ある調査によると、大企業を中心に人間からAIへの置き換えが急速に進んでおり、このスピードはさらに加速する見込みだ。企業がAIへの置き換えを進める理由とは。
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今後1年間に自動化を計画している米国大企業の76%が、人間の労働力よりもAIの活用を選択しようとしていることが、調査で分かった。米国の名門大学であるデューク大学のThe Fuqua School of BusinessとThe Federal Reserve Bank of Richmond、The Federal Reserve Bank of Atlantaが四半期ごとに実施しているCFO(最高財務責任者)を対象とした調査だ。
2024年6月20日(現地時間)に発表された同調査によると、過去12カ月間に労働力をAIに置き換える施策を実行した米国の大企業の割合は55%だった。自動化に取り組もうとしている企業の76%が人間よりもAIの活用を目指しているという結果を踏まえると、AIへの置き換えはさらに進むとみられる(注1)。
なぜ企業は人間に代わってAIを活用しようとしているのか。「人件費削減」よりも多くの企業が選んだ「ある動機」とは。
同調査のアカデミックディレクターを務めるデューク大学のジョン・グラハム教授は「CFOはサプライヤーへの支払いや請求書発行、調達、財務報告、設備利用の最適化など、多くの業務を自動化するためにAIを活用している。これは、企業がOpenAIの『ChatGPT』を使用して創造的なアイデアを生み出したり、職務記述書や契約書、マーケティング計画、プレスリリースの草案を作成したりすることに加えて実施されている」とプレスリリースで述べた。
AIを導入する企業が急増する中で、各国政府は労働力がAIに置き換わる可能性など、AIに関連するさまざまなリスクへの対応に奮闘している。
国際通貨基金(IMF)の試算によると、AIの台頭によって世界全体の40%近くの雇用が影響を受ける可能性がある。AIに代替される業務もあれば、補完される業務もあるという(注2)。
米国労働省(BLS)は2024年5月に発表したガイドで、労働者とその代表者の「真の意見」を取り入れ、透明性高くAIを導入するよう雇用主に助言している(注3)。同ガイドは、ジョー・バイデン大統領が2023年に発表したAIに関する包括的な大統領令に続くものだ(注4)。
デューク大学の調査によると、事業規模を問わず、65%に及ぶ企業にとって自動化の優先順位は「高い」、もしくは「中程度」だ。回答者の60%が「過去12カ月の間に従業員が実施していた作業を自動化するためにAI技術を使用した」と回答し、ほぼ同数が「今後1年間に自動化を行う予定だ」と回答した。
過去12カ月間に労働者をAIに置き換える主な動機としては、「ビジネスプロセスの強化」(87%)、「アウトプットの質の向上」(58%)、「アウトプットの量の向上」(49%)、「人件費の削減」(47%)などが挙げられた。
この調査では、特にAIによる自動化において、中小企業よりも大企業の方が速いペースで労働者を置き換えていることが分かった。過去1年間に労働者を置き換えるAI施策を実行した大企業は55%だったのに対し、同期間に同様の施策を実行した中小企業は29%にとどまったという。
(注1)U.S. Companies Ramp Up Automation and AI as Inflation Persists(The CFO Survey)
(注2)AI Will Transform the Global Economy. Let’s Make Sure It Benefits Humanity.(IMFBlog)
(注3)Employers should include workers in AI plans, DOL says(CFO Dive)
(注4)Biden’s AI order calls for guardrails to protect workers(CFO Dive)
(初出)76% of large automating firms plan to swap workers with AI: CFO survey
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