 V6.5」がリリースされ、「Kubernetes」環境向けのランサムウェア保護とセキュリティ機能が拡張された。
高橋氏は「Kastenのミッションは、企業が自信を持ってKubernetesでアプリケーションを実行できるように、企業に代わってDay2オペレーションのデータ保護の課題に取り組むことです。具体的にはバックアップ&リストア、ディザスタリカバリー、アプリケーションモビリティ、ランサムウェア保護の機能を提供します」と語った。
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