「Apple Vision Pro」はビジネスに使えるのか? 続々リリースされるアプリを“点検”Retail Dive

その価格や重さ、用途がまだ見えていないことで賛否両論のAppleのゴーグル型端末Apple Vision Pro。果たしてビジネスに使えるのか。Apple Vision Pro向けアプリをリリースしている企業の顔ぶれを見てみよう。

» 2024年03月27日 07時00分 公開
[Tatiana Walk-MorrisRetail Dive]
Retail Dive

 2024年2月に米国で発売されたAppleのゴーグル型端末「Apple Vision Pro」は、さまざまな話題を呼んでいる。Appleが「空間コンピュータ」と呼ぶこのデバイスのポテンシャルを引き出すのはどのような用途なのか。現在リリースされているApple Vision Pro向けアプリから見えてくるものは。

相性が良い業界とは? 今アプリを出しているのは「こんな会社」 

 現在、「相性が良い」といわれているライフスタイルや美容の業界からさまざまなアプリがリリースされている。

 家具やキッチン用品をオンライン販売しているWayfairは、空間コンピューティングのトレンドに乗り、家具可視化アプリ「Decorify」をApple Vision Proでリリースすることを2024年2月6日(現地時間、以下同)に発表した(注1)。

 Decorifyのユーザーは自分の部屋の写真をアップロードし、Apple Vision Proで写真を撮ったり、Decorifyが用意しているサンプル画像を使ったりして、自身のスタイルに合わせてバーチャルで内装をデザインできる。希望のアイテムはApple Vision ProからWayfairで購入できる。

 Wayfairによると、3Dレンダリング技術によって、顧客は自宅に原寸大の商品が床に固定されているイメージを見られる。

 Apple Vision ProとDecorifyアプリはどちらも2023年夏に発表された。この2つの組み合わせは、家具の購入者が商品を選ぶサポートをしてきた(注2)(注3)。Wayfairは2023年7月、デスクトップ用とモバイルデバイス用のアプリを発表した。

 Wayfairのシュレニク・サダルギ氏(研究開発ディレクター)は「空間コンピューティングはコンピューティング技術の次のステージだと以前からわれわれは考えてきた。空間コンピューティングは2Dスクリーンに縛られることがない。ユーザーの周囲の空間は体験に欠かせない存在になる。空間コンピューティング時代の新しい技術やインタフェース、パラダイムを探求し続けることに興奮している」と声明で述べた。 

 Wayfairは商品のビジュアライゼーション機能を拡大する一方で、赤字続きだった事業の立て直しも図る。同社の2023年第3四半期決算での売上高は前年比3.7%増の29億ドルとなり、9四半期連続の減収から反転した(注4)。米国における売上高は前年比5.4%増の26億ドルに上る。

 同社の増収は、家具や家庭用品の需要が減少し続ける中で起きた。2023年12月、米国商務省国勢調査局は、家具・家庭用品の小売売上高が前年比7.2%減少したことを明らかにしている(注5)。

 家具の需要が減少する中、事業の改善に取り組むWayfairは従業員を削減し続けている。2023年2月頃、同社は1750人の従業員を解雇した。そのうち1200人は本社スタッフだった(注6)。2024年1月はさらに1650人の従業員を解雇した。これは全社従業員の約19%、海外従業員数の13%を占める(注7)。

 他社もApple Vision Proでの“実験”を始めている。化粧品メーカーのe.l.f. Beautyは2024年2月2日、Apple Vision Pro向けの美容ショッピングアプリ「your best e.l.f.」をリリースした。アプリにはガイド付きの瞑想メニューや指定された番号に従って色を塗るゲームやe.l.f. Beautyの人気商品にインスパイアされた3つのバーチャル環境が用意されている(注8)。

 スポーツアパレル小売のAlo Yogaは2024年2月、Apple Vision Proで「Alo Sanctuary」アプリをリリースした。屋外を模したバーチャル環境で瞑想エクササイズメニューや、Alo Yogaの全商品を3Dで表示するショッピング機能を提供している(注9)。

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