Microsoftへの「独禁法違反取り下げ」の背景 具体的な合意内容は?CIO Dive

TeamsのM365からの分離が記憶に新しいMicrosoftが、同社を独禁法違反で訴えていた欧州クラウドロビー団体と合意に至った。具体的な合意内容とは。

» 2024年08月30日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 クラウドサービスプロバイダーが加盟するロビー団体であるCISPE(Cloud Infrastructure Service Providers in Europe)は、2024年6月5日に発表されたMicrosoftとの合意の一環として、Microsoftが提供するクラウドサービスに対する独占禁止法違反の訴えを取り下げると発表した。

欧州クラウドロビー団体との合意内容は?

 Microsoftがオフィスソフトにおける優位性を生かして、顧客を自社のパブリッククラウドに誘導することで、「クラウド移行における欧州の顧客の選択肢を制限している」と、CISPEは非難してきた。

 両者の合意によって具体的に何が決まったのだろうか。

 欧州のクラウドサービスプロバイダーが自社のプラットフォームでMicrosoftのアプリケーションやサービスを提供できるようにする目的で、Microsoftは「Azure Stack HCI」をアップデートするために9カ月間の猶予が与えられることになった。

 CISPEは、Microsoftが合意内容を遂行するかどうかを監視するためにEuropean Cloud Observatoryを設立し、条件が満たされない場合は申し立てを再開する予定だ。当初の訴えは2022年11月に欧州委員会に提出された。Microsoftの競合であるAWS(Amazon Web Services)はCISPEのメンバーだが、Microsoftとの交渉から除外されたと同団体は述べる。

 Microsoftのソフトウェアライセンス慣行や、高成長を続けるパブリッククラウド市場における競争にMicrosoftがもたらす影響を、欧州の規制当局は監視したり法的措置を取ろうとしたりしてきたが、Microsoftはこれらをかわそうとしている。

 欧州委員会は2024年5月に発表した予備調査において、「Microsoft Teams」が「Office 365」と「Microsoft 365」に組み込まれていることがEU(欧州連合)の独占禁止法に違反していると指摘した(注1)。同社は2023年夏には欧州で、2024年4月には全世界で、Microsoft TeamsをOffice 365やMicrosoft 365から切り離すことで欧州委員会の調査を回避しようとしたが、失敗に終わった(注2)。

 Microsoftは2023年3月に開始された米連邦取引委員会(FTC)のクラウド市場競争調査の対象になった。ハイパースケーラーの覇権争いで第3位のシェアを占める「Google Cloud」は、Microsoftが1年以上前に企業向けソフトウェアにおける支配的地位を利用して顧客を「Microsoft Azure」やその他のMicrosoftのクラウドサービスに誘導しているとして、FTCに告発状を提出した(注3)。

 Microsoftは、英国でもベンダーロックインに関する批判を浴びている。2024年5月、競争・市場庁(CMA)は、MicrosoftやAWS、Google Cloudが採用しているビジネス慣行について、「マルチクラウドの採用に対する潜在的な構造的、技術的障壁がある」と指摘した(注4)。

 CISPEとMicrosoftとの合意条件では、MicrosoftはCISPEに対し、過去3年間のソフトウェアライセンスのための訴訟やキャンペーンにかかった費用を補償するために、一括での支払いを要求されている。

 Microsoftは「CIO Dive」への電子メールでCISPEとの合意に関して詳細を述べることを拒否した。代わりに、Microsoftのブラッド・スミス副会長兼社長の次の声明を共有した。

 「CISPEおよび、CISPEに加盟する欧州のクラウドサービスプロバイダーと1年以上にわたって協力した結果、過去の懸念を解消できただけでなく、欧州と欧州以外のクラウドコンピューティング市場にさらなる競争をもたらす道筋をともに定義できたことをうれしく思う」

 CISPEのフランシスコ・ミンゴランス事務局長は2024年6月5日の声明で、今回の和解を「欧州のクラウドサービスプロバイダーにとって重要な勝利」と評価した。

 「CISPEはMicrosoftに有利な条件を提示した。今回の合意が欧州のクラウドインフラのプロバイダーとその顧客に公平な競争の場を提供すると信じている」(ミンゴランス氏)

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