“非上場でも当たり前”の時代に 企業が取り組むべき「脱炭素」の現在地

2024年は、サステナビリティ対策と気候変動に関する規制が大幅に強化された年だ。AIの普及により温室効果ガス排出量の増加が懸念される中、規模の大小を問わず企業は厳しい規制要件を満たさなければならない。

» 2024年11月11日 07時00分 公開
[Emily PierceCFO Dive]

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CFO Dive

 サステナビリティーに関する情報開示規制が世界的に強化される中、企業は温室効果ガス(GHG)データの収集や計算、報告に対するプレッシャーを感じている。

企業の炭素データ管理規制はどこまで進む?

 昨今のビジネス環境において、GHGデータに対する要求が単なる規制順守にとどまらないことをCFO(最高財務責任者)は認識しなければならない。それは、サステナビリティーリスクとリスク評価指標に関する透明性を求める市場で競争力を維持するために必要なことだ。

 現在気候変動関連規制の対象になっていない企業であっても、気候変動リスクと関連する排出量データについて透明性を維持することは、市場動向や投資家の期待、グローバルなトレンドの中で求められている。

 企業の財務リーダーはGHGデータを積極的に財務計画に組み込み、テクノロジーを活用してこの重要な情報を管理、分析しなければならない。これを怠れば、コンプライアンスと競争のどちらも後れを取ることになりかねない。

 2024年はサステナビリティーと気候関連情報に関する報告の強化、規制が急速に進み始めた年だ。企業はスコープ1(直接排出)、スコープ2(サプライチェーンを含む企業のバリューチェーン全体にわたる間接排出)、スコープ3(企業のサプライチェーン全体で生じる全ての間接排出)を含む炭素排出量について理解し、情報を共有する準備が必要だ。

 米国では、証券取引委員会(SEC)の気候変動情報開示規則が現在訴訟中だ。米国の上場企業は、スコープ1、2の排出量を含む重要な気候変動関連情報の開示とそれに付随する証明書の提出が求められている。一部のCFOは裁判所の判断を待っているが、他地域では既にそれらを促す動向が見られる。

 一方、カリフォルニア州の気候変動に関する法令では、同州で事業を行う年間売上高10億ドル以上の公開、非公開企業に対し、気候変動関連の財務リスクとスコープ1、2、3の排出量の開示が義務付けられる。保証要件は段階的に導入される予定であり、施行規則はまだ確定していないが、GHG排出量報告が規制の対象となり、数千社の企業がこれに準拠する必要がある。

 欧州では、企業のサステナビリティー報告指令(CSRD)が施行されている。欧州の大手上場企業は、次回の年次報告書に向けて2024年度のサステナビリティー情報を報告するためのデータ収集を開始している。2025年には上場、非上場を問わず、さらに多くの企業が対象となる。これらの報告書では、欧州のサステナビリティー報告基準に従い、スコープ3の排出量の開示、移行計画と目標に関する詳細情報の開示が求められる。この基準では、企業はサプライヤーから提供される1次データに基づいて算出されたスコープ3排出量の割合を開示することも求められている。

 2028年までに、CSRDは多くの米国企業を含む約5万社に適用される。多くの国や地域が国際財務報告基準(IFRS)のサステナビリティー開示基準(ISSB基準)を取り入れることで、開示規制を強化する動きが進んでいる。ISSB基準もスコープ3を含む排出量データの開示に対する明確な期待を定めており、報告者に対し計算には1次データを優先するよう指示している。

規制に対応するために必要なこと

 規制の動きが進む中、CFOはコンプライアンスに注力する必要があるが、それが競争力に与える影響も理解しなければならない。規制は市場の需要に応じて登場しており、現在は約2万3000社がカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)に排出量やその他のデータを報告しているが、これは株主や企業からの要請に従って実施している。資本提供者も、自身が投資した資金によって発生する排出量を算定しようと要請を後押ししている。CSRDのような規制は、こうした市場の需要を加速させるだろう。

 CFOは、自社のGHG排出量と気候変動に関連する財務リスクを両立できるよう努力しなければならない。これには膨大な量のデータとそれを扱える多大なリソースが必要だが、技術によって大幅に簡素化できる。ソフトウェアの自動化が堅牢(けんろう)な炭素データプログラムの基盤となり、ML(機械学習)を含むAIは炭素会計と分析を効率化するためにますます導入されている。これによるメリットは以下の通りだ。

  • 包括的なカーボンフットプリント構築の効率化: 技術によって、企業は全ての事業でカーボンフットプリントを測定、分析でき、グローバルなデータ管理ときめ細かな追跡が可能になる。複雑な企業構造と複数の報告要件を持つ企業にとって、セグメントごとの排出量の追跡と報告は、CSRDやカリフォルニア州の気候法、SECの気候規則を効率的に順守するために不可欠だ
  • 管理と検証プロセスの改善: 先進的な炭素会計ソフトウェアは、排出量データの正確性と規制基準への準拠を保証するのに役立つ

 なお、本記事の執筆者エミリー・ピアース氏はアリゾナ州テンピを拠点とし、炭素会計とサステナビリティー管理プラットフォームを提供するPersefoni AIの最高グローバル政策責任者 兼 副法務顧問だ。本記事の見解は筆者自身のものである。

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