Snowflakeはなぜ、AI予算を「ケチる」のか それでも成果をたたき出す理由CIO Dive

生成AIに数百億円以上を投資する企業もあるが、それほどの予算を割くのが難しい企業の方がはるかに多い。Snowflakeはなぜ、低予算、かつ短期間の開発で成果を出しているのか。

» 2024年07月04日 15時50分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 Snowflakeはデータクラウド事業を推進するために、AIソリューションを「手頃な価格」で構築している。同社のスリダール・ラマスワミCEOは、2025年度第1四半期決算説明会(2024年4月22日《現地時間、以下同》開催)で(注1)、「AIに何十億ドルも費やす企業もあるが、われわれはそこまでする必要はない」と語った。

Snowflakeはなぜ、AI予算を「ケチる」のか? 

 2024年4月30日までの3カ月間、Snowflakeの製品売上高は前年同期比34%増の約8億ドルに達した。同社が業績は順調なのに、AI予算を「ケチる」理由は何か。

 SnowflakeのオープンソースLLM(大規模言語モデル)である「Snowflake Arctic」は、トレーニングにわずか200万ドル、開発に3カ月弱しかかかっていない(注2)。

 スタンフォード大学の人間中心AI研究所(Stanford University’s Institute for Human-Centered Artificial Intelligence)によれば、OpenAIの「GPT-4」は7800万ドル、Googleの「Gemini Ultra」は1億9100万ドルの開発費がかかっている(注3)。

 ラマスワミ氏は、Snowflakeの控えめなAI開発予算を利点として強調する。

 「開発チームに期待されるのは、AIモデルをどのように開発するかに創造性を発揮するかだ。実のところ、制限や不足が多くのイノベーションを生み出す」

 LLMが普及するにつれ、ベンダーはERPやCRMのプラットフォームからSnowflakeのようなデータ管理ソリューションまで、既存の製品に生成AI機能を組み込むことで、企業の導入を容易にしようとしている。

 「データエンジニアリングをめぐる動きは、ダーウィンが提唱した進化論のようなものだ」と、ラマスワミ氏はデータサービスの需要を促進する大きな動きに言及する。「以前はソフトウェアエンジニアリングを必要としていたタスクが、Snowflakeでは1時間ごと、あるいは2時間ごとに実行される小さなパイプラインになり、Snowflakeに取り込まれる全てのデータに作用するようになった」(ラマスワミ氏)

 SnowflakeはSnowflake Arcticに加えて、Metaの「Llama 3」とRekaのマルチモーダルLLMファミリー「Reka Core」をAIマネージドサービス「Snowflake Cortex」に導入し、2024年5月上旬に一般提供を開始した(注4)。同社はまた、2024年5月22日に発表されたMicrosoftとのパートナーシップ拡大の一環として、オープンソースのデータストレージソリューション「Apache Iceberg」とMicrosoftの分析プラットフォーム「Microsoft Fabric」を統合した(注5)(編注)。

 AI機能を強化するため、Snowflakeはモデルパフォーマンス観測プラットフォームのTruEraを買収したと両社は2024年5月22日に発表した(注6)。

 Snowflakeのマイク・スカーペリ氏(CFO《最高財務責任者》)は、同社の設備投資が前年同期比137%増の1650万ドルに達した四半期の後、AI関連の費用により通期の予測利益率を下方修正した(注7)。

 「GPUへの支出も少し増えているが、当社が特に投資しているのはAI分野での人材採用だ。TruEraの買収によって、35人の重要な人材が当社の従業員名簿に加わった」(スカーペリ氏)

 ラマスワミ氏は、文書からデータを引き出す生成AI「Snowflake Document AI」による非構造化データの抽出、データ移行、データベース照会のような企業向けユースケースの開発に注力していることを強調した。

 「Snowflakeの強みは、目指すべき指標に対して最適化するためにあらゆる面でスピーディーに対応する能力だ。最新で最も優れた画像生成モデルを作ることではない」(ラマスワミ氏)

 現在、同社は自然言語を使ったスキーマツールをテストしているが、まだ一般公開の準備は整っていない。

 「一般公開には至っていないが、財務情報を知り、クエリを実行して信頼に足る情報を取得できるアプリをCFOに提供したいと考えている」(ラマスワミ氏)

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