なぜ大企業は人間をAIに置き換えるのか? 「人件費カット」を上回る「ある動機」CFO Dive

ある調査によると、大企業を中心に人間からAIへの置き換えが急速に進んでおり、このスピードはさらに加速する見込みだ。企業がAIへの置き換えを進める理由とは。

» 2024年08月07日 08時00分 公開
[Alexei AlexisCFO Dive]

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CFO Dive

 今後1年間に自動化を計画している米国大企業の76%が、人間の労働力よりもAIの活用を選択しようとしていることが、調査で分かった。米国の名門大学であるデューク大学のThe Fuqua School of BusinessとThe Federal Reserve Bank of Richmond、The Federal Reserve Bank of Atlantaが四半期ごとに実施しているCFO(最高財務責任者)を対象とした調査だ。

なぜAIに置き換えるのか? 「人件費カット」を上回る動機とは

 2024年6月20日(現地時間)に発表された同調査によると、過去12カ月間に労働力をAIに置き換える施策を実行した米国の大企業の割合は55%だった。自動化に取り組もうとしている企業の76%が人間よりもAIの活用を目指しているという結果を踏まえると、AIへの置き換えはさらに進むとみられる(注1)。

 なぜ企業は人間に代わってAIを活用しようとしているのか。「人件費削減」よりも多くの企業が選んだ「ある動機」とは。

 同調査のアカデミックディレクターを務めるデューク大学のジョン・グラハム教授は「CFOはサプライヤーへの支払いや請求書発行、調達、財務報告、設備利用の最適化など、多くの業務を自動化するためにAIを活用している。これは、企業がOpenAIの『ChatGPT』を使用して創造的なアイデアを生み出したり、職務記述書や契約書、マーケティング計画、プレスリリースの草案を作成したりすることに加えて実施されている」とプレスリリースで述べた。

 AIを導入する企業が急増する中で、各国政府は労働力がAIに置き換わる可能性など、AIに関連するさまざまなリスクへの対応に奮闘している。

 国際通貨基金(IMF)の試算によると、AIの台頭によって世界全体の40%近くの雇用が影響を受ける可能性がある。AIに代替される業務もあれば、補完される業務もあるという(注2)。

 米国労働省(BLS)は2024年5月に発表したガイドで、労働者とその代表者の「真の意見」を取り入れ、透明性高くAIを導入するよう雇用主に助言している(注3)。同ガイドは、ジョー・バイデン大統領が2023年に発表したAIに関する包括的な大統領令に続くものだ(注4)。

 デューク大学の調査によると、事業規模を問わず、65%に及ぶ企業にとって自動化の優先順位は「高い」、もしくは「中程度」だ。回答者の60%が「過去12カ月の間に従業員が実施していた作業を自動化するためにAI技術を使用した」と回答し、ほぼ同数が「今後1年間に自動化を行う予定だ」と回答した。

 過去12カ月間に労働者をAIに置き換える主な動機としては、「ビジネスプロセスの強化」(87%)、「アウトプットの質の向上」(58%)、「アウトプットの量の向上」(49%)、「人件費の削減」(47%)などが挙げられた。

 この調査では、特にAIによる自動化において、中小企業よりも大企業の方が速いペースで労働者を置き換えていることが分かった。過去1年間に労働者を置き換えるAI施策を実行した大企業は55%だったのに対し、同期間に同様の施策を実行した中小企業は29%にとどまったという。

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