データ活用を社内にどう浸透させるか。生成AIをどう有効に使うか。データドリブン経営を目指すイオングループの事例を基に考察する。
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データの活用を社内にどう浸透させるか、生成AIをどう有効に使うのか――。生産性向上や事業機会の創出を図るために、多くの企業がこうした課題に取り組んでいる。データ活用はDX(デジタルトランスフォーメーション)の核心でもある。
そうした中、興味深い取り組み事例を聞いたので、今回はその内容を紹介してデータ活用について考察したい。
その事例とは、日本マイクロソフトが2024年6月24日に生成AIの最新動向について開いた記者説明会で、同社の生成AIサービス「Azure OpenAI Service」を利用したケースとして紹介された、全社グループのデータを一元的に管理・活用し、生成AIも有効に使っているイオングループの取り組みだ。
説明に立ったイオン チーフデータオフィサー(CDO)でデータイノベーションセンター(DIC)センター長を務める中山雄大氏はまず、イオングループのデータ活用方針について「イオングループが持つ多様な接点から得られるデータでお客さまのニーズを多面的に理解し、データに基づく科学的なアプローチによってお客さまの体験価値向上と利益最大化を両立させる」ことを挙げた。
具体的には、スーパーマーケットをはじめとしておよそ300社からなる業態の異なる事業会社が生み出すデータをグループ全体で柔軟に活用できる仕組みを構築し、顧客ニーズを多面的に理解できるようにする。そして、図1の右側にあるようにあらゆる局面でデータを活用し、他社と差別化されたサービスを提供することにより、体験価値向上と利益最大化を両立させようというものだ。
イオングループがこうした取り組みを本格的に始めたのは2021年。イオングループのデータを一元的に管理・活用するDICを持ち株会社イオン内の専門組織として同年3月に発足し、さまざまな企業でデータ活用の研究や実践に取り組んできたエキスパートの中山氏がCDOとして入社しセンター長に就いたことから動き出した。
DICの目的は、「グループ全体でデータに基づく事業価値創造を実践する」ことだ。その活動は、データ活用に向けてデータサイエンスやアナリティクス、データエンジ二アリング、ビジネスエンゲージメントの専門人材を「ほぼ中途採用で揃えた」(中山氏)とのことだ(図2)。ちなみにビジネスエンゲージメントはデータサイエンティストなどと事業会社を結び付けることで、筆者はこの役目が企業におけるデータ活用の要だと見ている。
DICが取り組んでいることは大きく3つある。
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