AI時代、コスト削減したい でも8割は目標達成ならず 足を引っ張るのは何かCFO Dive

デロイトの調査(2023年)によると、「過去1年間にコスト削減目標を達成できなかった」とする企業が82%に上った。これは同社が調査を始めて以来最高値だ。足を引っ張っているのは何か。

» 2024年04月10日 08時00分 公開
[Alexei AlexisCFO Dive]

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 Deloitte Touche Tohmatsu(以下、Deloitte)の報告書によると、コスト削減や利益率向上を目的としたAI投資といった企業の目標達成を妨げる障壁のトップは「テクノロジーインフラの課題」だった(注1)。

8割以上が目標を達成できず レガシー技術からの脱却が課題

 Deloitteが全世界の300人以上のビジネスリーダーを対象に実施した本調査では、回答者の半数がコスト管理の主な障壁として「テクノロジーインフラの課題」(前年比61%増)を挙げた。企業はコスト削減と変革プログラムのアプローチを変更し、AIに焦点を当てているという。

 Deloitteのマウリシオ・ガルザ氏(戦略・分析部門リーダー)は、インタビューで次のように語った。

 「ITインフラの観点から自社の体制を整える重要性が高まっているのは、間違いなく生成AIやAIアプリケーション全般の台頭によるものだ。この分野で新しいことに挑戦していると、障壁が表面化してくる」(ガルザ氏)

 Deloitteの調べによると、過去1年間にコスト削減目標を達成できなかった企業は、前回の調査では72%だったのに対し今回は82%に上ったという。「これは2008年にこの調査を開始して以来最も高い失敗率だ」と記載がある。

 過去1年間にコスト削減目標を達成した企業の中でも当初のスケジュールを守ることが課題になっていたが、42%が達成には至らなかった。

 2024年2月、『Bloomberg』はMorgan Stanleyのストラテジストによる分析を引用し、資金の再配分やAIなどの新技術への投資を推進する中、米国企業は決算説明会で過去最高の割合でコスト管理について議論していると報じた(注2)。この報告によるとコスト管理への注目が高まっているのは、徐々に経済の落ち着きが期待される中、企業が利幅を維持するためだという。

 Hewlett-Packardのダニエル・カシアーノ氏(プロダクト・エクスペリエンス・サポート・マネージャー)が2023年に「LinkedIn」に寄稿した記事によると、AIを職場で活用する最大のメリットは、コスト削減と効率化の可能性だという(注3)。

 「繰り返しの多い作業を自動化し、ビジネスプロセスを合理化することで、AIは従業員の時間をより戦略的で創造的な作業に集中させられる」(カシアーノ氏)

 AIは業務効率を最大40%改善し、業務コストを最大30%削減できると、カシアーノ氏はMcKinsey & Companyの調査を引用して指摘した。

 「AIによってコスト削減を実現しようとする企業は、その具体的なニーズにもよるが、多額の初期費用を覚悟しなければならない。社内でAIシステムを構築する場合、100万〜1000万ドルのコストがかかるが、ベンダーを利用する場合は年間10万ドルを超える。初期費用は高額かもしれないが、コスト削減と効率化の可能性を考えれば、将来の事業運営に投資する価値はある」(カシアーノ氏)

 Deloitteは、ビジネスリーダーの79%が効率化やイノベーションを推進し、顧客や従業員の体験を向上させるツールとして生成AIを採用していることを明らかにした。しかし、ガルザ氏によると、企業はこの技術を導入しようとするあまり、多くの場合レガシー技術の課題に直面するという。

 「AIで規模を拡大し、効率化を推進しようとすると、レガシーシステムや時代遅れのデータ構造にぶつかり、こうした新技術の価値をすぐに享受できなくなる」(ガルザ氏)

 McKinsey & Companyの2020年の報告書によると、レガシーな技術アーキテクチャに隠された課題は、企業の意表を突くものであり、予算超過や納期遅れなどの問題を引き起こす可能性がある(注4)。

 McKinsey & Companyは報告書で「技術的負債の管理不足は企業の競争力を阻害する。時代遅れのシステムが生み出す複雑さは、新製品や新機能の統合に法外なコストをかけることになる」とコメントしている。

 Deloitteの調査ではコスト管理努力を妨げる主要な障壁として、テクノロジーインフラの課題が1年前の第5位からトップに急上昇した。過去1年間におけるその他の障壁には、「需要に合わせてコスト構造を迅速に調整できない」(回答者の48%、前年は32%)、「重要な人材の採用・確保ができない」(回答者の43%、前年は42%)などが挙げられている。

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