生成AIに数百億円以上を投資する企業もあるが、それほどの予算を割くのが難しい企業の方がはるかに多い。Snowflakeはなぜ、低予算、かつ短期間の開発で成果を出しているのか。
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Snowflakeはデータクラウド事業を推進するために、AIソリューションを「手頃な価格」で構築している。同社のスリダール・ラマスワミCEOは、2025年度第1四半期決算説明会(2024年4月22日《現地時間、以下同》開催)で(注1)、「AIに何十億ドルも費やす企業もあるが、われわれはそこまでする必要はない」と語った。
2024年4月30日までの3カ月間、Snowflakeの製品売上高は前年同期比34%増の約8億ドルに達した。同社が業績は順調なのに、AI予算を「ケチる」理由は何か。
SnowflakeのオープンソースLLM(大規模言語モデル)である「Snowflake Arctic」は、トレーニングにわずか200万ドル、開発に3カ月弱しかかかっていない(注2)。
スタンフォード大学の人間中心AI研究所(Stanford University’s Institute for Human-Centered Artificial Intelligence)によれば、OpenAIの「GPT-4」は7800万ドル、Googleの「Gemini Ultra」は1億9100万ドルの開発費がかかっている(注3)。
ラマスワミ氏は、Snowflakeの控えめなAI開発予算を利点として強調する。
「開発チームに期待されるのは、AIモデルをどのように開発するかに創造性を発揮するかだ。実のところ、制限や不足が多くのイノベーションを生み出す」
LLMが普及するにつれ、ベンダーはERPやCRMのプラットフォームからSnowflakeのようなデータ管理ソリューションまで、既存の製品に生成AI機能を組み込むことで、企業の導入を容易にしようとしている。
「データエンジニアリングをめぐる動きは、ダーウィンが提唱した進化論のようなものだ」と、ラマスワミ氏はデータサービスの需要を促進する大きな動きに言及する。「以前はソフトウェアエンジニアリングを必要としていたタスクが、Snowflakeでは1時間ごと、あるいは2時間ごとに実行される小さなパイプラインになり、Snowflakeに取り込まれる全てのデータに作用するようになった」(ラマスワミ氏)
SnowflakeはSnowflake Arcticに加えて、Metaの「Llama 3」とRekaのマルチモーダルLLMファミリー「Reka Core」をAIマネージドサービス「Snowflake Cortex」に導入し、2024年5月上旬に一般提供を開始した(注4)。同社はまた、2024年5月22日に発表されたMicrosoftとのパートナーシップ拡大の一環として、オープンソースのデータストレージソリューション「Apache Iceberg」とMicrosoftの分析プラットフォーム「Microsoft Fabric」を統合した(注5)(編注)。
AI機能を強化するため、Snowflakeはモデルパフォーマンス観測プラットフォームのTruEraを買収したと両社は2024年5月22日に発表した(注6)。
Snowflakeのマイク・スカーペリ氏(CFO《最高財務責任者》)は、同社の設備投資が前年同期比137%増の1650万ドルに達した四半期の後、AI関連の費用により通期の予測利益率を下方修正した(注7)。
「GPUへの支出も少し増えているが、当社が特に投資しているのはAI分野での人材採用だ。TruEraの買収によって、35人の重要な人材が当社の従業員名簿に加わった」(スカーペリ氏)
ラマスワミ氏は、文書からデータを引き出す生成AI「Snowflake Document AI」による非構造化データの抽出、データ移行、データベース照会のような企業向けユースケースの開発に注力していることを強調した。
「Snowflakeの強みは、目指すべき指標に対して最適化するためにあらゆる面でスピーディーに対応する能力だ。最新で最も優れた画像生成モデルを作ることではない」(ラマスワミ氏)
現在、同社は自然言語を使ったスキーマツールをテストしているが、まだ一般公開の準備は整っていない。
「一般公開には至っていないが、財務情報を知り、クエリを実行して信頼に足る情報を取得できるアプリをCFOに提供したいと考えている」(ラマスワミ氏)
(編注)この統合によって、Microsoftの論理データレイクであるOneLakeに、SnowflakeのデータをIceberg形式で保存できるようになる。
(注1)Snowflake (SNOW) Q1 2025 Earnings Call Transcript(The Motley Fool)
(注2)Snowflake launches Arctic, an LLM focused on transparency(CIO Dive)
(注3)Artificial Intelligence Index Report 2024(Stanford University)
(注4)Snowflake Cortex LLM Functions Moves to General Availability with New LLMs, Improved Retrieval and Enhanced AI Safety(Snowflake)
(注5)Snowflake and Microsoft announce expansion of their partnership(Microsoft)
(注6)Snowflake Announces Agreement to Acquire TruEra AI Observability Platform to Bring LLM and ML Observability to the AI Data Cloud(Snowflake)
(注7)Snowflake Reports Financial Results for the First Quarter of Fiscal 2025(Snowflake)
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