AIが企業の業務を自動化していく中で、人間はこれからどんなスキルを身に付けていけばよいのか。AI時代のリスキリングのあるべき姿について、ベネッセの会見から考察する。
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働き方の変化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などにより、従業員が必要なスキルを習得する「リスキリング」に取り組む企業が増えつつある。ただ、生成AIやAIエージェントがこれから個人や組織のさまざまな業務を支援し、自動化していくと見られる中で、人間はこれからどんなスキルを身に付けていけばよいのか。
ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)が2024年12月4日にリスキリングの現状と同社の取り組みについて記者説明会を開いたので、「AI時代のリスキリングはどうあるべきか」についても聞いてみた。
「企業はこれからリスキリングに経営戦略として取り組んでいくべきだ」
ベネッセで社会人教育事業領域担当の執行役員を務める飯田智紀氏は、会見でこう強調した。
同社は「Udemy」というブランドのオンライン動画学習プラットフォームを個人および企業に展開し、リスキリングの支援に力を入れている。
ただ、取り組む企業が増えてきたとはいえ、帝国データバンクが2024年11月20日に発表した「リスキリングに関する企業の意識調査(2024年)」によると、リスキリングに積極的な企業は全体の26.1%である一方、取り組んでいない企業が46.1%と、本格的な動きはこれからといった状況だ。業種によって取り組み度合いに違いがあることも分かった(図1)。
この調査結果について飯田氏は、「われわれの肌感覚も同様だが、積極的に取り組んでいる企業はリスキリングを経営戦略として推進している。こうした企業が増えているのも実感している」との見方を示した。上記の「経営戦略として取り組んでいくべきだ」との発言はこの見方に基づくものだ。
その上で、同氏はユーザー企業の声を踏まえて、「リスキリングの認知は相応に広がっているが、実際に企業や組織の成長につながっているのか」との問題意識を挙げた。つまりは「リスキリングの成果が出ているのかどうか」ということだ。そこで、同社はリスキリングの成果について、「社会の変化に伴い事業を変革しようとする企業が従業員の心に火を灯し、学びを通じたビジネスインパクトを出しているかどうか」を評価基準とし、5段階からなる成長ステージを作成した(図2)。
飯田氏はこの成長ステージについて、「5段階の内容を見ると、レベル5の『経営インパクトのある人材投資効果の創出』に目が行きがちだが、企業として重要なのはレベル1の『環境の整備』やレベル2の『従業員のマインドの変容』を促すことでリスキリングを積極的に行う風土作りだ。そこにしっかりと取り組むことが、レベル3から4、5へと組織的な変容につながる」と説明した。
同氏の説明を聞いて、筆者は企業におけるリスキリングの取り組みが「個人の変容が組織の変容につながる」ことを改めて認識した。現状ではむしろ、まず組織を変容させて個人をむりやり変容させようとしているところが多いのではないか。これは大事な捉え方だと感じた。
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