イオングループの「データの生かし方」「生成AIの使い方」とは? 外部人材登用の理由を考察Weekly Memo(1/2 ページ)

データ活用を社内にどう浸透させるか。生成AIをどう有効に使うか。データドリブン経営を目指すイオングループの事例を基に考察する。

» 2024年07月01日 18時30分 公開
[松岡功ITmedia]

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 データの活用を社内にどう浸透させるか、生成AIをどう有効に使うのか――。生産性向上や事業機会の創出を図るために、多くの企業がこうした課題に取り組んでいる。データ活用はDX(デジタルトランスフォーメーション)の核心でもある。

 そうした中、興味深い取り組み事例を聞いたので、今回はその内容を紹介してデータ活用について考察したい。

イオングループのデータ活用方針 なぜ、外部人材を登用したのか?

 その事例とは、日本マイクロソフトが2024年6月24日に生成AIの最新動向について開いた記者説明会で、同社の生成AIサービス「Azure OpenAI Service」を利用したケースとして紹介された、全社グループのデータを一元的に管理・活用し、生成AIも有効に使っているイオングループの取り組みだ。

 説明に立ったイオン チーフデータオフィサー(CDO)でデータイノベーションセンター(DIC)センター長を務める中山雄大氏はまず、イオングループのデータ活用方針について「イオングループが持つ多様な接点から得られるデータでお客さまのニーズを多面的に理解し、データに基づく科学的なアプローチによってお客さまの体験価値向上と利益最大化を両立させる」ことを挙げた。

イオン CDO/DICセンター長の中山雄大氏

 具体的には、スーパーマーケットをはじめとしておよそ300社からなる業態の異なる事業会社が生み出すデータをグループ全体で柔軟に活用できる仕組みを構築し、顧客ニーズを多面的に理解できるようにする。そして、図1の右側にあるようにあらゆる局面でデータを活用し、他社と差別化されたサービスを提供することにより、体験価値向上と利益最大化を両立させようというものだ。

図1 イオングループのデータ活用方針(出典:イオン中山CDOの事例説明資料)

 イオングループがこうした取り組みを本格的に始めたのは2021年。イオングループのデータを一元的に管理・活用するDICを持ち株会社イオン内の専門組織として同年3月に発足し、さまざまな企業でデータ活用の研究や実践に取り組んできたエキスパートの中山氏がCDOとして入社しセンター長に就いたことから動き出した。

 DICの目的は、「グループ全体でデータに基づく事業価値創造を実践する」ことだ。その活動は、データ活用に向けてデータサイエンスやアナリティクス、データエンジ二アリング、ビジネスエンゲージメントの専門人材を「ほぼ中途採用で揃えた」(中山氏)とのことだ(図2)。ちなみにビジネスエンゲージメントはデータサイエンティストなどと事業会社を結び付けることで、筆者はこの役目が企業におけるデータ活用の要だと見ている。

図2 DICの概要(出典:イオン中山CDOの事例説明資料)

 DICが取り組んでいることは大きく3つある。

  1. アナリティクスの内製化: Azure OpenAI Serviceをベースに自分たちが必要なデータ分析ツールを全て内製化している。中山氏によると、「内製化することで、スピード、品質、コスト、技術蓄積といった面でメリットがある」。この内製化へのこだわりが、DICの真骨頂といえそうだ
  2. ベストプラクティスの展開: グループ横断でのデータ活用によるベストプラクティスの展開に注力している
  3. 新しい事業機会の探索: 例えば、医療データの活用がこの一つだ。イオンと医療データは一見、結び付かないように思えるが、同グループにはおよそ56万人の従業員がいることから、健康保険組合で管理している従業員のデータを分析すれば、ヘルスケア分野での事業機会を探ることができる。DICでは生成AIも新たな事業機会を獲得するツールとして位置付けている
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