SAPがGoogle Cloud、Meta、Microsoft、Mistral AI、NVIDIAと連携強化 ERPの何がどう変わる

SAPはカンファレンス「SAP Sapphire」で、Google Cloud、Meta、Mistral AI、NVIDIAとのパートナーシップを発表した。ERPの何がどう変わるのだろうか。

» 2024年06月06日 07時00分 公開
[大島広嵩ITmedia]

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 SAPは米国オーランドで2024年6月3〜5日(現地時間)に開催したカンファレンス「SAP Sapphire」で、「ビジネスを次のレベルに引き上げるための生成AIのイノベーションとパートナーシップ」を発表した。

 具体的には、Google Cloud、Meta、Microsoft、Mistral AI、NVIDIAと関係を強化している。ERPの何がどう変わるのだろうか。

パートナーシップで進化するビジネスAI

 SAPは、ビジネスAIをエンタープライズソリューション全体に組み込むことで、ユーザーにインサイトを提供することで成果を生み出し、人が最も得意とする創造的な問題解決に集中できるよう支援する。例えば、「SAP SuccessFactors」はAIが生成するレポートが人事担当者に給与決定に必要なインサイトを提供し、「SAP Sales Cloud」は販売を促進する可能性が最も高い営業担当者と製品の組み合わせを予測する。

 また、「SAP Business Technology Platform」の生成AIハブに、Amazon Web Services(AWS)、Meta、Mistral AIの大規模言語モデルを追加した。開発者はSAPアプリケーション向けの生成AIユースケースを簡単に構築できるという。

 SAPの生成AIアシスタント「Joule」は、複数システムのデータを整理して文脈化することで、自動化を促進し意思決定を改善する。Jouleは2023年にSAP SuccessFactorsに導入され、現在は「SAP S/4HANA Cloud」「SAP Build」「SAP Integration Suite」などにも組み込まれている。2024年の末までに、「SAP Ariba」「SAP Analytics Cloud」にも拡張される予定だ。

 さらに、「Microsoft Copilot」との統合によってJouleの機能は拡張され、より深いインサイトを提供する予定だ。ユーザーはSAPおよび「Microsoft 365」からシームレスに情報にアクセスできる。

 またSAPは、AIが人権を尊重して公正を促進し、持続可能な開発に貢献する形で開発・使用されることを目指している。そのため国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が策定した「AIの倫理に関する勧告」に記載された10の指導原則を採用している。

イノベーションを加速するパートナーシップ

 SAPは、生成AIで実現できることを増やすためパートナーシップを強化している。AWSやMicrosoftとの協業拡大に加え、Google CloudやMeta、Mistral AI、NVIDIAとのパートナーシップによって機能を拡充する見込みだ。

Google Cloud

 SAPとGoogle Cloudはパートナーシップを拡大し、ビジネスAIを活用して企業がサプライチェーンリスクをより適切に予測・軽減して混乱を最小限に抑え、最適な在庫レベルを維持できるようにする。

 両社は、Jouleと「SAP Integrated Business Planning for Supply Chain」を、Google CloudのAIアシスタント「Gemini」「Google Cloud Cortex Framework」のデータ基盤と統合する。

Meta

 SAPは「Meta Llama 3」を活用して「SAP Analytics Cloud」で高度にカスタマイズされた分析アプリケーションを生成する。Metaの次世代AIモデルは言語の微妙なニュアンスと文脈の理解に優れており、企業のビジネス要件を具体的な成果に変換するのに適している。

Mistral AI

 「SAP AI Core」の生成AIハブ機能に、パリに本社を置く生成AIを専門とするグローバル企業Mistral AIの大規模言語モデルを追加する。

NVIDIA

 SAPとNVIDIAは、最先端技術を企業向けビジネスアプリケーションに組み込むためのクロスプロダクトパートナーシップを推進している。その概要は以下の通りだ。

  • 「RISE with SAP」の導入を支援するためのAIアシスタントとしてJouleをトレーニングする際、NVIDIAの最新AIモデルがSAPのコンサルティング資産を分析し、的確で関連性の高い回答を導き出すように取り組んでいる
  • SAPは、Jouleを「ABAP Cloud」モデルに組み込み、SAP開発者向けにABAPコードを生成する。NVIDIAの高速処理インフラストラクチャを活用し、SAPの生成AIモデルの実行、拡張、管理をする
  • SAPは生成AIを「SAP Intelligent Product Recommendation」に導入し、「NVIDIA Omniverse Cloud API」を活用して、複雑な製造製品や構成をデジタルツインとしてシミュレーション可能にする

クラウド技術がもたらす俊敏性と持続可能性

 AI時代のビジネスの成功には、クラウド活用が不可欠だ。SAPは、企業がSAP S/4HANA Cloudへの複雑な移行に必要な専門知識を持つパートナーを見つけられるよう支援する取り組みを通じて、クラウド移行をこれまで以上に容易する予定だ。

 SAP Sapphireではクラウド関連の新たな機能が発表された。これらの機能は、世界中の組織がサステナビリティ戦略を測定や管理、実行することを支援する。「SAP Sustainability Control Tower」と「SAP Sustainability Footprint Management」は、大規模な二酸化炭素排出量を追跡し、企業における規制基準の順守を支援する。

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