大規模なAI投資を続けるMicrosoft 数兆円規模の投資先はCIO Dive

MicrosoftのAIへの投資が止まらない。サーバの導入やデータセンター新設による容量の増強、Azureの拠点拡大など、将来に向けて惜しまず費用を投下しており、実際に売上高にも好影響を与えている。

» 2024年07月17日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 2024年にクラウドの収益が再び勢いを取り戻すにつれて、巨大テック企業のMicrosoftが2023年1月にOpenAIの生成AIに投資した100億ドルは今や些細な金額に思える(注1)。

 Microsoftは企業のAI志向を取り込む競争で最初の一手を打ってからも、「Microsoft Azure」(以下、Azure)というインフラ帝国を拡大する資金を集め、AIに必要なクラウドストレージやコンピューティングのリソースを確保するために数百億ドルを投じてきた(注2)。

数兆円規模のAI投資を続けるMicrosoft、それでも欲しいデータは取れる

 同社のアリステア・スピアーズ氏(Azureグローバルインフラ担当ディレクター)は「CIO Dive」に対し、「これはもはやクラウドの実験段階ではない」と語っている。

 同氏は信頼性、持続可能性、レジリエンス、セキュリティ、データ主権といった「簡単な問題」に焦点を当てたデータセンター戦略を指揮している。

 すでに実用化されているコーディングアシスタント、チャットbot、要約ツールなどの企業向けLLM(大規模言語モデル)技術の構築や組み込み、サポートには新たな課題が伴う(注3)(注4)。MicrosoftはAIコンピューティングに備えるため、GPUやその他の高性能チップを搭載したサーバを導入し、容量を拡大している。

 「AIによってデータセンターに新たなワークロードが加わる。AIには必要なサーバの種類や電力要件を変えるような独自の要件があるが、本質的には継続的な処理の一部だ。これにより、われわれは進歩のためのさらなるデータを得ることができる」(スピアーズ氏)

 この進歩は、ここ数カ月で勢いを増している。

 2024年5月にジョー・バイデン大統領が出席した式典で発表された、Microsoftのウィスコンシン州におけるクラウドインフラ構築とAI関連の取り組みに対する33億ドルの投資は、広範囲にわたるグローバル戦略の一環であり、現在も進行中だ(注5)。

 そこからの6週間で、Microsoftはメキシコに初のデータセンターを開設し、ケニアでは10億ドルのデータセンターパッケージを発表、さらにはフランスに40億ユーロを投資し、インドネシア、タイ、マレーシアでAzureの拠点を拡大した(注6)(注7)(注8)。

 同社のサティア・ナデラ氏(CEO)は、2024年4月に行われた同社の2024年第3四半期決算説明会で、「われわれはAI分野のリーダーになるために、数年にわたって多額の資金を継続的に投入してきた」と述べた。

 AIを主導する動きは、Microsoftの支出パターンにも反映されている。同社は2024年3月31日までの3カ月間に、クラウド需要を支えるインフラやリースを含む140億ドルの資本支出を報告した(注9)。これは、同社が2023年同期に報告した78億ドルの資本支出のほぼ2倍に当たる(注10)。

 エイミー・フッド氏(CFO《最高財務責任者》)は、この支出はクラウド需要を満たすためのものであり、AIインフラ投資を拡大するにつれて増加する可能性が高いと述べた。

 「AI需要の増加に伴い、われわれはオンラインで利用できるキャパシティを継続的に拡大していく」とフッド氏は述べ、短期的な需要が利用可能な容量を上回っていると指摘した。

「データセンターバブル」か 成長著しいクラウド事業にAIが拍車

 データセンター施設には、クラウドビジネスを推進するエンジンがある。AIワークロードのためにサーバを最適化することは、昨今のインフラ課題だ。

 Microsoftはパンデミックの時期に容量の拡大について多くのことを学んだとスピアーズ氏は言う。しかしデータセンターはその性質上、戦略的投資である。建設には何年もかかり、運用には多くの人手を要する。

 「これらは複雑なインフラプロジェクトだ。サーバはもちろんのこと、多くの人材、建設作業、計画、持続可能な土地の選定、許認可、改修など、あらゆるものが必要になる」(スピアーズ氏)

 ハイパースケーラーのビジネスモデルは、公共事業のように効率的に企業のコンピュートリソースを供給することで築き上げられた。スケーラブルなインフラがサービスとして提供されることによって、顧客は高額で複雑なオンプレミス設備を設けることなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できるようになった。

 不動産業を展開するCBRE Groupのゴードン・ドルベン氏(米州データセンターリサーチディレクター)は、次のように述べている。

 「ストリーミングであれ、コンテンツであれ、アプリケーション上のメッセージのやり取りであれ、サービスを提供するにはデータセンターが必要だ」(ドルベン氏)

 ハイパースケーラー各社は各業界でのクラウド導入に対応するため、容量を増強しており、インフラの拡張はすでに始まっていた。Gartnerによると、2023年はマクロ経済的な逆風があったにもかかわらず、企業のクラウド利用によって世界のクラウド支出が前年比18%増加したという(注11)。2024年は20%の成長が見込まれ、LLM技術は世界のクラウド支出を7000億ドル近くにまで押し上げるとGartnerは予測している。

 クラウドリソースとAIコンピュートの消費が拡大する中、効率性は依然として重要事項だ。

 「データセンターで使用されるあらゆる電力は計測可能であり、顧客にも詳細を開示、請求できる。より効率的で持続可能な運用を実現し、最大の運用コストの1つであるエネルギー消費量を削減するために多くの投資が行われている」(スピアーズ氏)

 生成AI機能の導入競争はすでにMicrosoftのクラウド事業を強化している。Azureの売上高は、2024年の最初の3カ月間で前年同期比31%増と急増した。フッド氏は決算説明会で、Azureとその他のクラウドサービスの7%ポイント増加にAIサービスが大きく貢献したと述べた。

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