生成AI利用者は意外と“若者”じゃなかった なぜ「世代間ギャップ」が問題なのか?CIO Dive

ある調査によると、生成AIを仕事で最も活用しているのは最年少の世代ではなかったという。AIに関する意識や利用用途の世代間ギャップを解消した方がいいのはなぜか。解消のために企業がすべきこととは。

» 2025年01月14日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 企業における生成AIの活用が進む中で、なかなか生成AIの利用が拡大しない、生成AIを「自分の仕事を奪う存在」として敵視する従業員がいるといった課題が浮上している。

 2024年11月20日(現地時間)に発表された教育機関のUdacityのレポートによって、世代によって生成AIの捉え方や利用率に差があることが明らかになった。

職場でのAI利用に世代間ギャップ なぜ問題なのか?

 同調査によると、生成AIを職場で最もよく活用しているのはいわゆる若者世代ではなかった。生成AIへの認識や利用率が世代によって違うことは、企業にどのような影響をもたらすのか。また、世代間ギャップを解消するために企業がすべきこととは。

 同調査(有効回答数:850件)によると、生成AIを職場で最も利用しているのは1981〜1996年生まれのミレニアル世代だった(注1)。また、ミレニアル世代の半数以上は「AIは意思決定の改善やストレスの軽減、職場での創造性の向上に役立つ」とポジティブな回答を寄せた。

 一方、1965〜1980年生まれのX世代と1997〜2012年生まれのZ世代で同様の回答を選択したのは4分の1に満たなかった。

 Udacityのレポートのレポートによると、AIツールの活用方法にも世代間ギャップは表れている。生成AIの用途として文章要約や文章作成は全世代共通だが、ミレニアル世代は画像生成を好む傾向にあり、Z世代やX世代は翻訳ツールを頻繁に利用している。

 企業経営者は、AIを導入する際にチェンジマネジメントを念頭に置く必要がある。従業員の行動や意識は、AIの取り組みが進展し、実際に価値を生み出すかどうかを大きく左右するためだ。

 Udacityのヴィクトリア・パパリアン氏(COO《最高執行責任者》)は声明で次のように述べた。

 「AIに対して最も楽観的で抵抗感が少ないのが、最年少の世代ではないことは驚きだ。Z世代はインターネットと共に成長し、オンラインで多くの時間を過ごしている。それにもかかわらず、AIの可能性を最も積極的に受け入れているのはZ世代ではなくミレニアル世代のようだ」

 AI活用に従業員の賛同を得ることは、The Krogerなどの食料品店やAstraZenecaなどの製薬会社を含め、2024年に数え切れないほどの企業が注目していた課題だ(注2)。

 AIを導入する際に従業員を巻き込めなければ、ビジネスにはさまざまなリスクが待ち受けている。適切な指導がなければ従業員はAIツールを誤った利用方法で使い、法的問題や風評被害、倫理的な懸念につながる可能性がある。訓練を受けていない従業員はAIツールによるハルシネーションや不正確な回答を見逃す可能性が高い。

生産性向上を確実に実現する方法は?

 生産性の向上は、明確な戦略がなければ実現しない可能性がある(注3)。2024年6月に発表されたSlack Technologiesの調査によると、AIによって従業員の作業時間が軽減されても、節約された時間は付加価値の低い仕事に費やされてしまう傾向があるという。しかし、AIのトレーニングを受けた従業員は生産性向上を実現する確率が19倍も高いことが同調査で明らかになった。

 若い世代は職場で利用されるテクノロジーに高い期待を寄せている。たとえそれを活用できるスキルがなくても新しいツールを真っ先に試そうとする(注4)(注5)(注6)。

 この課題に対処するため、多くの企業が大規模なトレーニングに取り組んでいる。S&P Globalは2024年初頭、3万5000人の従業員を対象としたスキルアップ研修を開始した(注7)。日用品メーカーのColgate-Palmoliveでは、工場で働く従業員以外の全員が2024年中にAIに関する基礎的なトレーニングを受ける予定だ(注8)。National Football Leagueのようなスポーツ企業からUnileverのような世界的な消費財メーカーに至るまで、ほぼ全ての業界がAIのスキル向上に取り組んでいる(注9)(注10)。

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