AI予算はなぜ膨れ上がるのか その原因にガートナーが言及CIO Dive

生成AIの本格導入が進む中、コストとリスクをどう管理するか。ガートナーが自社イベントで提言した、無駄な出費が発生する理由と、理想的なROIを実現するために押さえておきたいポイントとは。

» 2024年11月27日 13時30分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 Gartnerの調査によると、CIO(最高情報責任者)の半数近くが「AIはまだROI(投資収益率)に対する期待に応えられていない」と答えている。また、CIOがAIプロジェクトを拡大する際、コストを「最大で10倍も見誤る可能性がある」という。

予算が10倍に増える“怪奇現象” 無駄な出費の原因は?

 いつの間にか予算が当初の10倍に膨れ上がってしまう“現代の怪奇”にいかに立ち向かうべきか。2024年10月21日(現地時間)、Gartnerが開催したイベント「Gartner IT Symposium/Xpo」(フロリダ州オーランド)で、同社の複数のアナリストがこの生成AIプロジェクトにかかるコストとリスクをどう管理するかというテーマに言及した。どのような内容か、見てみよう。

 Gartnerの複数のアナリストの見解はこうだ。「生成AIによってワークフローは改善されつつある。その中で、CIOは、コストとリスクの管理を両立できる理想的なバランスを模索している」

 同社によると、CIOは生成AIの目標を達成するのが予想以上に難しいことに気付いており、ITリーダーはデータの課題や技術的負債、不十分な戦略と実行力が進捗(しんちょく)を妨げていると考えているという。

 Gartnerのフン・レホン氏(ディスティングイッシュトバイスプレジデント兼フェロー)はイベントの基調講演で、「この1年、企業は“泥沼”の中でAIがもたらす利益を得ようと奮闘してきたが、それは簡単ではなかった」と述べた。

 ビジネスリーダーが現状に落胆する一因として、技術の未熟さとイノベーションの早さがある。成功するためには、CIOはAIベンダーの競争に振り回されるのではなく、自社の準備と目標に合ったペースを設定することに集中すべきだ(注1)(注2)。

 「AIベンダーの競争は過酷だ。『最新のAIを導入しなければ後れを取る』という声もあるかもしれないが、それは真実ではない」(レホン氏)

 特に大規模な運用では、AIのコストやデータインフラの準備に必要な作業を十分に理解せずに急いで進める企業は、必ず障害に直面するだろう。

 Gartnerのメアリー・メサグリオ氏(ディスティングイッシュト・バイスプレジデント・アナリスト)は、「AIにおけるコストはセキュリティと同じくらい大きなリスクとなる。生成AIでは、無駄な出費がすぐに発生してしまう」と基調講演で述べた。

データの問題を抱える企業が支払う「手痛い代償」

 なぜ、CIOはAIプロジェクトを拡張する際、コストを最大10倍も見誤る可能性があるのか。生成AIの導入時には推論処理や基盤の整備、データの統合が必要で、そこには多額の費用がかかる。Gartnerによると、2023年にAIを導入した企業はPoC(概念実証)だけで30万〜290万ドルを費やしたという。

 特にデータの問題が原因でプロジェクトを本稼働に移行できない企業にとって、このコストは大きな代償になる。

 「ほとんどの企業では、データはPDFや共有ドライブに散在している。まるで散らかった部屋のようだ」とレホン氏は言う。CIOは洗練されたデータ管理システムを構築する際、誰がどのぐらいの期間にわたってデータにアクセスできるかを慎重に管理しなければならない。

 APIを利用したり、既存のツールやサービスをアップグレードして生成AIにアクセスしたりと、企業の事業規模やリソースによって戦略の立て方はさまざまだ。

 ただ、いずれにせよ信頼性は非常に重要になる(注3)。「AIで豊かになっても信頼を失わないようにしなければならない」(メサグリオ氏)

「ベンダーの誇大広告」「極端な悲観論」に惑わされるな

 Gartnerが発表している「ハイプ・サイクル」では、生成AIは第2段階の「過度な期待のピーク期」を過ぎ、第3段階の「幻滅期」に向かっている(注4)。CIOは今後、AIの能力への過大な期待と、AIの欠点への批判の両方に直面するだろう。「ITリーダーは正しい道を進むために、その2つの雑音に惑わされてはならない。誇大広告には目を向けず、自社のペースに集中する必要がある。自社に合ったものを選びながら“レース”を走ることが大切だ」(レホン氏)

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